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2章【告白編】

60 今日の目的

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「「ごちそうさまでした」」

綺麗サッパリなくなった食事。全て胃の中に押し込むのは苦痛ではなかったが、さすがに少し多かったように思う。久々に「満腹で動けない」と言った感じだ。

(つい、食い意地が張ってしまった)

「食事の片付けが終わったら、今回の下見について話そう」
「はい、よろしくお願いします」

ということで、ちゃちゃっとテーブルの上を片付けたあとに、お互いに向かい合って座る。そして、その空いたスペースに、クエリーシェルが地図を広げる。

「今回ここに来た下見というのは、マルダスからの侵入経路の1つとして、ここが可能性として挙げられるからだ」
「なるほど」

考えられない話ではない。この渓谷は北の大山脈を多少登らなければならないものの、どちらかというと迂回ルートである。あの大山脈を超えるよりも遥かにこちらから来る方が楽だろう。

渓谷は見る限り自然豊かだし、そのぶん山菜やキノコ、木の実や動物など食糧確保も簡単である。狙い目と言えば狙い目であることに間違いないだろう。

「ここのことをご存知の方はどれくらいいるのですか?」
「それが少し厄介でな。貴族は滅多に来るところではないから、あまり知るものはいないとは思うが、軍関係者であれば粗方知ってはいるだろう。もし、情報漏洩が軍関係者だと、木々の配置や安全な道の場所の経路など知られているとなると、些か面倒ではある」
「確かにそうですね」
「調査はしているが、相手もバカではない。なかなかどうにも芋づるで全員とはいかないのだ」

クエリーシェルが嘆くのも無理はない。怪きは罰せず、の方針であるコルジールは、きちんとした証拠が出てこないとなかなか投獄したり処刑したりすることは難しい。

現在も投獄中のクォーツ夫妻も未だに口を割ることもなく、黙秘を続けているという。度々ロゼットが国王命令で王城へと借り出されているが、どうにも上手くいかないようだ。

そもそもあの家はあまり親子関係がよくないのか、以前ロゼットがポロッと「私が行ったところで、あの人達が話すわけないのに」と溜息交じりにぼやいていたのが、なんとなく気になる。

実際、あのパーティーは名目上はロゼットの婚約相手を探すためのものであったし、そこで事件を起こしたとなると彼女のショックは計り知れないものだろうとは思う。

(そういうところは、あんまり見せてくれないけど)

ペルルーシュカのことも気になるが、彼女は飄々としてて、正直人物像があまりわからない。私のことを欲しいだなんだと騒ぎ立てるが、それが本心だとはどうにも思えないのだ。

(最近ではケリー様にちょっかいを出してるようだし)

その辺はモヤモヤするものの、クエリーシェル自身もこれと言って大したアクションを起こしてないというか、適当にあしらってはいるのでそこまで気にはなってないが、いい気はしないのは当然と言えば当然だ。

(彼女は一体何を考えているのだか)

「あの一件以来特に動きは?」
「ない。一先ずあの件に関わっていたものはまるごと捕らえたが、その後はどうにもな。証拠もよくもまぁ綺麗に消されている」
「そうなると、やはりまだ貴族の中にスパイが混じっているのでしょうね」
「だろうな。とはいえ、ここのところはこちらも準備に余念がないからな。そう易々と動くことはないだろうが」

今のところマルダスも帝国も大きな動きはないが、私達不在の時に何が起こるかわからない。不用意なことが起きぬよう、念には念を入れておくことには越したことはない。

「犯人捜索は国王にお任せするとしまして、私達は具体的に何を?」
「クイードが言うには情報通りにはさせるな、と」
「なるほど?」

つまり、相手が知らない罠や仕掛けなどを用意しておけということだろうか。確かにそういう知識面では彼より私の方が優っていると言っても過言ではないだろう。

「以前、知人の傭兵に聞いたのですが」
「知人に傭兵がいるのか」
「傭兵というか、ほぼ何でも屋みたいなものですが。暗殺や密偵などもやってましたし」
「いや、そういうことではない」

呆れた表情のクエリーシェルに突っ込まれて、すぐに脱線しかけた話を戻す。

「とりあえず私が知りうる中で実際に効果が実証されている策としては、ここでは自然を生かした策が1番だと思います」
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