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第二十三話 魔物

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 早朝からプハマの村を出発する。
 だいぶ日も昇ってきたが、未だに村長から聞いた根城が見当たらない。私はまだ体力が残っているけどヴィルに至っては既に虫の息で、これから戦闘が予想されるのに大丈夫かと心配になってくる。

「どこにいるんだ。魔物……」
「結構歩いたからそろそろ根城に着くと思うんだけど。あ、回復する?」
「いい。てか、回復ってそんな気軽にするもんじゃないだろ。そもそもシオンの魔力量は大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。今のところ魔力すっからかんになったことないから」
「そりゃ凄いな……」

 超上級ギルドにいたので今まで大型の魔物を何体も討伐してきたが、いずれも魔力を枯渇するほどの状況になったことは一度もなかった。
 そのため過信ではなく、今回もきっと大丈夫だろうという謎の自信を持ち合わせている。

「でも、さすがに今回ばかりはそうも言ってられないんじゃないか? 相手は人を喰う魔物だぞ?」
「まぁ、そうねぇ……」

 指摘された通り、人を喰うというのは相当な上級魔物だ。というのも、普通の魔物は人間を喰っても旨味を感じない。その辺の動物を食べたほうが満足感がある。
 しかし、上級の魔物になるとわけが違う。彼らは栄養として食物を欲するのではなく、魔力の補給として人間を喰うのだ。そのため人間を喰う魔物はそれだけ魔力を備え、消費する存在であり、通常の魔物よりも遥かに強い存在なのである。

「ま、そのときはそのときでしょ。とりあえずプハマの村の魔物避けの魔法壁は強化したから討伐し損なってもすぐには問題にならないはず。それに、聖女になったからには生け贄にされるのを黙って見過ごすわけにもいかないしね」
「ただ生け贄が好みの男だったからだろ。本当シオンは現金だよな」
「煩いわね。そこに一々つっかからないでよ。いいじゃない、目的があるのは何をするにも重要なことよ? それに、結婚相手が早くに見つかるならそれはそれでいいことじゃない」
「はいはい。そういうことにしといてやる」
「うっわ、何その言い方! すっごいムカつくんですけどー! どうせ王子なヴィルはモテるかもしれないですけど、姫でも何でもないただ強いギルドマスターの女は好かれないんですよーだ!」
「だから、強くても受け入れてくれる男を探せばいいだろ」
「簡単に言うけど、どこにそんな男がいるのよ!」
「ほぉう。やけにキャンキャンと煩いと思ったら、やっと餌がやってきたのか。しかも二人。随分と大盤振る舞いじゃのう」
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