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4章【外交編・サハリ国】

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「また無茶をなさったの?」

お互い治療が終わり、治癒師達は「【安静に】」と言い残すとそのまま退室していく。

ぼんやりと手持ち無沙汰で何の気なしに天井の様子をじっと見つめていると、不意にマーラから声をかけられて、そちらに顔を向けた。

彼女は私ほどではないものの、顔にガーゼを当てられていて、痛々しい見た目をしていた。これが自分のせいだと思うと、良心が痛んだ。

「え、えぇ、まぁ……無茶というか、ちょっと調子に乗りました」
「本当にもう、無鉄砲ですわね」

言い返す言葉もなくて、素直に自省する。あのとき、クエリーシェルがいなかったら捕らえられてゴードジューズ帝国に連れて行かれたかもしれない。

そもそも、力量を見誤っていたというのは事実だ。自分はできるとの過信があった。

(とんだ思い上がりだったけど)

まだまだ鍛え直さなきゃなぁ、と思いながら自分の未熟な部分を反省する。そして足りない部分を考える。とりあえず、鍛え直すにもクエリーシェルには反対されそうだから、隠れてどうにかせねばならないだろうが。

「マーラ様もその……ご無事で何よりです」
「えぇ、まぁ……死ぬかと思いましたけど」
「それは……その、すみません」
「別にステラが謝ることではないですわ」

そうは言っても、やはり気まずい。本来なら狙われているのは私のはずだったのに、本意ではないものの彼女が身代わりになってしまい、結果的に恐い思いをさせてしまった。

「そんなに申し訳なさそうになさらないでくださいな。そもそもの話、ワタクシが船に忍び込みさえしなければ良かったのですし」
「まぁ、それは……否定はしませんが」
「普通こういうとき、多少はフォローするんではないのですの?……本当、そういうところ相変わらずですのね。まぁ、いいですけど」

素直に同意すると、幾分か表情が柔らかくなる。以前に比べて少し物分かりがいいというか、多少分別がつくようになったのだろうか。

「それに、ブランシェ国王が助けに来てくれたからいいんです……」
「ブランシェ、すぐに来てくれましたか?」
「えぇ、白馬に乗って颯爽と駆けつけてくださいまして、まるで正義の……っ!ん、んーっ、と、まぁ、一生懸命追いかけてくださいましたよ」

最初は弾むような声色だったが、途中で我に返ったのか、いつものモードになるマーラ。だが、その様子すらも微笑ましくて、ついつい口元が緩みっぱなしになってしまう。

「な、なんですの!気色悪い。変な顔なさらないでくださる?」
「えー、いやぁー……その話、詳しく……っ!」
「本当、デリカシーの欠片ももないですわね!!」

あからさまに憤慨した様子を見せるものの、もう今更遅い。先程の感じ的に、興味関心を唆られる事実があったことに違いないと、詮索したい欲求がむくむくと湧く。

やはりこの年頃は、人の恋路が気になるものなのである。

「で?何か進展は?」
「べ、別に特に何も……っ!というか、結局ステラとクエリーシェル様はどう言った関係ですの!?」
「私達のことはお気になさらず。で、ブランシェとキスとかしちゃったんです?」
「ききききききす!????し、してませんわよ!てか、話をはぐらかさないでくださいまし!!」

お互いテンションが上がったせいか、いつの間にか声が大きかったようで「【静かに!!安静だと言ったでしょう!?】」と治癒師に怒られるのだった。
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