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精霊の守りの力
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それからしばらくスローライフを楽しんでいたのだが、また突然あの魔女っ娘ミューが1人で箒に乗ってやって来た。それはやはり面倒ごとの予感しかしなかったが……。
「こんにちは、アキ様」
「やぁまた来たね、ゆっくりして行ってくれ」
俺はその美少女魔法使いを家の中に招き入れ、彼女に入れたての紅茶を勧めた。最近の俺は海に潜ったついでに土魔法を使って海底に眠っている貴重な鉱物を採取して町で売り生計の足しにしている。そして貴族しか飲めないという紅茶という飲み物を飲めるようにまでなって居たのだ。左手の人差し指と親指に貰った土の精霊の加護は俺の人生を色々と助けてくれていた。
「あ、ありがとうございます」
俺の住むボロい木造の家は、外見こそボロなのだがインテリアにはタップリと金が掛かっていて、快適そのものだ。室内から外を望むとまさ高級リゾートである。
彼女は俺の勧めるままに、藤の木で出来た高級チェア(俺の手作り)に腰を掛けて高級紅茶を飲む。
「それで、元気にやってるかい?」
「は、はい……」
彼女は暫くしてから話を切り出す。
「あの、実は重要なお話が有ってきたのです」
この子が来るときは重要な話がある場合に限るようだ。俺は疑っていた……俺が絶対に断れないように重要な話の時には彼女を派遣する……大魔法使い殿がそうしているのではないのかと。
「そうだろうとも」
「えと、今戦争が起ころうとしています」
「王様達は戦争が好きだね」
「……マルター王国が大軍勢でアガターヌ国へ進軍しているようです」
「また、マルター王国か……ん?この間王都が疲弊してたのにか」
「それでアガターヌ国へ宣戦布告がなされました」
「懲りない連中だな、つい半年前にも敗北したばかりじゃないか、それで兵隊が足りないはずだが……」
「理由はいくつか考えられる、とアガターヌ王が言っておられました」
「ふ~ん、例えば?」
「その一つとして、土の大精霊を守護出来る騎士を探すためだろうと言っていました」
「つまり……」
「はい、また国に戻ってくれませんか?というお話です」
「俺以外にも務まる守護騎士は居るはずなんだけどね……」
「でもあの時お会いした大精霊様は貴方をとても慕っていましたよ……」
あ、そういう事なのか。あの大精霊が俺以外と話す事を拒否していると。この魔女っ娘は案外見た目に寄らず本質を見抜く直感が優れている娘なんだなと思った。王国にもう少しこういう事が判る人が居ればこんな事にはならなかったのかもしれない。
「だけど、俺はもうこの楽園を捨てるつもりはないのだよね」
「……そうですか」
「王国に戻らないでも、彼らの侵略を止めればいいのだろう?」
「そんなことが出来るのですか?」
彼女は信じられないという風に言う。
「絶対にとは約束は出来ないけれど不可能ではないと思う」
「凄い……」
「でも、1つだけ頼みがある」
「何でしょう?」
「あの揺り籠で戦場に飛んで欲しい」
「……」
彼女の可愛らしい顔が微妙にひきつった。元々この子は戦場で戦うタイプの魔法使いではないと言う事なのだろう。
「それが無理なら、あの揺り籠を貸して貰いたい」
「……あの私、やります!」
彼女は強い決意をもって言い放った。
「……本当にいいのかい?」
「はい!それにどうやって戦争を止めるのか見てみたいし」
その可愛らしい顔の目に決意とともに好奇心が躍るのがみてとれた。なんと可愛らしい娘なのだろう……。
「なら決まりだな、今は出かけているけど俺の友達の風の精霊も連れて行くけど良いかい?」
「ええ!勿論です」
それで翌日俺たちは戦場になる陣地へ飛んだ。
・
・
・
アガターヌ国の陣営はまだまだ全然陣形をつくれてなく、今は山道を進軍中というのが揺り籠から見て取れた。戦場となるのはこの山を抜けた先にある平野なのだ。いつも大抵はここで決着をつける事になるが、ここ数十年はずっと引き分けである。
揺り籠で山を越えると直ぐに戦場の真上に出た。そこではもうマルター王国の軍勢が陣形を整えており、戦闘開始を待っている状況であった。上空から詳細に観察すると今回は大型の土魔法兵器を多数持ち出してやる気満々である。俺が預けてきた大精霊の好物のおかげで力が溢れているのだろうか……?だが、逆にその魔法兵器に頼った戦略だと言う事がよくわかった。兵隊の数は圧倒的にマルター王国の方が少なくて不利な分を魔法兵器の火力で殲滅しようと言う事なのだ。
「やはりな……」
俺が独り言を言うと、ミューが訊いてい来る。
「どういう事なのですか?」
「あそこに並んでいる巨大な魔法投擲具の類は全部土魔法で動いているのだよ、魔法具にはめ込まれているクリスタルからそれを感じる」
「この距離で判るんですか……」
「ああ、この左手でよくわかる」
そういって俺の左手にある土の精霊の加護を見せる。
「そして、彼らの切り札はそれだけしかないと言うのも判る、だからこうしてそれを止めてしまえば良い」
と言って、左手を彼らの方に掲げて土魔法を唱える。
「サクション!」
その瞬間遥か遠方にある、魔法兵器のクリスタルから土魔法が抜けて俺の左手に集まってくるのが見えた。それは土の光のエネルギーそのもので俺の体はみるみる土の巨大なエナジーに満たされていく。そして、右手に持って居るエナジーキューブにそれをどんどん送り込む。
ものの数十秒でそれは終わってしまった。これで彼らの魔法兵器はガラクタになったので戦争は不可能なはずだ。
