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2 魔力譲渡

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ピンクの髪は赤が薄くなった色で火属性。水色は水属性、茶色は土属性、緑は風属性。金髪は弱い土属性。

ん?
お母さん、髪の色が薄くなってる……?

「おかあさん、かみのけが」
「あぁ、今日は少し魔力を多めに使ったのよ。大丈夫」

お客さんが来たからたくさんお料理したんだって。

「髪の毛に魔力が宿るから、髪を切らないのよ」
「そなの!?」

まさかの髪=魔力タンク!
そう言えば髪は毛先を揃えるだけで、みんな伸ばしている。ぼくはこの黒さだから髪を切っても大丈夫な気もするけど、もったいないから伸ばしているらしい。ファッション的な文化じゃなかった。

自分にとっては邪魔だけど、きれいに結い上げたラナはかわいいから、長髪も悪くない。



魔力を使うと髪の色が薄くなる。
ハグで魔力を渡せる。
じゃあ、もしかしていっぱいハグしたらラナの髪色が濃くなる?

試したい!
実験! 実験!!

ぼくは翌日の実験にワクワクして、なかなか眠れなかった。


*******


「おはよ、アーテル。どしたの?」
「おはよ! んふふ、いいことかんがえてね! わくわくして ねむれなくって!!」

ラナに相談もなくぎゅうぎゅう抱きついて、さらにほっぺすりすりした。

「なっ、なに!? どうしたの?」
「えへへ、かみのけのいろ、かわったかな?」

あわあわするラナを離して髪の毛を見る。うーん……、かわったかなかなぁ?

「せんせい、ラナのかみのけ、どう?」

2人まとめて面倒を見てくれている家庭教師の先生に聞いてみた。

「いつも通りだと思います」

あれぇ? ダメかな?

「もっかい! もっかいぎゅーってしよ!!」
「アーテル、ボク、はずかしいよぅ……」
「……はずかしいの?」

そう言えば顔が赤い。それじゃあ他の方法を考えようか。
ぼくはラナと先生2人に考えを説明した。

「そうですねぇ。……方法はあるかも知れませんが、私は知りません。それに今の状態で問題ないのですから、危険を冒す必要はないのでは?」
「きけん!? きけん、あるかなぁ?」
「ははは、ないとは言えないだけですよ。お医者様に相談してください」

確かに無理矢理ご飯を流し込むようなものかも知れない。ぼくが謝ると、ラナは笑って許してくれた。

ラナの診察をする主治医の先生は週に1度、お屋敷にやってくる。健康診断の結果、魔力も足りていて健康だって。でも生命維持に必要な分だけなので体外に向けて魔力の放出をしてはいけない、ってんん?

何かが気になる。

んーっと……。

………………。

………………………………。

あっ!
醤油差し!!
空気の出口を塞ぐと中身が出てこないんだ!

なら、魔力を放出しながら注入したらどうだろう?ぼくはお医者さんに提案した。

「ふぅむ、少しずつならやってみても問題なさそうですな」
「ね? せんせいがいれば、だいじょぶでしょ?」
「ボク、うまくできるかな?」
「ラナはまりょくを、ほうしゅつするだけ! ね?」
「う、うん……」

ふんすふんすと鼻息荒く、ラナと手を繋いで魔力の循環ルートを確保した。

「い、いくよ?」
「やって!!」

ラナはつないだ右手から少ない魔力を慎重に押し出した。それに合わせてぼくの魔力をラナの左手に流す。

「う、わっ、なっ、なに? これ……」

ラナの身体は左手から柔らかく光りはじめ、その光は右手まで進み、両手と胸を通る光の帯ができた。そのあと胸の真ん中の光が大きくなって、全身が光るというファンタジーな光景が。

「そこまで!!」

先生の制止の言葉で魔力の流れを止めたけど、温かなものに包まれる感覚が名残惜しくてなかなか手を離せなかった。

「あっ! ラナのかみのけ、きいろい!!」
「おぉ、成功だ。アーテルの考えは正しかったな」
「ど、どうなったの!?」

自分だけ見えないのに焦れて珍しく慌てるラナ。部屋付きの使用人が手鏡を持ってきてくれた。

「うわぁ、ボクのかみ、しろくない……」
「もともとしろくない! ラナのかみのけは きらきらなの!」
「まぁまぁ、これなら魔法の練習もできるのではないですかな?」
「「まほうのれんしゅう!!」」

ぼく達はまだ先だと思っていた魔法の練習ができるかも知れない、と揃って喜びの声を上げた。

領主様にご報告を、ってお医者様が部屋から出ていくとき、そろそろ手を離しなさいと言われ、まだ手を繋いでいたことに気づいた。ラナごめん、だってラナの手、小さくてかわいいんだもん。

それから毎日実験してみて、時間を決めてやれば問題なさそうだ、と言われた。魔力をたくさん流し過ぎると、髪の色は濃くなるけどラナの身体がついていけなくて熱が出ちゃうから。

半年後、ラナはきれいなハニーブロンドになりました。


「ふふふ、まいにちのつみかさねは すごいね!」
「すごいのはアーテルだよ」
「アーティ!」
「……アーティがすごいの」
「そうそう、ラナもぼくのこと、あいしょうでよんでよね!」

仲良しの証である愛称呼び。
ぼくはもともとラナの名前が言いづらくて許されていたけど、ラナは真面目だからぼくの名前を縮めないで呼んでた。でもさ、こんなに仲良しなんだから、愛称呼びしてくれてもいいじゃない?

ぼくの名前は元々短いけど。

と、いうことでラナはアーティ呼び練習中です。


*******


仲良く過ごして勉強も魔法の練習もして、10歳になった。ここでラナは貴族が通う学校へ入学しなくてはならない。ぼくは平民だから行かなくてもいいんだけど、ラナの魔力補給のため、側仕えとしてついていくことになった。

寮生活!
同室!!

学生として一緒に勉強もするけど、部屋にはミニキッチンがついていて自炊もできるので、有能な側仕えがそれぞれ料理するという。

ぼくは慌ててお母さんに教えてもらい、入学前に合格をもらった。

そしてもう1つ。
重大な問題がある。

ぼくの髪の色だ。

目の色は魔法の目薬でごまかせるんだけど、髪は染められないし、切れないから困る。こんなに黒い髪では高位貴族に目をつけられかねない。

仕方なく金髪のカツラを作ってもらった。

装着の練習もいっぱいした!

「なんだか知らない人みたい……」
「ラナリウス様、そのようなお顔をなさらないでください」
「喋り方まで……」

悲しそうな顔しないで欲しい。
公の場で側仕えが馴れ馴れしく喋ってはラナが馬鹿にされてしまう。程度の低い使用人しか雇えないのか、と。

「部屋の中ではいつも通りにするから、我慢してよ」
「うん……」

うちの天使は甘えん坊だなぁ。

ラナの家は子爵なので、高位貴族から何か言われたら逆らえない。ぼくを取り上げられるのも困るし、ラナがかわいさを妬まれても困る。

ぼくたちの平和のために、目立たないよう、気をつけなくちゃ!!

気をつけるべきことをあれこれ考え、シミュレーションして準備をした。服も学用品も調理道具も食材も、全部子爵家持ち。

ていうか、この件で正式に側仕えとして採用されたので親友から親友兼側仕えにジョブチェンジです。

伝説の勇者より暗躍する側仕えの方が性に合っているかも、と考える今日この頃です。

暗躍するスキルはまだないけど。
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