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4章【外交編・サハリ国】

63 詳細説明

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「だって普通に考えて、異国の小娘を拐おうとしたら国王がいた、っていうの最高に動揺しない?」

「何てこというんだ、こいつ」とでも言いたげな目で2人の視線がこちらに向かう。こうも同じ表情だと少し面白いくらいだ。

「そ、そりゃ、動揺するだろうが」
「でしょう?しかも、この体格差なら顔を見ずとも気付かぬはずはないだろうから、布団で包まれようが引っぺがされようが気づくと思うの。それで、最も気付かれてはならない相手を目の前にしたら、さすがの実行犯も混乱または焦りが生じると思うのよね」

さらっと言ってのければ、これまた凄い顔をされる。

(こういう感じ、よくペンテレアであったなぁ)

しみじみと懐かしく思いながら、フリーズしている2人を見つめる。そして、先に我に返ったのはクエリーシェルだった。

「ステラ様はどちらに待機されるおつもりで?」
「それはもちろん、屋上よ」
「は!?屋上!??」

今度は私の発言でブランシェが我に返る。彼にとっては想定外のことすぎて頭が回りきっていないようだった。

「ブランシェにはこの部屋のベッドで、私に成りすましてもらって待機。クエリーシェルは護衛兵と共に廊下で待機。私は屋上で待機の予定だけど、何か質問は?」
「も、もちろんあるぞ!そもそも何でその配置なのだ」

ブランシェが食い気味で尋ねてくるのを、「一から説明するわね」と軽くいなす。

「ブランシェの配置はさっき言った通り、相手の動揺を誘うため。ここはわかるわね?」
「わかりたくはないが、わかることにはわかるが……」
「では次にクエリーシェルの配置だけど、下手に中にいたら不審がられるし、かと言って屋上にいたら図体の大きさでバレてしまうでしょう?」

ちらっとクエリーシェルを見たら静かに頷いている。ブランシェも同様の反応だ。

実際、闇夜に紛れると言ってもこの大柄な体躯ではさすがにすぐにバレるだろうし、屋上でクエリーシェルと戦闘にでもなってしまったらそれこそ悪手だ。

彼がやる大立ち回りで動いてしまうと、他の人に知られてしまう可能性も出てくるし、最悪重傷者や死者が出てしまう。それはなるべく避けたかった。

「だから廊下でここの護衛として扮装してもらって何かあればすぐに駆けつけてもらう。廊下のほうが立ち回りもしやすいだろうしね」
「なるほど……」
「いやいや待てステラ。そもそも何で屋上に配置をするのだ?」
「そりゃ、警備が手薄だからよ」

実際に侵入してきたクエリーシェルは下手なことを言えないと口を噤む。ブランシェは驚きを隠せないようで、「お、屋上からだと……?」と動揺しているようだ。

「実際に廊下に警備や護衛がいたら入りにくいでしょう?だったら屋上から来ると考えるのが自然だわ。むしろ、屋上から来るように仕向けたほうがいいくらい。その方があちらも動きが制限されてくるだろうから」

下から登るのもアリかもしれないが、闇夜で下手に散開されては困るので、できるだけ下には警備が厳重であるほうがいいだろう。

「だが、その屋上になぜキミが?」
「今回実行犯に関して少人数で来ることが予想されるからよ。1、2人は多分部屋に侵入するだろうから、その実行犯はブランシェとクエリーシェルに対処をお任せするけど、念のため待機で屋上に残るメンバーもいるだろうから、私はその対処に当たるわ」
「それなら、ステラが危ないだろう!?」

うんうん、と大きく頷くクエリーシェル。ブランシェの手前、大きな声で言えないものの「また無茶するつもりか」と視線で訴えてくる。

「私なら隠れ易いし、ある程度の立ち回りができるから大丈夫。こういう隠れながらコトを起こすのには慣れてるから、2、3人くらいならどうにかできるわ。安心して」
「安心できるか!?僕は反対だぞ!キミに無茶をさせられない!」
「では、他に案はあるの?代案があるなら聞かないこともないわよ?」

余裕持って尋ねれば、「あー」「うー」とぐだぐだ言いながら必死で頭をフル回転させて代案を出そうとするブランシェ。

そして、いくつか代案を出されるものの、詰めが甘かったり、犠牲者が出そうなものだったりとどれもこれも却下した。

「ぐぬぬぬ……!」
「いい加減に腹を括ってちょうだいな。言っておきますけど、私はあのゴードジューズ帝国の包囲網から生還した女よ?そう簡単にやられるわけがないでしょう?」

自信たっぷりに言えば、ブランシェが渋々ながら白旗を挙げる。こうして、私の案が採用されたのだった。
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