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第八話 不敬
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「シオン殿ーーーー!!」
私の叫びに呼応するように大臣が叫ぶ。
不敬だろうがなんだろうが、嫌なものは嫌だ。無理なものは無理なんだからしょうがないっ!!
「なぜだ。なぜダメなのか!? キミは男好きじゃないのか!? こんな、誰もが羨むほどのイケメンな息子と一緒に旅ができるのだぞ!?」
「陛下! 言い方!! もう少し婉曲に……!」
「いや、王子は確かにイケメンですけど。好みじゃないんで」
「シオン殿ーーーー!!!」
大臣が叫びまくっている。
ツッコミすぎてゼェゼェハァハァと身体で息しているくらい大臣は全力で叫んでいた。
「我が息子がタイプじゃない……だと……!?」
「陛下! ショック受けるのそこではありませぬ! いや、確かにそこもショックではあると思いますが!」
「いや、誰が見ても納得のイケメンだとは思いますけど、あくまで目の保養的な立ち位置で、好きになれるタイプかと聞かれたら……うーん……?」
「キミは随分と上から目線だなぁ! というか、キミが話してる相手は陛下! 目の前にいるのキミが住んでる国の王様だからね!? それと勝手にタイプじゃないとか言ってるけど、相手王子だからね!」
大臣のツッコミがだんだん雑になってきている。
「ということで無理です」
「そんな……! あぁ、なんということだ。であれば、仕方ない。キャリーには再び聖女として……」
「いや、さすがにそれは可哀想なので引退させてください」
「だったらキミが!」
「それも無理です」
さすがに八十のおばあちゃんには引退してもらいたいとは思うが、いくら王様の頼みと言えども無理なものは無理である。
もし国を追放されるというのならそれはそれで甘んじて受けるしかない。
白夜光には思い入れも強く、ギルドメンバーには申し訳ないが、ここだけは譲れない。
「そもそもなぜ無理なのだ。理由は? どうしたらキミは我が国の聖女になってくれるのだ?」
「私は結婚がしたいんです!」
「「「…………は?」」」
国王と王子、大臣がみんな口をあんぐりとさせていた。まさか、そんな理由で? といった様子だ。
「私にとっては由々しき問題なんです! 私は結婚して家族が欲しいんです!! だから、聖女にはなれません!!!!」
私が思いの丈を叫ぶと、シンと静まり返る謁見の間。その沈黙を破ったのは国王だった。
「であれば、特別に……ヴィルとの結婚を許可しよう!」
「ちょ、父さん!?」
「陛下!?」
「本来聖女は国との結びつきの関係上、誰とも結婚できない習わしであるが、王家の者であれば問題ないはずだ。それでどうだろうか?」
「えーっと、それはちょっと……私にも選ぶ権利があるというか……」
「シオン殿ーー! 今それ言いますか!? それと王子の気持ちも考えてあげてくだされ!!」
今更本音を隠したところでしょうがないと素直に気持ちを吐露すれば、大臣が真っ青な顔で叫ぶ。
そして同時に遠くで微かに「オレ、何もしてないのに勝手にフラれたことになってるんだが」とショックを受ける王子の声も聞こえてきた。
「ならば、どうすればいいのだ……! 我が国の今後のためにも聖女が必要だというのに!」
「それを私に言われましても……」
「仕方あるまい。今すぐ大司教を呼んでくれ! 彼に代案を出させよう! もしくは彼女の説得をさせよう!! 大臣!」
「承知致しました、陛下。みなの者、大司教をただちに呼んで参れ!」
「はっ!!」
大臣が指示を出すと、大司教を呼ぶために慌ただしく出て行く騎士達。それを他人事のように見つめる。
今更、大司教とか言う人に説得されてもねぇ……。無理なものは無理だし、気持ちは変わるわけがないわ。
というか、大司教ってことは、私を聖女に推挙した人物ってことよね。こうなったのも全て大司教のせいじゃない……!
大司教が来たらすぐにでも文句言って、私以外の代わりを誰か見繕ってもらおう。どうせ大袈裟に言って都合良く私を聖女に仕立てあげようとしてるだけだろうし。
まだ見ぬ大司教に怒りを抱きつつ、どうにかこの状況を脱するにはどうすればいいかと考えていると、背後からバタバタと慌ただしい音が聞こえる。
私の叫びに呼応するように大臣が叫ぶ。
不敬だろうがなんだろうが、嫌なものは嫌だ。無理なものは無理なんだからしょうがないっ!!
