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アリー

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「アモンが居るってことはもしかして」
「イジン、お前を探したんだぞ‥‥」
「おーい何してんのー」

 遠くでマサが叫んでいるのが聞こえた。

「マサか、アリーも居るんだよな?元気だよな?」
「元気だぞ、でも‥‥」
「でもなんだ?」

 僕は気持ちがはやった。万が一アリーが怪我でもしていたら耐えられない。

「逢わせるから一緒に来てくれ‥‥あれは誰だ?」

 アモンが後ろを指さしていう。振り向くとミミが歩いて来ていた。

「ミミ‥‥」
「心配だから来ちゃった」

 ミミが遠慮がちにやって来る。

「おいでミミ‥‥紹介するよ俺の連れのミミだ、魔族の女の子で」
「なに!魔族だと」
「待て、魔族でも敵とかそういう事ではない」
「そうか、何か事情がありそうだな‥‥そのお前のしっぽにも、いつ生えたんだ?」
「はは、これは店で売っていたのを着けただけだ」
「売り物か、まぁ良いその子も一緒においで」

 髭もじゃのアモンが言うとミミは頷いた。


「やぁマサ、元気だった?」
「イジン!もう、みんなで探したんだから!」
「ごめん、実は僕も探しに来たんだ」
「‥‥この子は?」
「ミミだ、宜しくな」
「フーン、随分可愛らしいのね」

 マサは僕とミミを交互に見て何か疑わしいという顔をする。

「行くぞ」

 アモンがそんなやり取りを打ち切って全員を連れ、廃城に向かった。

 廃城の奥にはわずかに残った壁の区画を利用してテントが張られ、居住空間が造られている。
 テントの幕を開いてアモンが入る。

「アリー、戻ったよ」
「おかえりー、今日のモンスターはどうだったの?後ろの方はだれ?」

 そこには別れた時と変わらないアリーが立って居た。少しやつれて生活が苦しいのが伺われる。

「アリー‥‥ごめん、僕」
「え、どなた?」
「‥‥僕だテイジンだよ」
「テイジンさん?初めましてアリアンヌです」

 アリーはお辞儀をして挨拶をした。

「はは、そういう冗談はやめてよ」
「そんな、あたし何か失礼な事言ったかしら‥‥」
「は‥‥」

 多分僕は顔が青ざめていたと思う。

「お兄ちゃん‥‥」
「すまないテイジン、これには訳があって」

 僕が茫然自失しているとミミが心配し、アモンが割って入る。

「訳って‥‥まさか本当に僕の事忘れてるの?」

 訊くまでもなかった。アリーが赤の他人を見る顔をして、首を傾げて肩を持ち上げているのだ。

「そんな‥‥マジかよ」
「お前を見たらアリーの記憶が戻ると思ったのだが」
「何があったんだ?教えてくれ」

 何かを知っている風なアモンに問いただす。すると、全員にテントの外へ手招きして、外で話すという。

「半年くらい前にここに魔人がやってきておかしな呪いを掛けて行った、特に身体的には異常は無かったのだが‥‥」

 アモンが言うには、それは異常な攻撃だったらしい。魔人は圧倒的な魔力で襲い掛かり、全員が身動きを封じられてもうダメだと覚悟したあと、アリーの所に行き何か呪いを掛けて消えたという。

「その後、アリーがお前の事を一切口にしなくなったからおかしいと思って訊いてみたら、お前の記憶だけがすっぽりなくなっていた」
「‥‥何目的でそんな酷い事を‥‥」
「判らん、だがこんな書置きを見つけた」

 それはテントに魔法で文字が刻まれているようだった。

 ”取引がある、リアには話さずに邪神神殿に来い”

 それは僕にだけわかるように残された言葉だった。察するにリアと敵対する勢力のいずれかがこれを仕組んだのだ。アリーの記憶を戻す事と何かを取引きしたいという事に違いない。

 それが何かはどうでも良かった。アリーさえ元に戻るのなら‥‥。

「そういう事か」
「これが何か判るか?」
「ああ、これは僕の戦いみたいだ」
「どうするというのだ?」
「邪神神殿に乗り込み、そこで決着をつける」

 その言葉に皆が息をのんだ。
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