俺はあらかじめ用意しておいた通告書を風の精霊に手伝ってもらい、戦場の作戦本部に送り付けた。
「こんにちは、アキ様」
「やぁまた来たね、ゆっくりして行ってくれ」
俺はその美少女魔法使いを家の中に招き入れ、彼女に入れたての紅茶を勧めた。最近の俺は海に潜ったついでに土魔法を使って海底に眠っている貴重な鉱物を採取して町で売り生計の足しにしている。そして貴族しか飲めないという紅茶という飲み物を飲めるようにまでなって居たのだ。左手の人差し指と親指に貰った土の精霊の加護は俺の人生を色々と助けてくれていた。
「あ、ありがとうございます」
俺の住むボロい木造の家は、外見こそボロなのだがインテリアにはタップリと金が掛かっていて、快適そのものだ。室内から外を望むとまさ高級リゾートである。
彼女は俺の勧めるままに、藤の木で出来た高級チェア(俺の手作り)に腰を掛けて高級紅茶を飲む。
「それで、元気にやってるかい?」
「は、はい……」
彼女は暫くしてから話を切り出す。
「あの、実は重要なお話が有ってきたのです」
この子が来るときは重要な話がある場合に限るようだ。俺は疑っていた……俺が絶対に断れないように重要な話の時には彼女を派遣する……大魔法使い殿がそうしているのではないのかと。
「そうだろうとも」
「えと、今戦争が起ころうとしています」
「王様達は戦争が好きだね」
「……マルター王国が大軍勢でアガターヌ国へ進軍しているようです」
「また、マルター王国か……ん?この間王都が疲弊してたのにか」
「それでアガターヌ国へ宣戦布告がなされました」
「懲りない連中だな、つい半年前にも敗北したばかりじゃないか、それで兵隊が足りないはずだが……」
「理由はいくつか考えられる、とアガターヌ王が言っておられました」
「ふ~ん、例えば?」
「その一つとして、土の大精霊を守護出来る騎士を探すためだろうと言っていました」
「つまり……」
「はい、また国に戻ってくれませんか?というお話です」
「俺以外にも務まる守護騎士は居るはずなんだけどね……」
「でもあの時お会いした大精霊様は貴方をとても慕っていましたよ……」
あ、そういう事なのか。あの大精霊が俺以外と話す事を拒否していると。この魔女っ娘は案外見た目に寄らず本質を見抜く直感が優れている娘なんだなと思った。王国にもう少しこういう事が判る人が居ればこんな事にはならなかったのかもしれない。
「だけど、俺はもうこの楽園を捨てるつもりはないのだよね」
「……そうですか」
「王国に戻らないでも、彼らの侵略を止めればいいのだろう?」
「そんなことが出来るのですか?」
彼女は信じられないという風に言う。
「絶対にとは約束は出来ないけれど不可能ではないと思う」
「凄い……」
「でも、1つだけ頼みがある」
「何でしょう?」
「あの揺り籠で戦場に飛んで欲しい」
「……」
彼女の可愛らしい顔が微妙にひきつった。元々この子は戦場で戦うタイプの魔法使いではないと言う事なのだろう。
「それが無理なら、あの揺り籠を貸して貰いたい」
「……あの私、やります!」
彼女は強い決意をもって言い放った。
「……本当にいいのかい?」
「はい!それにどうやって戦争を止めるのか見てみたいし」
その可愛らしい顔の目に決意とともに好奇心が躍るのがみてとれた。なんと可愛らしい娘なのだろう……。
「なら決まりだな、今は出かけているけど俺の友達の風の精霊も連れて行くけど良いかい?」
「ええ!勿論です」
それで翌日俺たちは戦場になる陣地へ飛んだ。
・
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アガターヌ国の陣営はまだまだ全然陣形をつくれてなく、今は山道を進軍中というのが揺り籠から見て取れた。戦場となるのはこの山を抜けた先にある平野なのだ。いつも大抵はここで決着をつける事になるが、ここ数十年はずっと引き分けである。
揺り籠で山を越えると直ぐに戦場の真上に出た。そこではもうマルター王国の軍勢が陣形を整えており、戦闘開始を待っている状況であった。上空から詳細に観察すると今回は大型の土魔法兵器を多数持ち出してやる気満々である。俺が預けてきた大精霊の好物のおかげで力が溢れているのだろうか……?だが、逆にその魔法兵器に頼った戦略だと言う事がよくわかった。兵隊の数は圧倒的にマルター王国の方が少なくて不利な分を魔法兵器の火力で殲滅しようと言う事なのだ。
「やはりな……」
俺が独り言を言うと、ミューが訊いてい来る。
「どういう事なのですか?」
「あそこに並んでいる巨大な魔法投擲具の類は全部土魔法で動いているのだよ、魔法具にはめ込まれているクリスタルからそれを感じる」
「この距離で判るんですか……」
「ああ、この左手でよくわかる」
そういって俺の左手にある土の精霊の加護を見せる。
「そして、彼らの切り札はそれだけしかないと言うのも判る、だからこうしてそれを止めてしまえば良い」
と言って、左手を彼らの方に掲げて土魔法を唱える。
「サクション!」
その瞬間遥か遠方にある、魔法兵器のクリスタルから土魔法が抜けて俺の左手に集まってくるのが見えた。それは土の光のエネルギーそのもので俺の体はみるみる土の巨大なエナジーに満たされていく。そして、右手に持って居るエナジーキューブにそれをどんどん送り込む。
ものの数十秒でそれは終わってしまった。これで彼らの魔法兵器はガラクタになったので戦争は不可能なはずだ。
俺はあらかじめ用意しておいた通告書を風の精霊に手伝ってもらい、戦場の作戦本部に送り付けた。
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