「なぜだ。なぜダメなのか!? キミは男好きじゃないのか!? こんな、誰もが羨むほどのイケメンな息子と一緒に旅ができるのだぞ!?」
「陛下! 言い方!! もう少し婉曲に……!」
「いや、王子は確かにイケメンですけど。好みじゃないんで」
「シオン殿ーーーー!!!」
大臣が叫びまくっている。
ツッコミすぎてゼェゼェハァハァと身体で息しているくらい大臣は全力で叫んでいた。
「我が息子がタイプじゃない……だと……!?」
「陛下! ショック受けるのそこではありませぬ! いや、確かにそこもショックではあると思いますが!」
「いや、誰が見ても納得のイケメンだとは思いますけど、あくまで目の保養的な立ち位置で、好きになれるタイプかと聞かれたら……うーん……?」
「キミは随分と上から目線だなぁ! というか、キミが話してる相手は陛下! 目の前にいるのキミが住んでる国の王様だからね!? それと勝手にタイプじゃないとか言ってるけど、相手王子だからね!」
大臣のツッコミがだんだん雑になってきている。
「ということで無理です」
「そんな……! あぁ、なんということだ。であれば、仕方ない。キャリーには再び聖女として……」
「いや、さすがにそれは可哀想なので引退させてください」
「だったらキミが!」
「それも無理です」
さすがに八十のおばあちゃんには引退してもらいたいとは思うが、いくら王様の頼みと言えども無理なものは無理である。
もし国を追放されるというのならそれはそれで甘んじて受けるしかない。
白夜光には思い入れも強く、ギルドメンバーには申し訳ないが、ここだけは譲れない。
「そもそもなぜ無理なのだ。理由は? どうしたらキミは我が国の聖女になってくれるのだ?」
「私は結婚がしたいんです!」
「「「…………は?」」」
国王と王子、大臣がみんな口をあんぐりとさせていた。まさか、そんな理由で? といった様子だ。
「私にとっては由々しき問題なんです! 私は結婚して家族が欲しいんです!! だから、聖女にはなれません!!!!」
私が思いの丈を叫ぶと、シンと静まり返る謁見の間。その沈黙を破ったのは国王だった。
「であれば、特別に……ヴィルとの結婚を許可しよう!」
「ちょ、父さん!?」
「陛下!?」
「本来聖女は国との結びつきの関係上、誰とも結婚できない習わしであるが、王家の者であれば問題ないはずだ。それでどうだろうか?」
「えーっと、それはちょっと……私にも選ぶ権利があるというか……」
「シオン殿ーー! 今それ言いますか!? それと王子の気持ちも考えてあげてくだされ!!」
今更本音を隠したところでしょうがないと素直に気持ちを吐露すれば、大臣が真っ青な顔で叫ぶ。
そして同時に遠くで微かに「オレ、何もしてないのに勝手にフラれたことになってるんだが」とショックを受ける王子の声も聞こえてきた。
「ならば、どうすればいいのだ……! 我が国の今後のためにも聖女が必要だというのに!」
「それを私に言われましても……」
「仕方あるまい。今すぐ大司教を呼んでくれ! 彼に代案を出させよう! もしくは彼女の説得をさせよう!! 大臣!」
「承知致しました、陛下。みなの者、大司教をただちに呼んで参れ!」
「はっ!!」
大臣が指示を出すと、大司教を呼ぶために慌ただしく出て行く騎士達。それを他人事のように見つめる。
今更、大司教とか言う人に説得されてもねぇ……。無理なものは無理だし、気持ちは変わるわけがないわ。
というか、大司教ってことは、私を聖女に推挙した人物ってことよね。こうなったのも全て大司教のせいじゃない……!
大司教が来たらすぐにでも文句言って、私以外の代わりを誰か見繕ってもらおう。どうせ大袈裟に言って都合良く私を聖女に仕立てあげようとしてるだけだろうし。
まだ見ぬ大司教に怒りを抱きつつ、どうにかこの状況を脱するにはどうすればいいかと考えていると、背後からバタバタと慌ただしい音が聞こえる。
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