87 / 95
第八十六話 いい女
しおりを挟む
「だけど、無駄だよ。これで終わりさ。残念だったね」
「いいえ。まだ、終わりじゃない!」
「ははっ。強がってもダメだよ。もう立つのだってやっとじゃないか。既にキミはボロボロ。どこに勝ち目があるっていうんだい? さようなら、シオン。楽しませてくれてありがとう」
ピュン……ッ
膨張した魔力を一気に凝縮させると、魔王は指先から赤い光を放って私の身体を貫いた。……はずだった。
「……は?」
けれどその光は、私から溢れた白い光によって掻き消され、その赤い光ごと飲み込む。
魔王は訳がわからないといった様子で呆然としていた。
(あぁ、やっぱり。そういうことね)
私はこれで確信した。魔王の能力を。
「バカな。おかしい。ありえない……っ」
「だから言ったでしょ。まだ終わりじゃないって!」
「ふざけるな……っ! そんな戯言。そもそもそのボロボロの身体で、一体何ができるというんだ!」
「いいわよ。だったら最強の聖女の奇跡見せてあげる!!」
私が手を翳すと、吹っ飛ぶ魔王。不意打ちだったせいか、そのまま壁に叩きつけられる。
「……ぐはぁ……っ! っく。なぜ、急にこんな力が……っ?」
「私、気づいたの魔王の能力。……あんたの能力は相手の力を倍にして返すことだってね」
「っ……!」
「どう考えても魔力量で言ったら私のほうが多いはずなのに、全てにおいて私の威力を上回るっておかしいと思ったのよ。それで、気づいちゃったの。もしかしたら魔王の能力って相手の力を利用してるんじゃないかって。やっぱりビンゴだったようね」
魔王が再び攻撃を仕掛けてくる。
けれど、全て私が手を翳してことごとく打ち消した。
「いくら気づいたからと言ってボロボロの身体でこんな力が残っているなんて……っ」
「もう終わり? さっきの余裕はどこへ行ったの? ほら、私まだ終わってないけど?」
私が煽ると忌々しげにこちらを睨んでくる魔王。その瞳も今となっては子供が反抗してるようにしか見えなかった。
「くそっ! 何で僕に攻撃をすることができるんだ……! どうやったって僕が負けるはずがないというのに!!」
「はい、残念でした~! 私が今発してる魔法は聖の光魔法。つまり、魔王……魔物にとってはマイナスの力。マイナスはいくらかけてもマイナスだから、私には何も作用しないのよ」
「な、んだと……!? まさか、勇者魔法だけでなく、聖女魔法も使えるなんてそんなはずが……っ!?」
「言ったでしょう? 私は、最強の聖女だって」
「そんなありえない! そんなの、勇者と聖女の両方の血を……っ! もしや、シオン……キミは勇者と聖女の合いの子か……っ!?」
「さぁ、遊びはここまでよ。ヴィルのぶん含めて、さっきまでのお返しをさせてもらおうじゃないの!」
私が両手を翳すとそこから発光し、真っ白い光が辺りを覆っていく。
「な、なんだ、なんなんだ……う、力が……っ! くぅっ、こんな女なんかに……僕が、負けるわけが……っ!」
「私、人一倍負けず嫌いな上に絶対に諦めない女なの。どう? いい女でしょ。結婚したくなった? まぁ、あんたなんか、こっちから願い下げですけど」
にっこりと微笑んで見せると浄化の魔法で全てを覆い尽くす。傷あるものは全て治癒し、清めて修復する魔法ホーリーの能力を解放すると、世界は真っ白な光によって覆われた。
「いいえ。まだ、終わりじゃない!」
「ははっ。強がってもダメだよ。もう立つのだってやっとじゃないか。既にキミはボロボロ。どこに勝ち目があるっていうんだい? さようなら、シオン。楽しませてくれてありがとう」
ピュン……ッ
膨張した魔力を一気に凝縮させると、魔王は指先から赤い光を放って私の身体を貫いた。……はずだった。
「……は?」
けれどその光は、私から溢れた白い光によって掻き消され、その赤い光ごと飲み込む。
魔王は訳がわからないといった様子で呆然としていた。
(あぁ、やっぱり。そういうことね)
私はこれで確信した。魔王の能力を。
「バカな。おかしい。ありえない……っ」
「だから言ったでしょ。まだ終わりじゃないって!」
「ふざけるな……っ! そんな戯言。そもそもそのボロボロの身体で、一体何ができるというんだ!」
「いいわよ。だったら最強の聖女の奇跡見せてあげる!!」
