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第十六話 世話焼き
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すっきりとした気持ちのいい朝だった。
昨夜は遅くまでヴィルに恋愛相談……という名のほぼ人生相談に近い話をしていたのだが、おかげで自分の今後の方向性が見えてきた気がする。
そもそも、家族のことや元カレのことなど自分のことをこんなにも話したのは初めてだった。
しかも、ぐだぐだと自分のダメンズウォーカーっぷりを晒してしまったにも関わらず、ヴィルは私をバカにするでもなくしっかりと話を聞いてアドバイスまでしてくれた。
ヴィルは思いのほか聞き上手で、おかげで私も聞かれるがまま素直に思っていることを吐き出すことができた。
考えてみたら普段は私が彼氏の話を聞くばかりで、こうも私に親身になって話を聞いてくれたのはヴィル以外いなかった。
同時に今までの彼氏はそれほど自分に興味を持ってくれていなかったのかと気づいて胸が痛んだが、それでも今後は前向きに今度こそ私のことを好きになって想ってくれる人を探す、ということで私の相談は帰結した。
私に合う人。
そして、私が一緒にいて心地よい相手。
うーん、それを探すのがなかなか難しいのよねー。誰彼構わず好きになっちゃっても結局別れちゃうなら意味ないし。となると、相手をきちんと見極めるというのは大事よね。うん、相性大事。
相手を尊重しつつ自分も大切にする。
いくら好みの男性だからと言っても何でも尽くして甘やかさない。そして、自分だけが好きになるのではなく、相手にも好きになってもらうこと。
何気に、かなり難易度が高いな。でも、私が結婚するためにはこの試練を乗り越えるしかないのも事実。
攻撃と魔法レベルはカンストしてしまっているわけだから、今後は恋愛関係のレベルを上げなくては……!
「よし、頑張るぞー!!」
気合いを入れて洗濯を終わらせ、朝食の用意をする。
一応我が家へはただ休むだけで立ち寄っているだけなので、今日こそヴィルには適正レベルになってもらってプハマの村に行かなくては。
聖女としての役目も果たしつつ、婚活もする。なんて一石二鳥の旅!
期待を胸に鼻歌を歌いながら作り終えた朝食を食卓に並べていると、綺麗な金色の髪や部屋着を乱しながら眠そうな様子のヴィルがリビングへとやってきた。
「おはよう~、ヴィル。よく眠れた?」
「あぁ、おはよう。……朝から随分と元気だな」
「ヴィルと話したら色々と吹っ切れてね。洗顔するなら、このタオルどうぞ」
「あー、ありがとう」
ふらふらとした足取りで洗面所に向かうヴィル。どうやら朝は弱いらしい。
夜遅くまで人生相談に付き合ってもらってしまって申し訳ないな、と思いつつも、こうして文句も言わずに付き合ってくれるヴィルの優しさがちょっと嬉しかった。
「髪の毛とか諸々整えようか?」
「結構だ。昨夜、過保護にしないと言ったばかりだろう」
「そうかもしれないけど、昨日色々私の話を聞いてくれたお礼にさ」
「じゃあ、髪だけ整えてくれ。着替えとかは自分でできる」
「わかった。じゃあ、ちゃちゃっと終わらせるね!」
パチンと指を鳴らすと、一瞬で寝癖がついていた髪を綺麗に整える。ヴィルは手鏡を覗きながら「便利だな」と溢しながら、食卓の席に着くと自分の姿をまじまじと見つめていた。
「他にもアレンジとかできるわよ? あ、装備とかも欲しいものがあったら……」
「シオン」
「ごめん。つい、お世話焼きたくなっちゃって」
名を強めに呼ばれて我にかえる。
どうも世話焼きの気質はすぐにどうこうできないらしい。身に染みついてしまった言動を改めるにはどうやら時間がかかりそうだ。
昨夜は遅くまでヴィルに恋愛相談……という名のほぼ人生相談に近い話をしていたのだが、おかげで自分の今後の方向性が見えてきた気がする。
そもそも、家族のことや元カレのことなど自分のことをこんなにも話したのは初めてだった。
しかも、ぐだぐだと自分のダメンズウォーカーっぷりを晒してしまったにも関わらず、ヴィルは私をバカにするでもなくしっかりと話を聞いてアドバイスまでしてくれた。
ヴィルは思いのほか聞き上手で、おかげで私も聞かれるがまま素直に思っていることを吐き出すことができた。
考えてみたら普段は私が彼氏の話を聞くばかりで、こうも私に親身になって話を聞いてくれたのはヴィル以外いなかった。
同時に今までの彼氏はそれほど自分に興味を持ってくれていなかったのかと気づいて胸が痛んだが、それでも今後は前向きに今度こそ私のことを好きになって想ってくれる人を探す、ということで私の相談は帰結した。
私に合う人。
そして、私が一緒にいて心地よい相手。
うーん、それを探すのがなかなか難しいのよねー。誰彼構わず好きになっちゃっても結局別れちゃうなら意味ないし。となると、相手をきちんと見極めるというのは大事よね。うん、相性大事。
相手を尊重しつつ自分も大切にする。
いくら好みの男性だからと言っても何でも尽くして甘やかさない。そして、自分だけが好きになるのではなく、相手にも好きになってもらうこと。
何気に、かなり難易度が高いな。でも、私が結婚するためにはこの試練を乗り越えるしかないのも事実。
攻撃と魔法レベルはカンストしてしまっているわけだから、今後は恋愛関係のレベルを上げなくては……!
「よし、頑張るぞー!!」
気合いを入れて洗濯を終わらせ、朝食の用意をする。
一応我が家へはただ休むだけで立ち寄っているだけなので、今日こそヴィルには適正レベルになってもらってプハマの村に行かなくては。
聖女としての役目も果たしつつ、婚活もする。なんて一石二鳥の旅!
期待を胸に鼻歌を歌いながら作り終えた朝食を食卓に並べていると、綺麗な金色の髪や部屋着を乱しながら眠そうな様子のヴィルがリビングへとやってきた。
「おはよう~、ヴィル。よく眠れた?」
「あぁ、おはよう。……朝から随分と元気だな」
「ヴィルと話したら色々と吹っ切れてね。洗顔するなら、このタオルどうぞ」
「あー、ありがとう」
ふらふらとした足取りで洗面所に向かうヴィル。どうやら朝は弱いらしい。
夜遅くまで人生相談に付き合ってもらってしまって申し訳ないな、と思いつつも、こうして文句も言わずに付き合ってくれるヴィルの優しさがちょっと嬉しかった。
「髪の毛とか諸々整えようか?」
「結構だ。昨夜、過保護にしないと言ったばかりだろう」
「そうかもしれないけど、昨日色々私の話を聞いてくれたお礼にさ」
「じゃあ、髪だけ整えてくれ。着替えとかは自分でできる」
「わかった。じゃあ、ちゃちゃっと終わらせるね!」
パチンと指を鳴らすと、一瞬で寝癖がついていた髪を綺麗に整える。ヴィルは手鏡を覗きながら「便利だな」と溢しながら、食卓の席に着くと自分の姿をまじまじと見つめていた。
「他にもアレンジとかできるわよ? あ、装備とかも欲しいものがあったら……」
「シオン」
「ごめん。つい、お世話焼きたくなっちゃって」
名を強めに呼ばれて我にかえる。
どうも世話焼きの気質はすぐにどうこうできないらしい。身に染みついてしまった言動を改めるにはどうやら時間がかかりそうだ。
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