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4章【外交編・サハリ国】

34 無鉄砲

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「しー!声が大きいですよ?」
「ば、バカじゃないですの!?バカじゃないですの!??」
「なぜ2回言ったんですか……」
「あまりにステラのアホさ加減に驚きすぎてですわよ!」

あからさまに動揺しているのが見てとれる。若い無垢なお嬢さんには、ちょっとこの提案は刺激が強すぎただろうか。

「というか、日頃無鉄砲だとは思っておりましたが、そもそもどうやってそんなことなさるおつもりですか!」

(まさか、彼女から無鉄砲だと思われてただなんて)

ちょっと心外ではあるものの、そこを言ったところで先に進まないのでモヤモヤしつつもスルーする。相変わらずふーふーと、まるで猫の威嚇のように憤っている彼女に苦笑しながら落ち着くように促す。

「まぁまぁ、落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!こんなのがバレたら、速攻でワタクシ達は極刑ですわよ!?」

マーラが怒るのも無理はない。普通はそんなことを計画するだけでも首が飛ぶ事案だった。

「まぁ、そうなんですけど。でも、このまま何もしないままでも、処刑の可能性だってあるじゃないですか」

うぐ、と言葉に詰まるマーラ。実際問題、他にどうするか。ただこのまま時間が経てば事態が好転するか、……と言われても絶対にしないだろう。

下手をすればこのまま皆一同処刑である。となれば、何かしらことを起こさねばならない。

ことを起こす上で、最も効果的だと考えられるもの。

それは国王ブランシェの襲撃、および人質にすること。そして、彼を人質にすることしか、こちらを有利にする道はない。

(幸い、ここの国民はブランシェをとても慕っていると聞いた。先程の兵の話ぶり的にも、国王にきちんと忠誠を誓っているように見えた)

であれば、ブランシェを人質にしさえすれば、こちらの発言を通せる可能性は高くなる。どうにか船に乗ってここを離れることはできるだろう。離れさえすれば、あとはどうにでもなるはずだ。

まぁ、心象はもちろん最悪だろうが、背に腹にはかえられぬ。

(こんな提案したら、絶対にケリー様には反対されるだろうけど)

クエリーシェルがいたら、絶対に何が何であろうとも私を離してくれないだろう。そういう意味では、彼がここにいなくてよかった。

「いつなさる予定ですか?」
「そうですね……。さすがに今夜は厳しいと思いますが、できれば早く、明日の夜にでも」
「随分と急ですわね」
「あまり時間をかけてもよさそうな事案ではありませんから」

私のあずかり知らぬところで、いつ誰かが犠牲になるとも限らない。さらに船を壊されたり、荷物を運び出されたりしても厄介だ。下手に色々な物が流出してしまったら、今後の旅路にも支障が出る。

(あとは少しでも情報を……)

本来こういうことは事前に情報を得てから綿密な計画を立てるものであるが、そうも言っていられない。なので、今夜から明日の夜にかけて、ある程度の情報を得なければならない。

「本当になさるおつもり?」
「えぇ。さすがの私も、何もせずに死にたくありませんので」

さらりと言ってのければ、「はぁぁぁぁ」と大きな溜息をつかれた。

(なんとなくわざとらしいが、指摘しないでおこう)

「本当ステラって頑固ですのね。しょうがありませんわね、ワタクシにできることがあればお手伝い致しますわ」
「え?結構です」
「少しは頼ろうとしなさいな!」

(思いのほかノリツッコミがお上手だ)

そんなことを思いながら「嘘です。冗談ですよ」と彼女を慰めつつ、今後もし頼むことがあれば協力してください、とお願いするのだった。
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