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再起動

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 バジリスクの死骸の上で茫然としていると、少し遠くにアリーが一人立っているのが見えた。

「なにをしているんだ?おーい!あっはっは」

 気分がおかしくなっている僕はそのままアリーに手を振る。するとアリーがこちらに早歩きやってきた。

 ドシュ! 

 が、そのとき死んだはずのギガバジリスクの口から鋭利な舌が伸びてアリーに突き刺さるのが見えた。

「は?!待て待て‥‥武技、皆塵!」

 ドォオオン!

 それでバジリスクの頭ごと消し飛んで今度こそ死んだ。慌ててアリーに近寄ると、白目を剥いて口から血を吐いて瀕死状態だ。僕は急いで超高級万能薬をとりだして毒とマヒ、石化と混乱を食らっているアリーに飲ませる。猛烈に咳き込み、口から薬がこぼれていくのを見るのが辛かった。

「大丈夫だ!大丈夫だから!」
「ごふっ!はぁ‥‥ふぅ‥‥」
「大丈夫だよね‥‥おい!返事をしてくれ!」

 僕はおもわず涙目でアリーの顔を抱きしめていた。

「アリー!死なないでよ!」 
「く、ぐるじい」
「苦しいよね‥‥え?」
「痛いよ」
「わぁごめん‥‥」

 あまりにもギュウギュウと抱きしめていたので痛いという。

「でも、良かった‥‥」
「‥‥一人で行っちゃうなんて良くないよ」
「けど、死ぬなら僕一人で良いと思うし」
「なんでそんなことを言うの?」
「‥‥」

 そう、僕はレベル1の役立たずだからだ。

「皆貴方を頼りにしているのではなくて?」
「そんなことはないよ、僕なんていなくても変わらないと思うし」
「嘘!」
「‥‥嘘なんかじゃないよ、所詮レベル1なんだ‥‥」
「嘘よ」
「今はもうレベル1ですらない」
「そうじゃないでしょ?」
「え?どういう事?」

 アリーと目があうといきなり抱き着かれキスをされてしまう。

「ん‥‥」

 少し長いキスの後にアリーが言う。

「ごめんなさい」
「ええ‥‥」
「でもこうしないと判って貰えないと思ったの」
「そんな‥‥ふぅ‥‥でもありがとう」

 と言って今度は僕からキスをしようとすると。手で遮られた。

「調子に乗らないで」
「は、はい‥‥ごめんなさい」

「おーい!いつまでやってんだぁ!」
「見せつけてくれるぜ‥‥」
「いぇーい、やっちゃえやっちゃえ!」

 後からやってきたアモンたちが少し離れたところで叫んでいた。マサの「やっちゃえ」と言う意味が良くわからなかったが、それで終わった。



「でもよぉ、あんたひとりであの化け物を倒すなんてちょっとおかしくねーかー?」

 帰りの馬車の中でマッシュが言う。

「あいつはSランク限定のクエスト対象だろう?」
「ぐ、偶然だよ偶然」
「ほらまた!そんな事を言う」

 僕が偶然だと主張するとアリーが無理やり訂正させようとする。でも偶然に決まっていたのだ。

「偶然剣技が決まって、偶然予定通りうまく運んで、偶然アリーがやってきてそれで」
「私は偶然じゃないわよ」
「あ、そうかごめん」

 でも、その一つでもうまく行かなかったら勝てなかったのも事実だった。

「最後のは僕の詰めが甘かったせいでアリーが‥‥」
「それはもう良いのよ」

 アリーが優しく言う。

「それで、お二人さんはもういい関係なのかい?」

 アモンが揶揄うように言う。

「良い関係‥‥?」
「どう思うの?」

 僕が言うとアリーに訊かれる。これではあべこべではないか。

 アリーが僕にキスをしたのは好きとかそういう事ではなくて、僕に思い直してほしいという事を体当たりで示しただけなのだ。僕はそう納得した。アリーは優しい子なのだと再認識したのだった。

「違うだろうね」
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