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第七十三話 噂
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「ナズリの村にはここからどれくらいなんだ?」
「うーん、地図で見ると半日もかからないくらいだと思う」
「お前さん達、ナズリの村に行くのかい?」
朝食を済ませながら次の目的地であるナズリの村の会話をしていると、宿屋の主人に声をかけられる。
「はい。そのつもりですが……」
「やっぱりそうか。何の用事があるか知らんが、やめておいたほうがいいぞ。あそこは今、魔王崇拝でヤバいことになってる」
「魔王崇拝?」
「あぁ、何やら魔王を盲目的に崇拝してて、魔王の言うことは絶対。余所者を排除しているらしい」
「え、そうなんですか」
「だから悪いことは言わないから、行くのはやめておいたほうがいい」
やめておけ、って言われてもなぁ。
聖女の結婚を認めてもらうための試練なわけだし、行かないわけにはいかない。
というか、王様はこのことを知ってて最後にこの村を指定したのだろうか。
あ、ありえる……!
でも、ヴィルも一緒にいるのにこの村を指定するくらいだから、さすがに死ぬ可能性があるくらいヤバいってことはないだろうけど。……多分。
というか、前回がシュド=メルで次に魔王ってそもそもヤバくない?
いきなりもうラスボス? え、マジで?
事実かどうかは定かでないが、とにかく危機感が募る。
だが、私達には行かないという選択肢はないので適当に主人と話を合わせながら、私達は早々に宿屋を出て行くのだった。
◇
「魔王か。噂は聞いておるが、ワシもよく知らんのじゃよなぁ」
「どういうこと? 魔王って言うからには魔物の王じゃないの?」
コッキリの村を出て、ナズリの村に行く道中グルーに質問したのだが、要領を得なくてさらに混乱する。
てっきり魔王から生み出されたのが魔物だと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「半分当たりで半分ハズレじゃな。魔王は魔物の王ではあるが、あやつが魔物を生み出したわけではない」
「というと?」
「とにかく強いのじゃ。魔物の中で最強と言われていて、魔物は誰もヤツに手出しはできんし、頭が上がらんのじゃよ」
「なるほど?」
ということは、めちゃくちゃ強いということか。この前戦ったシュド=メルよりも強くて大きいのだろうか。
それはさすがに骨が折れるな。
「え? じゃあ、オレはもっと鍛えないとマズいということか?」
私達の話を聞いて、ヴィルが青褪める。
確かに、先日の一件で私が魔力をすっからかんにしたのを知ってるヴィルが青褪めるのも無理はなかった。
「あー……。でも、さすがに魔王と戦うってことはないんじゃない? ほら、魔王信仰を止めればいいってだけかもしれないし」
「そ、そうか?」
「そうじゃな。あくまで噂じゃし。ちなみにワシはそもそも魔王に会ったことがない」
「何よそれ。魔王に会ったことない魔物ってどうなの?」
「別に魔物だからって必ずしも魔王に仕えてるというわけじゃないからのう。あくまで魔王とは魔物の中で一番強いと言われてるだけの存在じゃ」
「ふぅん。そういうもんなんだ」
「オレが足手纏いにならないのならいいんだが……」
「うーん、地図で見ると半日もかからないくらいだと思う」
「お前さん達、ナズリの村に行くのかい?」
朝食を済ませながら次の目的地であるナズリの村の会話をしていると、宿屋の主人に声をかけられる。
「はい。そのつもりですが……」
「やっぱりそうか。何の用事があるか知らんが、やめておいたほうがいいぞ。あそこは今、魔王崇拝でヤバいことになってる」
「魔王崇拝?」
「あぁ、何やら魔王を盲目的に崇拝してて、魔王の言うことは絶対。余所者を排除しているらしい」
「え、そうなんですか」
「だから悪いことは言わないから、行くのはやめておいたほうがいい」
やめておけ、って言われてもなぁ。
聖女の結婚を認めてもらうための試練なわけだし、行かないわけにはいかない。
というか、王様はこのことを知ってて最後にこの村を指定したのだろうか。
あ、ありえる……!
でも、ヴィルも一緒にいるのにこの村を指定するくらいだから、さすがに死ぬ可能性があるくらいヤバいってことはないだろうけど。……多分。
というか、前回がシュド=メルで次に魔王ってそもそもヤバくない?
いきなりもうラスボス? え、マジで?
事実かどうかは定かでないが、とにかく危機感が募る。
だが、私達には行かないという選択肢はないので適当に主人と話を合わせながら、私達は早々に宿屋を出て行くのだった。
◇
「魔王か。噂は聞いておるが、ワシもよく知らんのじゃよなぁ」
「どういうこと? 魔王って言うからには魔物の王じゃないの?」
コッキリの村を出て、ナズリの村に行く道中グルーに質問したのだが、要領を得なくてさらに混乱する。
てっきり魔王から生み出されたのが魔物だと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「半分当たりで半分ハズレじゃな。魔王は魔物の王ではあるが、あやつが魔物を生み出したわけではない」
「というと?」
「とにかく強いのじゃ。魔物の中で最強と言われていて、魔物は誰もヤツに手出しはできんし、頭が上がらんのじゃよ」
「なるほど?」
ということは、めちゃくちゃ強いということか。この前戦ったシュド=メルよりも強くて大きいのだろうか。
それはさすがに骨が折れるな。
「え? じゃあ、オレはもっと鍛えないとマズいということか?」
私達の話を聞いて、ヴィルが青褪める。
確かに、先日の一件で私が魔力をすっからかんにしたのを知ってるヴィルが青褪めるのも無理はなかった。
「あー……。でも、さすがに魔王と戦うってことはないんじゃない? ほら、魔王信仰を止めればいいってだけかもしれないし」
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「別に魔物だからって必ずしも魔王に仕えてるというわけじゃないからのう。あくまで魔王とは魔物の中で一番強いと言われてるだけの存在じゃ」
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「オレが足手纏いにならないのならいいんだが……」
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