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4章【外交編・サハリ国】

80 証拠

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「【だから何度も言わせるな!!?連れ去ったはずの彼女がここにいるではないか!!】」
「【ですから、私に言われましても……!!ただ、姫は回収したと言われた通りに伝えただけでして……!】」
「【つべこべ言わずに誰か説明しろ!捕らえた姫は本物なのか偽物なのか!そもそもなぜここにいるんだ!】」
「【で、ですから、そう言われましてもですね……】」
「【えぇい、言い訳ばかり!このままでは何のために計画を練ったのか……】」
「【あ、貴方……!】」
「【一体、なんの計画でしょうか……父さん?】」
「【ぶ、ブランシェ……!】」

あまりにヒートアップし過ぎて、気付くのが遅くなったのだろう。あまりの大声に、彼らの言葉は近づくにつれてダダ漏れだった。

(というか、先程の話、まさか……)

「【連れ去った姫、というのはどういうことでしょうか?】」
「【いや、別に……ブランシェには関係ない話だ。あぁ、結婚式おめでとう。では私は用事があるのでこれで……】」
「【待て!!】」

ブランシェが冷たく重い声で言う。初めて聞く、王の声だった。

「【我が友人が1人、見当たらないのですが……ご存知ありませんか?】」
「【さぁ、一体何のことだか……】」
「【ね、ねぇ、貴方。もしや、人違いをしてしまったのでは……。では、やはりこちらが本物……】」
「【ドゥラ!!】」

前国王が前王妃の名を呼んだときには、時既に遅しだった。聞こえてしまった彼女の言葉は、彼らが何かしらに加担したことを表す証拠であった。

「【彼女を!マーラをどこにやった!?】」

凄い剣幕で問い詰めるブランシェ。大きな怒声に、一気に会場が鎮まりかえる。初めて我が息子の怒声を浴びた前国王は青ざめ、顔を強張らせながらも笑っていた。

「【……娘ならもう船へと向かっている。今追いかけても遅いだろう。彼らは私の指示を待たずにゴードジューズ帝国へと向かえと言ってある】」
「【!!!】」

今度はブランシェが青ざめる。まさかマーラが私の代わりに連れ去られるなど思わず、私も反応が遅れてしまいそうになるが、バンっと彼の背を思い切り叩いた。

「ブランシェ!マーラ様を連れ戻してきなさい!」
「!ステラ、だが……!」
「こういうときは王子……今は国王か。そういう人が行ったほうがカッコつくのよ!とにかく、早く行って!この場は私がどうにかするから!!」
「……っすまない!頼んだ!!」

ブランシェが脇目も振らずに一気に走り出す。会場にいる人々も、状況が読めたようで段々と蜘蛛の子散らすように離れていく。

(任されたからには、しょうがないわね。って私がけしかけたけど)

「【ブランシェがいないのならば、今からでも遅くない!私がこの手で捕まえてみせよう!】」
「【おあいにくさま。耄碌もうろくジジイに捕まるほど、私はヤワじゃないわよ!】」

啖呵をきる。口が悪いのはご愛敬だ。

「ケリー様!」
「リーシェ!!」

言葉はわからぬとも場の雰囲気を察したクエリーシェルが、こちらに寄ってくる。彼らも数少ない味方の兵を召集させていた。

「【ふん、我が国で散々大きな顔をしよりおって……!今までの怨み含めて、はらさせてくれる……!!】」
「【のぞむところよ!ブランシェによって変わったこの国、私が守ってみせるわ!!】」
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