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結婚
第四十九話
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結婚式当日が来た。
保は桃を迎えに桜井家に向かう。
いつものようにロータリーに車を止め、桃の部屋に向かう。
「迎えに来たぞ」
「今行きます」
桃は今日の式が終わったら、保と一緒に暮らす。
桜井家の離れの自分の部屋で過ごすのは今日が最後なのである。
予め必要な荷物は新居の方へ送っているので、この部屋の中にはほとんど荷物が残っていなかった。
それでも、長い時間をこの部屋で過ごしたのだ。
いろいろ思い出があって感慨深いのだろう。
「泣いてるのか?」
「泣いてないもん」
「相変わらず意地っ張りだな」
「うるさいしっ!」
いつものように二人が話していると執事がやって来た。
『お二人にご主人様からお話したいことがあるそうですので、応接室までお越しください』
二人は視線を合わせて頷くと、応接室に向かった。
「おはようございます。お父様、お母様」
「失礼致します。おはようございます。お話とはどのような内容でしょうか?」
『今日は二人の結婚式。最後に桃と話したくて…』
「それでしたら、私は席を外した方がよろしいでしょうか?」
『いや、いてくれて構わない。というか、いてほしい』
『今まで辛い思いをさせてきて、ごめんなさいね』
『許してくれとは言わない。たまには帰ってきて顔を見せてほしい』
「お母様…お父様…」
「桃からも言って差し上げたらどうだ?」
「お父様、お母様。桃は今日久世様の家にお嫁に行きます。十八年間ありがとうございました。お世話になりました」
『桃…っ!』
桃と両親は強く抱きしめ合った。
桃はようやく両親との間の確執を取り除くことができたようだった。
話がひと段落ついた所で、二人は先に式場へ行くことにした。
会場に到着すると、教会式の会場へ向かう。
「先生、会場違うよ?あっちだよ?」
「他にも同じ時間でやりたい人がいるみたいで、俺達の準備はこっちで合ってるんだ」
「そうなんだ」
「桃はここで着替えてくれって」
「分かった」
桃を控室に入れ、保も自分の控室に着替えに行く。
自分の着替えはものの五分とかからなかった。
桃の着替えを待つ。
三十分程度経過したところでスタッフが呼びに来た。
『新婦様がお待ちでございます』
呼びに来たスタッフと一緒に桃の控室に向かう。
ドアを開けると、そこに最高に綺麗になった桃がいた。
保は言葉をなくし、入口で立ち尽くしていた。
「先生?」
「………」
「先生ってばっ!」
「あっ…ごめん」
「大丈夫?調子悪い?」
「至って元気だ。桃が綺麗すぎて言葉を失くしてた」
「またまたぁー」
「本当だって。マジですげぇ綺麗だ」
「ありがと、先生」
「俺からもありがとう」
「ってか、先生。神前式なのに何でウエディングドレス?」
「あぁ、神前式じゃないから。教会式だから」
「はぁっ!?聞いてないんですけど?」
「今言った」
「マジあり得ないんですけど?」
「桃の部屋の結婚情報誌のウエディングドレスのページに付箋貼りまくってただろ?」
「……………勝手に見ないでよ」
「それで、ウエディングドレス着たいのかなぁって思って全部変更してもらった」
「だから、あたし後半の打ち合わせ連れてってもらえなかったの?」
「そういうこと」
「先生…耳貸して」
「何だ?」
「………ありがと」
桃を見ると真っ赤である。しかも涙目で。
この顔を見るためにがんばってきた。その甲斐はあったようだった。
「楽しもうな」
「うん」
『参列の方々の準備が整いましたので、新郎・新婦様もご準備をお願い致します』
スタッフが呼びに来たので、保と桃も会場に向かう。
扉が開いてバージンロードを保と歩く。
保は桃を迎えに桜井家に向かう。
いつものようにロータリーに車を止め、桃の部屋に向かう。
「迎えに来たぞ」
「今行きます」
桃は今日の式が終わったら、保と一緒に暮らす。
桜井家の離れの自分の部屋で過ごすのは今日が最後なのである。
予め必要な荷物は新居の方へ送っているので、この部屋の中にはほとんど荷物が残っていなかった。
それでも、長い時間をこの部屋で過ごしたのだ。
いろいろ思い出があって感慨深いのだろう。
「泣いてるのか?」
「泣いてないもん」
「相変わらず意地っ張りだな」
「うるさいしっ!」
いつものように二人が話していると執事がやって来た。
『お二人にご主人様からお話したいことがあるそうですので、応接室までお越しください』
二人は視線を合わせて頷くと、応接室に向かった。
「おはようございます。お父様、お母様」
「失礼致します。おはようございます。お話とはどのような内容でしょうか?」
『今日は二人の結婚式。最後に桃と話したくて…』
「それでしたら、私は席を外した方がよろしいでしょうか?」
『いや、いてくれて構わない。というか、いてほしい』
『今まで辛い思いをさせてきて、ごめんなさいね』
『許してくれとは言わない。たまには帰ってきて顔を見せてほしい』
「お母様…お父様…」
「桃からも言って差し上げたらどうだ?」
「お父様、お母様。桃は今日久世様の家にお嫁に行きます。十八年間ありがとうございました。お世話になりました」
『桃…っ!』
桃と両親は強く抱きしめ合った。
桃はようやく両親との間の確執を取り除くことができたようだった。
話がひと段落ついた所で、二人は先に式場へ行くことにした。
会場に到着すると、教会式の会場へ向かう。
「先生、会場違うよ?あっちだよ?」
「他にも同じ時間でやりたい人がいるみたいで、俺達の準備はこっちで合ってるんだ」
「そうなんだ」
「桃はここで着替えてくれって」
「分かった」
桃を控室に入れ、保も自分の控室に着替えに行く。
自分の着替えはものの五分とかからなかった。
桃の着替えを待つ。
三十分程度経過したところでスタッフが呼びに来た。
『新婦様がお待ちでございます』
呼びに来たスタッフと一緒に桃の控室に向かう。
ドアを開けると、そこに最高に綺麗になった桃がいた。
保は言葉をなくし、入口で立ち尽くしていた。
「先生?」
「………」
「先生ってばっ!」
「あっ…ごめん」
「大丈夫?調子悪い?」
「至って元気だ。桃が綺麗すぎて言葉を失くしてた」
「またまたぁー」
「本当だって。マジですげぇ綺麗だ」
「ありがと、先生」
「俺からもありがとう」
「ってか、先生。神前式なのに何でウエディングドレス?」
「あぁ、神前式じゃないから。教会式だから」
「はぁっ!?聞いてないんですけど?」
「今言った」
「マジあり得ないんですけど?」
「桃の部屋の結婚情報誌のウエディングドレスのページに付箋貼りまくってただろ?」
「……………勝手に見ないでよ」
「それで、ウエディングドレス着たいのかなぁって思って全部変更してもらった」
「だから、あたし後半の打ち合わせ連れてってもらえなかったの?」
「そういうこと」
「先生…耳貸して」
「何だ?」
「………ありがと」
桃を見ると真っ赤である。しかも涙目で。
この顔を見るためにがんばってきた。その甲斐はあったようだった。
「楽しもうな」
「うん」
『参列の方々の準備が整いましたので、新郎・新婦様もご準備をお願い致します』
スタッフが呼びに来たので、保と桃も会場に向かう。
扉が開いてバージンロードを保と歩く。
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