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4章【外交編・サハリ国】
15 心霊
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「部屋で捜索してたら、箱から急に彼女が飛び出してきてな。予想外のことで、どうにも上手く反応できずにこのザマだ」
クエリーシェル曰く、香油や香辛料などの入った箱の物陰などを念入りに探していたらしいのだが、不意打ちで勢いよく彼女が箱から飛び出してきたらしい。
そして驚いた彼は、そのままひっくり返って荷物の箱で頭を打ってしまってそのまま意識を失ってしまった、ということのようだ。
まぁ、確かに捜索しているとはいえ、不意をつかれたら驚くのも無理はないと思うが、もし盗賊やスパイの類いだったら、そういう反応では危ういのではないだろうか。
「あの、ケリー様って心霊系が苦手なんですか?」
単刀直入に訊ねれば、途端手で口を覆って無言になる。この反応的に、どうやらやはり苦手は苦手らしい。
「心霊というか、目に見えないようなものはあまり得意ではない。いや、実際の化け物というか物理攻撃が効くような相手であれば平気なのだが。あと今回セイレーンって所謂女性の物の怪だろう?そういうのは何というか、苦手だ……」
険しい表情で苦々しく言うクエリーシェル。何となく、わかる気がするような、しないような。
確かに、攻撃ができるものに関しては撃退が可能なので対処ができる。
しかし、心霊の類い……今回のセイレーンは歌声を聴くと惑わされて最終的には食べられるsぷだし、人智を超えた存在では対処ができないというのはわからなくもない。
クエリーシェルの場合は義母のこともあり、女性が苦手なこともあって、なおのこと不得手なのかもしれない。
(女性に誘惑されて、というからそういう系のことだろうし。性的虐待を受けてたケリー様が苦手意識を持つのは仕方ないことなのかもしれない)
いくら国軍総司令官と言えども苦手なものくらいあっても確かに不思議ではない。そもそも普通心霊系の類いに遭遇することなど皆無だろうし。
(って、考えてみたら私全然信じてなかったけど、姉様普通に会いに来てたわ)
いつも私に何かトラブルがあるときに彼女が現われるが、よくよく考えてみたらあれは心霊系の類いとなるのか。
(そういうこと言ったらさらに面倒なことになりそうだから言わないでおこう)
元々言うつもりはなかったが、何かの折にぽろっと言ってしまっては大変だと、姉からの助言等に関しては間違っても言わないようにしようと誓った。
「てか、普段は大丈夫なんですか?」
「普段とは?」
「いえ、家でとか戦場でとか……」
「言われてみれば、あまり気にしたことないなぁ……。そういう場面では頓着しなくなる」
「そういうものですか」
あまり言及して恐がらせてもしょうがないので、あえてそれ以上は掘り下げないようにしようと話題を変えるために逡巡する。
「そういえば、どうして私を外へ連れ出したんですか?」
今更のことを聞けば、クエリーシェルは少々困った顔をした。
「単純にリーシェが心配だったのもそうだが、どうにも彼女は私を諦めて無かったそうでな」
「え!!!?」
思わず大きな声が出る。想像の斜め上をいくとは、こういうことか。
「まさかとは思いますが、クエリーシェル様を追ってこの船に乗ったと……?」
「その、まさかのようだ」
頭が痛い。彼女は突拍子もないことをするのだとアーシャが言っていたことを思い出す。
(そういえば、コルジール語を覚えるために城の図書室に忍び込んでたとも言ってたし。とはいえ、いくらなんでも行動力ありすぎでしょ……)
「すぐにバレてしまっては、すぐに国に返されると思って隠れていたらしい」
「なるほど。それで隠れていたと……」
「どうしたものかな……」
(本当、どうしたものか)
ここまで来てしまっては、今更戻るに戻れない。私は、はぁぁぁぁ、と大きく溜め息をついて天を仰ぐのだった。
クエリーシェル曰く、香油や香辛料などの入った箱の物陰などを念入りに探していたらしいのだが、不意打ちで勢いよく彼女が箱から飛び出してきたらしい。
そして驚いた彼は、そのままひっくり返って荷物の箱で頭を打ってしまってそのまま意識を失ってしまった、ということのようだ。
まぁ、確かに捜索しているとはいえ、不意をつかれたら驚くのも無理はないと思うが、もし盗賊やスパイの類いだったら、そういう反応では危ういのではないだろうか。
「あの、ケリー様って心霊系が苦手なんですか?」
単刀直入に訊ねれば、途端手で口を覆って無言になる。この反応的に、どうやらやはり苦手は苦手らしい。
「心霊というか、目に見えないようなものはあまり得意ではない。いや、実際の化け物というか物理攻撃が効くような相手であれば平気なのだが。あと今回セイレーンって所謂女性の物の怪だろう?そういうのは何というか、苦手だ……」
険しい表情で苦々しく言うクエリーシェル。何となく、わかる気がするような、しないような。
確かに、攻撃ができるものに関しては撃退が可能なので対処ができる。
しかし、心霊の類い……今回のセイレーンは歌声を聴くと惑わされて最終的には食べられるsぷだし、人智を超えた存在では対処ができないというのはわからなくもない。
クエリーシェルの場合は義母のこともあり、女性が苦手なこともあって、なおのこと不得手なのかもしれない。
(女性に誘惑されて、というからそういう系のことだろうし。性的虐待を受けてたケリー様が苦手意識を持つのは仕方ないことなのかもしれない)
いくら国軍総司令官と言えども苦手なものくらいあっても確かに不思議ではない。そもそも普通心霊系の類いに遭遇することなど皆無だろうし。
(って、考えてみたら私全然信じてなかったけど、姉様普通に会いに来てたわ)
いつも私に何かトラブルがあるときに彼女が現われるが、よくよく考えてみたらあれは心霊系の類いとなるのか。
(そういうこと言ったらさらに面倒なことになりそうだから言わないでおこう)
元々言うつもりはなかったが、何かの折にぽろっと言ってしまっては大変だと、姉からの助言等に関しては間違っても言わないようにしようと誓った。
「てか、普段は大丈夫なんですか?」
「普段とは?」
「いえ、家でとか戦場でとか……」
「言われてみれば、あまり気にしたことないなぁ……。そういう場面では頓着しなくなる」
「そういうものですか」
あまり言及して恐がらせてもしょうがないので、あえてそれ以上は掘り下げないようにしようと話題を変えるために逡巡する。
「そういえば、どうして私を外へ連れ出したんですか?」
今更のことを聞けば、クエリーシェルは少々困った顔をした。
「単純にリーシェが心配だったのもそうだが、どうにも彼女は私を諦めて無かったそうでな」
「え!!!?」
思わず大きな声が出る。想像の斜め上をいくとは、こういうことか。
「まさかとは思いますが、クエリーシェル様を追ってこの船に乗ったと……?」
「その、まさかのようだ」
頭が痛い。彼女は突拍子もないことをするのだとアーシャが言っていたことを思い出す。
(そういえば、コルジール語を覚えるために城の図書室に忍び込んでたとも言ってたし。とはいえ、いくらなんでも行動力ありすぎでしょ……)
「すぐにバレてしまっては、すぐに国に返されると思って隠れていたらしい」
「なるほど。それで隠れていたと……」
「どうしたものかな……」
(本当、どうしたものか)
ここまで来てしまっては、今更戻るに戻れない。私は、はぁぁぁぁ、と大きく溜め息をついて天を仰ぐのだった。
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