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ラバン
しおりを挟む一歩踏み出すとそこはダークレイヤー。
邪神が支配する世界だった。
後ろを振り向くと丁度ゲートが閉じて向こうが見えなくなる瞬間、一瞬だけ向こうの光が見えた。
そしてこの世界をあらためて見回すと空には黒い太陽が輝いていて、モンスターが平然と徘徊している世界だ。闇太陽は輝いている癖に眩しくなく、寧ろ目には優しい。僕の居た表の世界の月に似ていたがそれとも違っていた。
担いできたダークエルフを地面に降ろし約束通り、拘束をといて自由にしてやり気絶したまま放置する。
「暗黒界といっても表とあまり変わらないような気がするな‥‥」
変わっているのはモンスターが普通に徘徊しているところだったり、特に誰かを襲っているわけでもない様子だったりする感じだ。この世界にも平和は存在しているのだ、という事を理解するのに少し時間が掛かった。
「さてと」
僕は表のエルフの森が描かれてたマップをスキルで消してから、再度この世界のマップを描き始めた。
「ふ~ん」
そこには王都が存在し、町や村まである。非常に人族の世界に似ていて気持ち悪いものを感じた。早速、そのマップ上でここから一番近い街に潜入することにして移動する。移動中も潜伏のスキルを使っているとモンスターは一切僕に気が付かない様子で僕のスキルがここでも十分に通用することが解った。
ただ、知能が高い相手には見つかってしまうようで、堂々と町のゲートの正面から入るわけにはいかないようだ。遠目で僕を見つけた門番が慌てて武装をして飛び出してくるのが見えたので「隠密」を使って消える。
「あれ~~おかしいな、このあたりに見慣れない奴がいたんだがなぁ‥‥」
「見間違いじゃねーのか?」
門番たちがそんな事を言っている側を通り抜ける。
「人族そっくりだな」
「え?お前何か言ったか?」
「いや」
僕が独りごとを言うと、二人で不振がっている。
彼らはそばでみるとダークエルフでもなく人族に似ている。だが振り向いて気が付いたが、奴らには尻尾が生えていた。初めは腰道具の類かと思ったら、小さい尻尾がズボンからはみだしているのが見える。
「獣人って奴なのかな?」
今度の独り言は彼らにはもう聞こえず、僕は無人になった門をくぐって町に入った。
マップによればその町はラバンというらしい。王都から少し離れた位置にあって交通の便は良さそうだ。町の中には大通りがいくつも通っていて、そのまま街道に接続している。町を歩くと本当に僕のいた世界とそっくりで違和感が殆どなかった。尻尾を除くと。
それで早速町の道具屋に入って何か使えるものはないかと探っていると装飾用の付け尻尾が売っている。そいつを一つ失敬して自分の尻付近に引っ掛けて装着すると簡単いついた。
僕はこれでいつでも隠密をといてどこにでも行けるというわけだ。
「現!」
シュン‥‥
「ん?あれ、客か‥‥」
突然現れた僕を見つけた店主はカウンターで作業する手を止めて僕の方をみた。
「こんちは」
「おう、なにか買うのか?」
「こいつは使えるかな?」
僕は手持ちの金貨一枚を取り出して見せる。
「こいつは‥‥変わってるな、初めて見る種類の金貨だがどこの国のだね?」
「遠い外国から持って来たんだが」
「そうかい、ちょっと待ってな」
そういうと店主は天秤を持ち出してカウンターに置いた。それで重さを計量する。
「えーと、お前さんのそれは5ドラク金貨と交換できるが、どうする?」
「ならそれでいいよ」
「何か買っていってくれよ」
「そうだな、それじゃ紙はあるか?」
僕は紙を手に入れて道具屋をでる。
「なんだ簡単じゃないか」
拍子抜けして肩の力が抜けてしまった。暗黒の世界っていうからもっとヤバい感じなのかと思ったのに、人族の世界とそう変わらない‥‥。
「なんだお前は!」
町を歩いていたら、そんな声が聞こえるあたりもそっくりなのだ。振り返ると後ろで突発的に暴力沙汰が始まろうとしていた。
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