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第九話 大司教
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「お待たせしました」
色気を含んだ程よい低音の声。振り向くとそこには深い藍色の長い髪の、黒曜石の瞳が美しいとても綺麗な顔立ちをした男性がいた。あまりの美しさ、色気に目も心も奪われる。
「お呼びでしょうか、陛下」
「大司教! 待っていたぞ。聖女の件だが、シオン殿が承知してくれなくてな。確かに彼女が次期聖女で間違いないのだな?」
「えぇ、もちろんです。それはもう何度も占いましたが、彼女以外他に誰もいません」
「そうか。それは困ったな……」
大司教が私に近づいてくる。
今まで見たこともないほど美しくて綺麗な顔立ちの男性にドキドキする。先程まであった怒りは一瞬のうちに遥か彼方へと吹っ飛んでいった。
エルフの末裔なのかしら……?
所作も美しいし、何より声がいい。身長も程よく高くて、物腰も柔らかくて素敵……!
顔を見るだけでも胸の高鳴りが抑えきれない。こんなにも素敵な人がこの世に存在したのか! という衝撃を受けるほどの好みの男性に私は大司教から目が離せなかった。
「貴女がシオンさん?」
「は、はい……っ!」
緊張して声が裏返ってしまったが、笑うことなく私の瞳をジッと見つめながら手を握ってくる。綺麗な手。指が細く白魚のような美しい手でありながらも、男性らしい節張った手で自分の手を包み込まれる。ほんの少しひんやりとした感触が心地いい。彼の皮膚の滑らかさを感じて胸がさらに早鐘を打った。
「こんな若い貴女に聖女という任務を託すのは私も心苦しいのですが、貴女しかいないのです。何かと縛りがあり、やりたくない気持ちもわかります。ですが、我が国の安寧。そして我が国民のためにもぜひとも貴女に聖女をお願いしたい。どうか、その素晴らしい力を奮っていただきたいのです。お願いです。聖女になっていただけないでしょうか?」
大司教の手に力が籠る。
顔を近づけられ、今すぐキスができそうなくらいの距離で説得されて気持ちが揺れる。大司教からはふわっと花の香りがして、その濃厚な香りに頭がクラクラとした。
「シオンさん。どうか……どうか、お願いします……っ」
イケメンが、私の好みのイケメンが、私に一生に一度のお願いをしてる……!
「わ、私……聖女やります!」
「「「えぇぇぇぇぇーーーー!?」」」
色気を含んだ程よい低音の声。振り向くとそこには深い藍色の長い髪の、黒曜石の瞳が美しいとても綺麗な顔立ちをした男性がいた。あまりの美しさ、色気に目も心も奪われる。
「お呼びでしょうか、陛下」
「大司教! 待っていたぞ。聖女の件だが、シオン殿が承知してくれなくてな。確かに彼女が次期聖女で間違いないのだな?」
「えぇ、もちろんです。それはもう何度も占いましたが、彼女以外他に誰もいません」
「そうか。それは困ったな……」
大司教が私に近づいてくる。
今まで見たこともないほど美しくて綺麗な顔立ちの男性にドキドキする。先程まであった怒りは一瞬のうちに遥か彼方へと吹っ飛んでいった。
エルフの末裔なのかしら……?
所作も美しいし、何より声がいい。身長も程よく高くて、物腰も柔らかくて素敵……!
顔を見るだけでも胸の高鳴りが抑えきれない。こんなにも素敵な人がこの世に存在したのか! という衝撃を受けるほどの好みの男性に私は大司教から目が離せなかった。
「貴女がシオンさん?」
「は、はい……っ!」
緊張して声が裏返ってしまったが、笑うことなく私の瞳をジッと見つめながら手を握ってくる。綺麗な手。指が細く白魚のような美しい手でありながらも、男性らしい節張った手で自分の手を包み込まれる。ほんの少しひんやりとした感触が心地いい。彼の皮膚の滑らかさを感じて胸がさらに早鐘を打った。
「こんな若い貴女に聖女という任務を託すのは私も心苦しいのですが、貴女しかいないのです。何かと縛りがあり、やりたくない気持ちもわかります。ですが、我が国の安寧。そして我が国民のためにもぜひとも貴女に聖女をお願いしたい。どうか、その素晴らしい力を奮っていただきたいのです。お願いです。聖女になっていただけないでしょうか?」
大司教の手に力が籠る。
顔を近づけられ、今すぐキスができそうなくらいの距離で説得されて気持ちが揺れる。大司教からはふわっと花の香りがして、その濃厚な香りに頭がクラクラとした。
「シオンさん。どうか……どうか、お願いします……っ」
イケメンが、私の好みのイケメンが、私に一生に一度のお願いをしてる……!
「わ、私……聖女やります!」
「「「えぇぇぇぇぇーーーー!?」」」
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