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取引条件

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 僕たちが連行されるようにして広大な魔王都を素通りし、邪神神殿に着いたのはその日の夜であった。

 神殿の入り口を入って暫く進むと異様に広大な闘技場のよう所に案内され、そこで少し待つように言われた。

「ようこそ我らが邪神様の聖室へ、勇者一行諸君」

 突然上の方から嫌らしい話し方のデカい声が響いてくる。転声魔法の一種だという認識はあったが、遥か上を見上げると壁際天井付近にガラス張りの監視室のようなものがありそこから響いているようだ。

「高い所からで失礼するよ、我はジーン大将である」
「僕達は取引に応じるためにやって来たんだ、ここに降りてきて話したらどうだ?」
「そうだ、取引をしよう、こちらの条件は2つある」
「2つだと!僕を騙したのか?」

 何か嫌な予感がした。

「そうではない、2つの条件に応じてくれればその女の記憶は戻してやる、身の安全も保障する、約束は必ず守る」
「本当なのだろうな?」
「くどい、我の名誉にかけて約束は必ず守る」
「判った、それで条件はなんだ?」

 ジーン大将の名誉なんてどうでも良かったが一応は信じてやる事にした。

「まず、1つ目として我々の魔人と戦い、その魔人に勝ってもらう」

 理由が良く判らなかったが、勝てば良いというのなら全力でぶちのめすだけだ。

「そして2つ目は、君が魔人に勝てたならばその時に教えよう」
「なんだそれは、おかしいだろう!?」
「問答無用だ、やれ」

 ジーンが命令を下すと広大な闘技場の端から真っ黒でデカい魔族のような奴が現れた。

「間違いない、あれは俺たちが見た魔人だ!」

 アモンが叫ぶ。

「そういう事か、なら全力でやるからアモン達は下がっていて」

 魔人がこちらに歩き寄ってくる前に僕は疾走し奴に迫る。

「疾走、武技極炎剣」

 瞬時に迫り、無詠唱で極大の炎を纏った魔法剣を振りかざす。

 ガシィ!

 魔人はそれを持っていた槍を使いて両手で受け止めた。魔人の持つ槍はそれ自体が魔法貫通を止める力があるようで僕の炎の剣を受け止めている。

「ならば、武技皆塵改!」

 ドゴゴゴゴゴ‥‥

 バシュ‥‥ドシュ!ザシュ!

 超高速の炎の大剣を受け、それでも何発かは受けきれずに刺さる。だが、その魔人はうめき声一つ上げずに苦しみもしない。以前アモンが言った薄気味が悪いほどの無機質そのものだった。

 グォオオオオ

 傷を負いながらも手に特大の暗黒の火炎を溜めてこちらに放った。

「極炎の盾」

 片手で魔法の盾を出し、魔人の暗黒の火炎玉を受ける。僕の極炎の方が勝り、黒炎玉は盾に吸収されて消える。魔人は自分の黒炎が効かないとみると槍を頭上でグルグル回し暗黒気流をだして風攻撃に入った。

「爆炎弾」

 バシュ!‥‥ドーン!

 その気流に向けて炎の爆裂魔法を叩き込み、消し飛ばしながら僕も突っ込む。

「武技極炎撃」

 ボボボボボ‥‥ドーン

 爆発の衝撃でよろけた魔人に必殺の剣技を叩き込むと今度は受けきれず急所に炸裂して粉みじんに燃えて吹っ飛んだ。


「やった‥‥」
「おめでとう、よくやったぞ、それでこそ器にふさわしい」

 ジーン大将がなぜか嬉しそうに言う。

「よし、では最後の条件だ、その箱に入れ」
「なに?」

 天井の方から透明なガラスでできた箱が下りてくる。

「なんだこれは?」
「良いから入れ、それで女の記憶は戻す」
「ダメだ!先に記憶を戻せ!」

 ジーンの隣にいた官吏が奴に耳打ちをするのが見えた。

「判った、特別に記憶を先に戻してやろう」

 ジーンが手で合図をすると、さっきの魔人のそっくりの奴が別の入り口から現れて4人が居る場所に瞬時に移動した。

「なんだと!」

 その場の全員が驚いていると、魔人はアリーの側に行き何かをした後にその場で頽れて死んだ。

「‥‥」

 訳が判らずにいると、アリーが僕の方を向き言う。

「テイちゃん‥‥思い出したわ、なぜ忘れていたのかも‥‥ごめんなさい」
「アリー!!」

 僕が叫んでアリーの所に走り出そうとしたらジーンの声が邪魔をする。

「さぁ約束だ、早く入れ」
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