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さよならは言わずに〜決戦の地へ

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我々の魔法学院の授業はまだまだ終わらない、それは今回の作戦は絶対に失敗できない種類のものだと直感で理解していたからだ。それと地方にある奴らの支部を壊滅させた所で無駄なのも分かっていた。彼らには底なしの資金力という奴があるらしいのだ。


 前回、軍事拠点の本部を壊滅させた事によって大きく弱体化した事を考えたら、やはり今回も敵の本拠地を一撃で粉砕するほかに選択肢はないように思えた。


 その為にあらゆる魔法を研鑽して、限界まで磨き上げて置く必要があったのだが。セフィナの指導のもと、特訓を初めて早1月が経つ頃俺は新しい境地に達していた。それは限界突破という奴だった。


 魔法の矢に様々な能力を付加して飛ばせるのは既にできていたが、ついにデコンポジションまで出来るようになった。これで、どこに石板・ダストボックスが存在しても正確に遠方から破壊できる。


 それと、魔法がそれぞれ超強化されたのが判った。


全土感知は、以前よりも遥かに遠くまで瞬時に分かるようになったし、スキンシールやアースウォールは以前よりもより強化されて居た、フリートによる浮遊も自分だけでなく認識した物体を自由にコントロールできるようになった。つまり、風魔法の飛行に似た能力で上位互換と言うべき力だ。


 ストッピは念願だった停止時間中に他の魔法を扱えるようになっていたし、デコンポジションも巨大なものまでまとめて分子分解できるようになった。メテオはあまりにも目立つので試すわけには行かなかったが、それでも感触で相当に威力があがっているのを感じた。


 ミューも新しい力を手に入れていた。


 サーチエレメンタル、グレートトルネード、風浄化魔法、遠隔盗聴透視、暗示魔法、風緊縛魔法が俺同様にそれぞれが強化して進化していた。


 「2人とも凄いわ‥‥‥もう卒業でいいでしょう」


 と最後にはセフィナから卒業を言い渡されてしまった。







 3人は岬に作った楽園でスローライフを送りながらも一応は本部襲撃の綿密な作戦も立てていた。マップを広げてどこにゲートで出るか‥‥‥から始まり‥‥‥撤退、撤収のルートの確認までを確認していた。


 そして、その夜、俺たちは夜襲を掛けた。夜の方が彼らの警備要員が少ないというのもあるが、アルダイルが寝ぼけている所に攻撃を仕掛けた方が精神的にも効果的だろうと思われたからだ。


 まず王宮の裏山の大樹にゲートで転移して即全域調査をミューと2人で行う。2人の超強化されたコンビ魔法によって周囲のほぼ全てのトラップの類まで検出されていた。


 俺たちは自分の庭を歩くようにして、全く危うげなく全てのトラップを事前に遠隔魔法弓攻撃で除去して進んで行った。相手からしたら反則とも思える超技能、超魔法の連続である。


 王宮の裏口に設置されているトラップ5個をあらかじめ遠隔からデコンポジション矢で無音で破壊する、厳重なトラップが仕掛けられていた扉を簡単に開錠して中に進む。内部にあるトラップ類も全て把握しているし、巡回している警備要員の配置すら全部分かっている。俺達を止めるモノはもう何もないのだ。


 通路に仕掛けられて居る全てのトラップを楽々と弓とデコンポジションで破壊して進み、中央制御室に入る。扉を開けると当時にストップを発動させて署員を全員眠らせる。その一人を起こしてミューの暗示魔法で仕事をしてもらう。


 まず王宮にしかけられているトラップ類を全部解除、そのあとに警戒要員に連絡して偽の緊急点検を行わせてアルダイルの居る帝王の寝室まで完全に武装解除をさせた。


 「よし、そのまま緊急の訓練を朝までさせろ、いいな」

 「はい‥‥‥」







 アルダイルの寝室はシン‥‥‥と静まりかえっていた。巨大で豪奢な天蓋のついたベッドが広大な寝室の中に据えられており、アルはそこで眠っているようだった。


 遠隔からミューが緊縛魔法弓を放ちアルを眠ったまま捕縛した。


 「‥‥‥う、うぉおおおおおお」


 という、聞き覚えのあるあるのうめき声が聞こえた。側まで近寄りベッドを覗き込む。


 「やぁ、久しぶりだな」

 「なん‥‥‥だと、お前は!」


 アルダイルは既に中年になっていた。あれから20年経ったのだ。


 「今更何をしにきたのだ!」

 「それはおかしいだろう、お前らが侵略したこの国を取り戻しに来たのだから」


 「‥‥‥20年、20年経つのだぞ!?それがどういう意味か分かっているだろう?」

 「知らんな、何年経ってもここは俺の故郷だ」


 「‥‥‥クックック、故郷だと?お前の故郷はもうここにはない」

 「何をいっている‥‥‥」


 「気が付かなかったのか?この国の住人は全て我々の世界から連れて来た者達とここの住人の子孫なのだ」

 「卑劣な事を!」


 「全てが手遅れなのだよ、分かったら諦めてこれを解け」

 「‥‥‥いや、まだ手遅れではないはずだ」


 「ミュー暗示を頼む」


 ミューが暗示魔法を掛けるとアルは簡単に落ちた。


 「この王宮に転移装置があるだろう?」

 「勿論だ‥‥‥」


 「それで俺達を過去に送り込むことが出来るはずだ」

 「簡単な事だ‥‥‥」


 「20年前だ、出来るな?」

 「造作もない」


 「良し、俺達をそこに連れていき、転移させろ」 

 「良いとも」







 転移装置の前まで行くと、署員は1人も居なかったがアルが装置を一人で全て操作してセットし、ゲートが開いた。


 グルングルンと回転する黒いゲートの前で俺とミューはエフィナと別れの挨拶を交わした。


 「ここまでこれたのは貴方のおかげだ、先生」

 「エフィナ‥‥‥」


 俺たちはエフィナと抱擁して別れを惜しんだ。


 「もう、貴方たちは最強の戦士よ、何があっても絶対に大丈夫と信じているわ‥‥‥それともし助けが必要だったら又エルフの国へきてね」


 そういうと、エフィナは自分の嵌めていた指輪を外してミューに手渡した。


 「それは貴方のお母さんのものなの、国を出ていく時に私にくれたのだけど、それを持って行ってほしい」


 そういうと、エフィナはエルフ国に続くゲートを作り「また会いましょう」と一言笑顔で言い、入って行った。


 そのエフィナのゲートがシュンと閉じた後に、俺達は20年前に続く転移装置のゲートに手を繋いで入った。

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