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第二十六話 交渉

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 拘束の魔道具でぐるぐる巻きにし、身動きが取れない状態にする。その間グリフォンはぶるぶると震えていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい! つい出来心だったんじゃ! 何でもしますから命だけはどうかご勘弁を!!」
「えー、どうしよっかなぁ~?」
「実はまだワシ人間喰うたことはないんじゃ! ちょっとした好奇心で喰うてみたいとつい言ってしまっただけで……!」
「へぇ~? でも、プハマの村の人に生け贄を寄越せって脅してたんでしょ~? 私が来なかったら食べようとしてたわけじゃない~?」
「そ、それは……っ、ですが貴女様のおかげでもう懲りました! 人間はもう食べません! 今後はもう絶対に人を襲いません!!」
「ふぅん。……で? それをどうやって信じろと?」

 ニコニコと微笑んで見せれば、再びぶわっと目に涙を溜め込んでぼろぼろと泣き出すグリフォン。
 完全に立場は私が上である。

「こいつもこう言ってるし、許してやってもいいんじゃないか?」

 グリフォンの嘆きに絆されたのか、おずおずと提案してくるヴィル。さすが温室育ちは甘っちょろい。

「甘い! これだから坊ちゃん育ちは甘いんだから! ごめんで済んだらギルドはいらないのよっ」
「それは、そうかもしれないが」
「言っておくけど、このまま野放しにしてもどうせ次はバレないように行動するだけよ。こういう口だけのヤツほど厄介なものはないんだから。それとも何? ヴィルは自国民が殺されて食べられてもいいってわけ?」
「い、いや、決してそういうわけでは……っ! そ、そうだな。悪い、今の言葉は忘れてくれ」

 私に気圧されてすぐに前言撤回するヴィル。
 頼みの綱が使い物にならなかったせいか、グリフォンがさらに嗚咽を上げながら泣き出す。

「うぐっ、えぐっ、お願いだから、殺さないでくだされぇぇっ」
「お黙り。それ以上泣き喚くようなら今すぐ焼きグリフォンにしてもいいのよ」

 私がピシャリと言うと、すぐさま泣きやむグリフォン。やはり嘘泣きだったようだ。

「それで? さっき何でもするって言ったけど、実際に何ができるの?」
「えっと……? 実際に、とは……」
「あんたが使い物になるという証明よ。一体私にとってどういうメリットがあるわけ?」
「そ、それは……」

 黙り込むグリフォン。どうせ詭弁だとは思っていたが、こうもあからさまだとは。

「やっぱり首と胴体を分けておきましょうか」

 にっこりと微笑んで大斧を振り上げる。
 すると「あああああああ! 待って待って待って! あ、空! 空が飛べます!」とグリフォンがジタバタ暴れ出した。

「それが私に何のメリットが?」
「ワシのところに来るまで徒歩じゃったろ? だから、ワシが移動で空を飛べば便利ではないでしょうか……!」
「なるほど」
「そうだな。移動手段が手に入るのはありがたいかもな。毎回転移魔法使う手間も魔力も必要ないし」
「それはそうね。なんだかんだ転移魔法は魔力を食うからあまり頻発はできないし。それもアリかもね」
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