私が手を翳すと、吹っ飛ぶ魔王。不意打ちだったせいか、そのまま壁に叩きつけられる。
「……ぐはぁ……っ! っく。なぜ、急にこんな力が……っ?」
「私、気づいたの魔王の能力。……あんたの能力は相手の力を倍にして返すことだってね」
「っ……!」
「どう考えても魔力量で言ったら私のほうが多いはずなのに、全てにおいて私の威力を上回るっておかしいと思ったのよ。それで、気づいちゃったの。もしかしたら魔王の能力って相手の力を利用してるんじゃないかって。やっぱりビンゴだったようね」
魔王が再び攻撃を仕掛けてくる。
けれど、全て私が手を翳してことごとく打ち消した。
「いくら気づいたからと言ってボロボロの身体でこんな力が残っているなんて……っ」
「もう終わり? さっきの余裕はどこへ行ったの? ほら、私まだ終わってないけど?」
私が煽ると忌々しげにこちらを睨んでくる魔王。その瞳も今となっては子供が反抗してるようにしか見えなかった。
「くそっ! 何で僕に攻撃をすることができるんだ……! どうやったって僕が負けるはずがないというのに!!」
「はい、残念でした~! 私が今発してる魔法は聖の光魔法。つまり、魔王……魔物にとってはマイナスの力。マイナスはいくらかけてもマイナスだから、私には何も作用しないのよ」
「な、んだと……!? まさか、勇者魔法だけでなく、聖女魔法も使えるなんてそんなはずが……っ!?」
「言ったでしょう? 私は、最強の聖女だって」
「そんなありえない! そんなの、勇者と聖女の両方の血を……っ! もしや、シオン……キミは勇者と聖女の合いの子か……っ!?」
「さぁ、遊びはここまでよ。ヴィルのぶん含めて、さっきまでのお返しをさせてもらおうじゃないの!」
私が両手を翳すとそこから発光し、真っ白い光が辺りを覆っていく。
「な、なんだ、なんなんだ……う、力が……っ! くぅっ、こんな女なんかに……僕が、負けるわけが……っ!」
「私、人一倍負けず嫌いな上に絶対に諦めない女なの。どう? いい女でしょ。結婚したくなった? まぁ、あんたなんか、こっちから願い下げですけど」
にっこりと微笑んで見せると浄化の魔法で全てを覆い尽くす。傷あるものは全て治癒し、清めて修復する魔法ホーリーの能力を解放すると、世界は真っ白な光によって覆われた。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
かの世界この世界
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
人生のミス、ちょっとしたミスや、とんでもないミス、でも、人類全体、あるいは、地球的規模で見ると、どうでもいい些細な事。それを修正しようとすると異世界にぶっ飛んで、宇宙的規模で世界をひっくり返すことになるかもしれない。
チート狩り
京谷 榊
ファンタジー
世界、宇宙そのほとんどが解明されていないこの世の中で。魔術、魔法、特殊能力、人外種族、異世界その全てが詰まった広大な宇宙に、ある信念を持った謎だらけの主人公が仲間を連れて行き着く先とは…。
それは、この宇宙にある全ての謎が解き明かされるアドベンチャー物語。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
アラサーですが、子爵令嬢として異世界で婚活はじめます
敷島 梓乃
恋愛
一生、独りで働いて死ぬ覚悟だったのに
……今の私は、子爵令嬢!?
仕事一筋・恋愛経験値ゼロの アラサーキャリアウーマン美鈴(みれい)。
出張中に起きたある事故の後、目覚めたのは 近代ヨーロッパに酷似した美しい都パリスイの子爵邸だった。
子爵家の夫妻に養女として迎えられ、貴族令嬢として優雅に生活…… しているだけでいいはずもなく、婚活のため大貴族が主催する舞踏会に 参加することになってしまう!
舞踏会のエスコート役は、長身に艶やかな黒髪 ヘーゼルグリーン瞳をもつ、自信家で美鈴への好意を隠そうともしないリオネル。
ワイルドで飄々としたリオネルとどこか儚げでクールな貴公子フェリクス。
二人の青年貴族との出会い そして異世界での婚活のゆくえは……?
恋愛経験値0からはじめる異世界恋物語です。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる