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4章【外交編・サハリ国】
71 同志
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「そういえば、いつのまにマーラ様と仲良くなってたの?」
「ん?あぁ、彼女は……先日、たまたま城内で出会してな」
「城内で……出会す?」
「ちょっと、な……」
何とも歯切れの悪い。そもそもコルジールの人達とは行動範囲が別なはずなのに、どうして出会すことがあるだろうか。
(……これは何かあったに違いない)
彼の様子的に理由は何かあったのだろう。だが、あからさまな歯切れの悪さに、恐らく言いたくなさそうである。さすがの私もそこまで下世話に追及するのも憚られたので、きっかけについてはあえてスルーした。
「随分と親しそうだったわね」
「そうかな……?」
「えぇ、マーラ様ってなんていうか好き嫌いハッキリはしてて、つっけんどんなとこはあるけど、あんなに忌々しげに言うのなんて見たことないから」
マーラと、関係としては浅いものの、なんとなく彼女はわかりやすい性質をしていると思う。よく言えば裏表がない。悪く言えば単純である。
だからこそ、あからさまにあまり自分の見知らぬ人に対して、文句を言うにせよ、あのように嫌悪感丸出しというのはちょっと驚いた。
「彼女とは……そうだな、……同志……かな?」
「同志?」
「あぁ、それ以上でもそれ以下でもない」
「同志、ねぇ……」
(一体、何の同志なのだか)
正直、彼らの共通項について、あまり思い当たる節はない。むしろ、接点があったことのほうが驚きだというのに、彼らに一体何の共通点があるのだろうか。
「嫉妬か?」
「は!?違うから!!」
「ははは、相変わらずステラはツンデレだな」
「だから違うから!!」
調子を取り戻したブランシェが、普段同様に私をからかってくる。しかも、心なしか距離をつめてきている気がする。
「ブランシェー?」
「隙あらば、と思ったがなかなかそうもいかんな」
「そりゃ、私だからね。そう簡単になびく女じゃないのよ」
とは言ってみせるものの、正直こんな自分に対してクエリーシェル含めて好意を持ってくれるのは、ありがたいことである。ありがたいからと言って、今後なびくかどうかは別の話だが。
「それは手厳しい。やはりステラは手強いな」
「今更でしょう?」
「はは、それもそうだな」
ふっと口元を緩めて笑うブランシェ。その表情は、どこか吹っ切れたような顔だった。
「……明日はいよいよ本番だ。あっちもどう仕掛けてくるかわからない」
「そうね」
急に真剣な声音になるブランシェに、私も追従する。いよいよ明日、擬似結婚式の当日である。
「心してかかるぞ」
「えぇ。何が来ても何とかしてみせるわ」
「はは、頼もしいな」
緊張しない、と言ったら嘘になる。正直、相手としてはどんな手を使ってでも私を拐いに来るだろう。それに太刀打ちできるか、と聞かれたら、しなきゃいけないと答える他なかった。
「ちなみに僕としては、キミの婚姻衣装も楽しみにしているぞ」
「もう、すぐそういうことばっかり……!」
相変わらずの軽口に頬を膨らますと、不意に頭を撫でられる。そして、戸惑って抵抗できぬまま、急にグッと身体を抱き寄せられた。
「ちょ、何……!?」
「ありがとう、ステラ……」
まさか感謝の言葉を言われるとは思わず、ジタバタ抵抗していたのを治める。しっかりとした言葉。それが彼の本心だというのは、すぐにわかった。
「ブランシェ、貴方はこのサハリ国の立派な王様なのだから、胸を張りなさい。これは、誇れることよ。誰でもない、貴方だからこそできること。貴方だから成し遂げられたこと。あともう一踏ん張り、頑張りましょう?」
そう言って彼の頭を撫でると、大人しく、彼はされるがままになっていた。
「ん?あぁ、彼女は……先日、たまたま城内で出会してな」
「城内で……出会す?」
「ちょっと、な……」
何とも歯切れの悪い。そもそもコルジールの人達とは行動範囲が別なはずなのに、どうして出会すことがあるだろうか。
(……これは何かあったに違いない)
彼の様子的に理由は何かあったのだろう。だが、あからさまな歯切れの悪さに、恐らく言いたくなさそうである。さすがの私もそこまで下世話に追及するのも憚られたので、きっかけについてはあえてスルーした。
「随分と親しそうだったわね」
「そうかな……?」
「えぇ、マーラ様ってなんていうか好き嫌いハッキリはしてて、つっけんどんなとこはあるけど、あんなに忌々しげに言うのなんて見たことないから」
マーラと、関係としては浅いものの、なんとなく彼女はわかりやすい性質をしていると思う。よく言えば裏表がない。悪く言えば単純である。
だからこそ、あからさまにあまり自分の見知らぬ人に対して、文句を言うにせよ、あのように嫌悪感丸出しというのはちょっと驚いた。
「彼女とは……そうだな、……同志……かな?」
「同志?」
「あぁ、それ以上でもそれ以下でもない」
「同志、ねぇ……」
(一体、何の同志なのだか)
正直、彼らの共通項について、あまり思い当たる節はない。むしろ、接点があったことのほうが驚きだというのに、彼らに一体何の共通点があるのだろうか。
「嫉妬か?」
「は!?違うから!!」
「ははは、相変わらずステラはツンデレだな」
「だから違うから!!」
調子を取り戻したブランシェが、普段同様に私をからかってくる。しかも、心なしか距離をつめてきている気がする。
「ブランシェー?」
「隙あらば、と思ったがなかなかそうもいかんな」
「そりゃ、私だからね。そう簡単になびく女じゃないのよ」
とは言ってみせるものの、正直こんな自分に対してクエリーシェル含めて好意を持ってくれるのは、ありがたいことである。ありがたいからと言って、今後なびくかどうかは別の話だが。
「それは手厳しい。やはりステラは手強いな」
「今更でしょう?」
「はは、それもそうだな」
ふっと口元を緩めて笑うブランシェ。その表情は、どこか吹っ切れたような顔だった。
「……明日はいよいよ本番だ。あっちもどう仕掛けてくるかわからない」
「そうね」
急に真剣な声音になるブランシェに、私も追従する。いよいよ明日、擬似結婚式の当日である。
「心してかかるぞ」
「えぇ。何が来ても何とかしてみせるわ」
「はは、頼もしいな」
緊張しない、と言ったら嘘になる。正直、相手としてはどんな手を使ってでも私を拐いに来るだろう。それに太刀打ちできるか、と聞かれたら、しなきゃいけないと答える他なかった。
「ちなみに僕としては、キミの婚姻衣装も楽しみにしているぞ」
「もう、すぐそういうことばっかり……!」
相変わらずの軽口に頬を膨らますと、不意に頭を撫でられる。そして、戸惑って抵抗できぬまま、急にグッと身体を抱き寄せられた。
「ちょ、何……!?」
「ありがとう、ステラ……」
まさか感謝の言葉を言われるとは思わず、ジタバタ抵抗していたのを治める。しっかりとした言葉。それが彼の本心だというのは、すぐにわかった。
「ブランシェ、貴方はこのサハリ国の立派な王様なのだから、胸を張りなさい。これは、誇れることよ。誰でもない、貴方だからこそできること。貴方だから成し遂げられたこと。あともう一踏ん張り、頑張りましょう?」
そう言って彼の頭を撫でると、大人しく、彼はされるがままになっていた。
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