いばら姫

伊崎夢玖

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停学

十二話

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遊園地は、海から車で四十分程離れた所にあった。
平日だったが、それなりに人が来ていた。
桃は楽しそうだった。
遊園地に着くなり、いきなりジェットコースター連続三回は体力には少しばかり自信がある保でもさすがに堪えた。
十代の体力の凄まじさを目の当たりにし、体力増強しようと密かに心に誓った。
そのあと、メリーゴーランドに乗り、コーヒーカップに乗った。
コーヒーカップに乗る頃には、保の体力ゲージはゼロになった。
休憩の意味も込めて、保はコーヒーカップの次に観覧車に乗ることを提案した。
桃も承諾したので、観覧車乗り場で待機列に並んだ。
「久世、若く見えるだけでおじさんだな」
「お前の体力が底なしなんだ」
「若いもんね」
「俺だってまだ二十代だ」
「あたし十代だもん」
「少しは連れてきてもらってるんだから、大人を労われよ」
桃がシュンとなったところで、保たちの順番が来た。
「順番来たって」
「行くか」
二人は揃って観覧車に乗った。
観覧車は一周二十分程度かかると看板に書いてあった。
「やっと一息つけるな」
「その発言止めた方がいいよ。すごいおじさん臭い」
「マジか!?」
「大マジだよ」
「以後気を付けます」
「そうしてください」
二人は顔を見合わせて笑った。
桃は楽しそうだった。
遊園地に来て、今のところ終始笑顔でいてくれた。
「観覧車から降りたらパレードでも見るか?」
「いいの!?」
「見ずに帰るつもりだったのか?」
「観覧車から降りたらすぐ帰るって言われると思ってた」
「パレードはここの一押しじゃないのか?」
「そうなの!すごくいいんだって」
「パレード見てから帰ろうか」
「ありがと、久世」
「せめて、今くらい先生って言えよ…」
「ふふふ」
他愛もない会話をしていると、二十分なんてあっという間だった。
パレードで見やすい場所を二人で確保して、時間まで待機する。
夕方になってきて、少し肌寒くなってきた。
「飲み物買ってこようと思うけど、リクエストあるか?」
「んー、紅茶」
「了解。大人しく待ってろよ」
「はぁーい」
温かい紅茶とコーヒーを自動販売機で購入し、桃の元へ戻る。
「ほい、紅茶」
「ありがと」
「あと、これ着とけ」
「ありがと、先生」
ジャケットを桃の肩にかけてやると、桃は礼を言いながら、初めて『先生』と呼んでくれた。
(やばい…桃が初めて先生って呼んでくれた。神様ありがとう)
保は天にも昇る気持ちだった。
だから油断したのかもしれない。
パレードを見ずに帰っていれば、更に桃を傷つけずに済んだのに…。
保は自分の判断が間違っていたとずっと後悔した。
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