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第三十六話 呪い
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「あああああ! もう無理! 疲れた! 死ぬ!」
「ワシも疲れた。あそこまでして何も出てこないとは……」
市長に用意された宿泊所のベッドにバタンと一人と一匹で突っ伏す。
もう全身筋肉痛だった。
いくら普段自宅の畑を世話していたとはいえ、その何十倍もある広大な畑を己の肉体のみで掘り返すのはさすがにキャパオーバーだ。
普段魔法に頼っているとはいえ、これほどまでに腕や腰と脚に来るとは思わなくて想像以上の過酷な作業に心身共に疲弊していた。
しかもそれだけ頑張ったのに収穫は何もなし。ただ無駄に土を掘っただけという情けない結果で終わってしまった。
「でもさー、確かに呪いの類いがあるのは感じるのよねぇ」
「そうじゃな。何やら、ちと臭ったな」
市長にスコップを渡され魔法を使うなと言われたときは、聖女を呼んだのはただの気まぐれでちょっとした嫌がらせかと思っていたが、実際に掘り返してみると確かに呪いの気配がしていた。
ほんの僅かではあるものの、呪い特有の悪臭と毒物を孕んだような靄が辺り一面を覆っていて、実際に作物の種を蒔いてみたらすぐに種が腐ってしまったのだから相当だ。
「どう見ても土の下に原因があるとは思うけど、ここまで掘って出ないとなるともっと深いとこってことかしら」
「そうじゃな。だが、魔法を使うなというのが厄介じゃのう」
ここまで土が汚染されているなら魔法を使ってもいいんじゃないかと思ってしまうが、やっぱりダメだろうか。
できれば明日バレないように魔法を使ってしまいたい。
というか、ここまで汚染されてるなら一度全部浄化する必要がある気がするし、そうなれば魔法は必須だろう。
「どうにか言い訳して浄化できるように持っていくかぁ……」
パチンと指を鳴らして回復魔法を自分とグルーにかける。今日は魔法をほぼ使わなかったため、魔力が有り余るほど残っていた。
「あー……魔力って使わなすぎてもダメね。なんか力が有り余って寝れる気がしないわ」
「シオンの場合、胎内で作られる魔力量が極端に多いんじゃろうな。人間でここまでの魔力の持ち主は滅多に見ないしのう」
「確かに、珍しいかもね。昔からやけに無尽蔵に湧いてくる感じなのよね。実際、元カレに魔力炉って揶揄われたこともあったし」
かつて、元カレにフった腹いせに「俺だって元からお前のこと好きじゃねーし! お前なんかただの便利な魔力炉にしかすぎないんだよ!」と言われたことを思い出す。
当時、私の魔法に頼りきりで自堕落になった彼に我慢ができずに別れ話をしたときに言われたのだが、未だに当時のことをすぐに思い出すくらいにはちょっとしたトラウマだ。
「ワシも疲れた。あそこまでして何も出てこないとは……」
市長に用意された宿泊所のベッドにバタンと一人と一匹で突っ伏す。
もう全身筋肉痛だった。
いくら普段自宅の畑を世話していたとはいえ、その何十倍もある広大な畑を己の肉体のみで掘り返すのはさすがにキャパオーバーだ。
普段魔法に頼っているとはいえ、これほどまでに腕や腰と脚に来るとは思わなくて想像以上の過酷な作業に心身共に疲弊していた。
しかもそれだけ頑張ったのに収穫は何もなし。ただ無駄に土を掘っただけという情けない結果で終わってしまった。
「でもさー、確かに呪いの類いがあるのは感じるのよねぇ」
「そうじゃな。何やら、ちと臭ったな」
市長にスコップを渡され魔法を使うなと言われたときは、聖女を呼んだのはただの気まぐれでちょっとした嫌がらせかと思っていたが、実際に掘り返してみると確かに呪いの気配がしていた。
ほんの僅かではあるものの、呪い特有の悪臭と毒物を孕んだような靄が辺り一面を覆っていて、実際に作物の種を蒔いてみたらすぐに種が腐ってしまったのだから相当だ。
「どう見ても土の下に原因があるとは思うけど、ここまで掘って出ないとなるともっと深いとこってことかしら」
「そうじゃな。だが、魔法を使うなというのが厄介じゃのう」
ここまで土が汚染されているなら魔法を使ってもいいんじゃないかと思ってしまうが、やっぱりダメだろうか。
できれば明日バレないように魔法を使ってしまいたい。
というか、ここまで汚染されてるなら一度全部浄化する必要がある気がするし、そうなれば魔法は必須だろう。
「どうにか言い訳して浄化できるように持っていくかぁ……」
パチンと指を鳴らして回復魔法を自分とグルーにかける。今日は魔法をほぼ使わなかったため、魔力が有り余るほど残っていた。
「あー……魔力って使わなすぎてもダメね。なんか力が有り余って寝れる気がしないわ」
「シオンの場合、胎内で作られる魔力量が極端に多いんじゃろうな。人間でここまでの魔力の持ち主は滅多に見ないしのう」
「確かに、珍しいかもね。昔からやけに無尽蔵に湧いてくる感じなのよね。実際、元カレに魔力炉って揶揄われたこともあったし」
かつて、元カレにフった腹いせに「俺だって元からお前のこと好きじゃねーし! お前なんかただの便利な魔力炉にしかすぎないんだよ!」と言われたことを思い出す。
当時、私の魔法に頼りきりで自堕落になった彼に我慢ができずに別れ話をしたときに言われたのだが、未だに当時のことをすぐに思い出すくらいにはちょっとしたトラウマだ。
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