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婚約
第四十話
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卒業式の予行練習が三月に入ると始まった。
三年生も練習には参加しなければならないので登校する。
休憩で教室にいた時、クラスメイトが話している内容が偶然桃の耳に届いた。
『くーちゃん先生、お見合いするらしいよ』
『マジで!?狙ってたんだけどな…』
『いつお見合いするの?』
『卒業式の日だって』
『それ本当なの?』
『確かな筋からの情報だから本当だと思う』
普段なら気にしないのに、この話に関しては聞き流せなかった。
(先生がお見合いってどういうこと?)
(何も聞いてない…)
(でも、先生もいい歳だもんね。お見合いくらいするよね)
桃は思いの外ショックを受けていたことに驚いた。
(何であたしショック受けてるの?)
(…………そうか。先生が好きだったんだ)
(ずっと近くにいたから勘違いしてたんだ)
(ずっと自分の近くにいてくれると思ってたんだ)
(馬鹿だな、あたし…)
(卒業祝いなんて貰える立場じゃないじゃん)
桃は一人悲しみに沈んだ。
それから卒業式の日まではあっという間だった。
卒業式の朝、桃は両親から呼ばれた。
オメガと判明してから初めてのことだった。
「お父様、お母様。何か用でございますか?」
『今日卒業式だな。まずは卒業おめでとう』
「ありがとうございます」
『卒業式が終わったら、真っ直ぐ家に帰ってきなさい』
「何かあるのでしょうか?」
『お見合いをしてもらいたい』
「お見合いですか…」
『桃には申し訳ないが、お見合いと言ってももう結婚は決まった婚約者殿だ』
「分かりました。婚約者殿との顔合わせでございますね」
『そうだ。学友との話が終わり次第、急ぎ帰って来てもらってもいいか?』
「承知致しました」
いきなり婚約者がいると言われるとは思ってもみなかった。
でも、藤堂とのことがある。
家を維持するために融資してもらうのに、自分が身を捧げればいいだけ。
桃は自暴自棄になっていた。
全ては保のお見合いの話を聞いたあの日から。
(もういいや。先生への恋心は捨てて、婚約者殿をなるべく早めに好きになればいいだけ)
卒業式は厳かに行われた。
教室に戻ると、クラスメイトと写真を撮ったり、アルバムの裏に寄せ書きを書いてもらったりして、最後の思い出を皆と作った。
三年生も練習には参加しなければならないので登校する。
休憩で教室にいた時、クラスメイトが話している内容が偶然桃の耳に届いた。
『くーちゃん先生、お見合いするらしいよ』
『マジで!?狙ってたんだけどな…』
『いつお見合いするの?』
『卒業式の日だって』
『それ本当なの?』
『確かな筋からの情報だから本当だと思う』
普段なら気にしないのに、この話に関しては聞き流せなかった。
(先生がお見合いってどういうこと?)
(何も聞いてない…)
(でも、先生もいい歳だもんね。お見合いくらいするよね)
桃は思いの外ショックを受けていたことに驚いた。
(何であたしショック受けてるの?)
(…………そうか。先生が好きだったんだ)
(ずっと近くにいたから勘違いしてたんだ)
(ずっと自分の近くにいてくれると思ってたんだ)
(馬鹿だな、あたし…)
(卒業祝いなんて貰える立場じゃないじゃん)
桃は一人悲しみに沈んだ。
それから卒業式の日まではあっという間だった。
卒業式の朝、桃は両親から呼ばれた。
オメガと判明してから初めてのことだった。
「お父様、お母様。何か用でございますか?」
『今日卒業式だな。まずは卒業おめでとう』
「ありがとうございます」
『卒業式が終わったら、真っ直ぐ家に帰ってきなさい』
「何かあるのでしょうか?」
『お見合いをしてもらいたい』
「お見合いですか…」
『桃には申し訳ないが、お見合いと言ってももう結婚は決まった婚約者殿だ』
「分かりました。婚約者殿との顔合わせでございますね」
『そうだ。学友との話が終わり次第、急ぎ帰って来てもらってもいいか?』
「承知致しました」
いきなり婚約者がいると言われるとは思ってもみなかった。
でも、藤堂とのことがある。
家を維持するために融資してもらうのに、自分が身を捧げればいいだけ。
桃は自暴自棄になっていた。
全ては保のお見合いの話を聞いたあの日から。
(もういいや。先生への恋心は捨てて、婚約者殿をなるべく早めに好きになればいいだけ)
卒業式は厳かに行われた。
教室に戻ると、クラスメイトと写真を撮ったり、アルバムの裏に寄せ書きを書いてもらったりして、最後の思い出を皆と作った。
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