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超能力
しおりを挟むカチャの話は何とも不思議でうまく飲み込めないものだった。彼女がみかんジュースを飲んで少し落ち着いてから訊く。
「まず、なぜ僕が天人だという事になるのか、そこから教えて欲しい」
「目を見れば判ります」
カチャが綺麗な薄紫色の神秘的な瞳で僕の目を直視して答える。
「‥‥アリーは判る?」
アリーは可愛らしくチョコンと肩をすくませて判らないと答えた。
「アモンは?」
「ははは」
眉毛を上下させ首を横に振り判らないと答える。
その場に居た人は誰一人判る者は居なかった、カチャ以外では。
「それで、目をみたらどう判るの?」
「目の奥が光り輝いているもの」
「それはそれは‥‥」
僕には自分の顔を鏡で見る習慣がない。おでこの文様を見たくないのでついつい鏡を見るのを無意識に避けていたのだ。
「はい」
僕が考え事をしているとカチャはポシェットから小さい鏡を取り出して僕に向けた。
「え!‥‥ん、おや?」
そこには見慣れない顔があった。眉毛が濃くてキリっとしていて、目の色が黒ではなく青い。おかしいなと思いじっと見て居ると眼の奥が仄かに光って見えた気がした。
「はぁ‥‥色々と変だけどきっとアレだ」
僕は少なからずショックを受けていた。こんな顔だったっけ?5年ぶりくらいに鏡をみたというのもあるが何か自分の顔が違って見えるのだ。もしかして鏡自体に問題があるのでは?とすら感じる。
「‥‥気のせいだな‥‥」
「え~~!」
カチャは不満そうに言う。
「‥‥それで、仮に天人というのが居たとして世界を救うというのはどういう事なの?」
「天人様は人類を超えた力をお持ちなのです」
「それは例えば伝説の勇者みたいな?」
「それ以上の存在なのです」
「そぅ‥‥?」
それ以上というのがピンとこなかった。そもそも最大の物差しは伝説の勇者なのだ。それ以上という概念は僕の中には存在しないのだ。
「ふ~~~~~ん‥‥」
僕は久しぶりに腕組みをしてしまった。この町にきて初めてやるような記憶がある。それまで大して悩んだことが無かった事に気が付いて腕組みを解く。
「それで仮に天人が居たとして具体的には何をするべきだと思うの?」
「まず初めに、長老に会って欲しいの」
「エルフ族の長ですか」
話に訊いたところではエルフ族というのは長寿らしい、年齢も100歳単位でしか数えないという。流石にそれは単なる都市伝説なのだろうと思っていたが。
「カチャは僕が長老に会えば満足してくれるのかい?」
「はい!」
初めて嬉しそうにして答えた。そんなにそれが大ごとなのだろうか?単なる勘違いなのに‥‥。
「是非、行ってあげて下さい」
アリーが僕に頼んでいた。おかしいな、そこまで?と疑問に思いながら周囲を眺めると、みな口々に「行った方が良い」「行くべきだよ」と言い出していた。いや、皆の口が動いていないので僕の頭に響いていたのだと気が付いた。
「なんだこれ‥‥」
「聞こえました?よね」
「ああ」
「私がやりました」
「それは、なんとも‥‥」
周りは2人のやり取りを茫然と眺めていたが、一番茫然としていたのは僕だった。
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