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ハーフエルフ

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「貴方たち面白いわね」


 と少し砕けて親しい調子に変わりつつも威厳に満ちた声音で女王は続けた。


 「初めまして。私は、元精霊守護騎士のアキと申します」 

 「ふふ、これはどういう事なのかしらね?ラムさん、この方はハーフドワーフよね?」


 「‥‥‥!」

 「ドワーフではないと思います‥‥‥」 


 「ドワーフとは‥‥‥私の事ですか?」

 「あら、貴方知らなかったのね、貴方からはドワーフ王の臭いがするわ。それで、ハーフエルフとハーフドワーフの2人がここになんのようかしら」


 「‥‥‥ハーフエルフ?」

 「アキ‥‥‥後で話すわ」


 その後は、頭がパンクしてしまった俺の代わりにラムが事のあらましを説明してくれた。この世界が異国、異世界からの侵略を受けている事。その暴虐な行いに2人で立ち向かっているという事、そして少し力が足りない事など。


 「人の世界に干渉してほしいと?」

 「はい」


 「だが、アキの力は既に国を動かすほどのものであろう?」

 「私がですか‥‥‥?」


 「アキの指には3つの土の精霊の魂があるではないか」

 「これは‥‥‥はい確かに」


 「そんな者は今まで見た事もないわ。そうね‥‥‥けれど更なる力を欲するという事ならこれをラムに貸しましょう」


 と言って、女王は自分の指から指輪を外してラムに手渡す。


 「それは生命の指輪よ、後で返してくれれば良いわ」

 「女王様、そこまでするのですか?」 


 「セフィヌの娘なら、少しは力になってあげなくてはね」

 「‥‥‥それはエルフ国の国宝の指輪であるから、無くさないようにそして必ず返すように」


 とその男のエルフが俺とラム言った。そして王女の隣に居た女のエルフが女王に願い出た。


 「私も2人に同行してよろしいでしょうか?」

 「貴方は、セフィヌの妹ですものね、良いわ」 

 「ありがとうございます、女王」


 フゥ‥‥‥と女王が1つため息をついてから、言う。


 「この子はね、ラムの母セフィヌの妹のセフィナよ、貴方たちと共に行き力を貸すわ」


 とその美しいエルフ、ラムの叔母の女性を紹介してくれた。


 「ありがとうございます」


 俺はポカんとしながら、ラムと共に礼をいった。


 「さぁ、お行きなさい‥‥‥貴方たちの地へ送り届けてあげましょう」


 王女がそういうとそばにあった魔法のステッキを手に取り空間に丸を何度も描く、すると俺の隣に転移空間が現れた。


 「案内するわ、ついてきて」 


 とセフィヌが言うとその転移空間の中に入る、それにラムが続き、俺は女王に会釈をしてからそこに入った。


 「あの子も姉に似て冒険が好きなのね‥‥‥」


 と背後から王女が呟くのが聞こえた。







 そこは、俺たちの国々のある大陸の東の果て、俺が初めに左遷された地のサルーク岬だった。見張り小屋には誰も居なかった、そしてその地は随分まえに放棄されたようで小屋はボロボロに朽ちている。


 だが、そこにはまだ土の精霊が居た。


 「やぁ、久しぶりだねアキ、そして風君」 


 と地の下から土の精霊がいう。それをセフィナが聞いて驚いていた。


 「久しぶり、元気にしてた~?」


 と、風の精霊が友を懐かしんでいう。土の精霊は元気な様子で、地面から人型を模して現れて俺達に笑いかける。この地にはまだ帝国の爪痕はないようだった、土の精霊気で満ちている。


 「ああ、君のおかげで何とか戻ってこれたよ‥‥‥」


 土の精霊にお礼を言い、エルフの女王の慧眼に感服した。なにも知らぬようなフリをしていて実は何もかもお見通しなのだ。


 俺は土の精霊にラムとラムの風の精霊、そしてセフィナを紹介した。


 「アキのお友達ならずっとここに住んでいてもいいよ」


 と土の精霊にしたら大歓迎の意を伝えてくれる。後にセフィナは「アキあなた凄く好かれているのね」と呆れた様子で褒めてくれた。


 「ここに拠点を作って行動しようか?」


 ラム達にそう提案すると全員一致で即決した。その岬は辺境過ぎて何もなく、つまり帝国がわざわざ定期巡回をしてくる理由すらない地なのだったのだ。暫くはここで大丈夫だと確信した。


 そして、いつものように俺とラムで楽園を建設した。それは以前ミューが大喜びしてくれた砂のドームハウスだ。それが小一時間で完成するとセフィナも目を輝かせて感動していた。


 「なになに!アキ、こんなもの初めて見たわ!」


 セフィナもこの砂ドームが気に入ってしまったようだ。元々彼女は好奇心が旺盛のようだった。そして、大型のベッドを2つ、テーブルとイスも全て周囲の木材を加工して作った。土の精霊と共同で簡単な畑を作り、作物が見る間に育つ。それらを小一時間で全て造り、初めてみたセフィナは感動していた。


 「やっぱり、アキはドワーフ王の血が入ってるのね」


 それは誉め言葉だったのだろうけど、俺には微妙な言葉に聞こえていた。







 その晩、皆で囲炉裏を囲み、魚と野菜をいつものように串に刺して炙り焼きにして食事をしている時に俺はラムに訊いた。


 「エルフの女王様が言っていた事は本当なのだろうか?」

 「ドワーフの事?」


 「それと、ラムがハーフエルフというのも‥‥‥」

 「それは私が話そうかしら」


 とセフィナが言うと「お願いします」とラムも同意した。


 セフィナの話によれば彼女の姉のセフィヌは数百年前にエルフ国を出て、人界を探索していたらしい。そしてある時、アガターヌ国の王子と出会い愛し合い産まれたのがミューなのだと。その時に母のセフィヌは亡くなったらしい。


 「それは本当だと思う」


 とラムが言う。ラムは物心ついた時から風の大精霊と遊んでいた。自分でも子供の頃には他の子供達とは違うと自覚していたようだ。しかし、国内の権力闘争が発展して行き、王子が即位する際に人の正妻を娶るべきだという話になったらしい‥‥‥その後、ラムは王家の分家の貴族に引き取られて暮らしていたのだが、再度王家の権力闘争に巻き込まれたという。


 「アキ‥‥‥」


 と俺の風の精霊が心配そうに言う。その先は訊くなと言う事だろうことは判っていた。


 「ああ、判っている‥‥‥2人ともありがとう、それと俺がドワーフというのは?」

 「それはね、女王の直感なので私にも分からないわ、ただアキの資質を見る限りはドワーフ王の血縁かもしれないわね」


 とセフィナが言う。


 「俺は物心ついた時には既に孤児院で育っていたのだ」


 と自分の古い記憶を手繰りながら2人に語った。子供の頃俺が育った孤児院は主に戦災孤児や親を病気で亡くした子供たちが多い。孤児達は大抵の場合、本人すら自分の出自を知らないのだ。


 そして、俺もラムと同じように子供の頃から他の子達とは違うと感じていた。時々、土の精霊と会話して希少な鉱物を掘り当てて、それを売却して孤児院の運営費にしていた。10歳になる前にはその才能が認められて王国の精霊騎士見習いとして王宮に入る事になったのだ。


 結論としては、自分の出自は分からないという事になった。俺はそれでよかったのだ、自分には今があるだけなのだから。

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