上 下
91 / 134
おお!っと王都で驚いた

まほうのうた

しおりを挟む
新素材で作る事になった新しい服は先日のドレスのスカート部分と同じ素材。北からやってきた人が作った新素材で見た目は絹に似ていて価格は絹と麻の間くらい。……今は。人気が出たら価格が上がってしまうし、絹と同じ値段になったら人気は無くなる……。体温調節ができる人には同じ価格なら絹の方が良いよねぇ。供給が安定してるし高級品のイメージがある。





ラウリ先生の紹介で訪ねた研究所に通う人の年齢はまちまちらしい。むしろ成人している人もいる。成人している人は2~3回来ればすぐにコツを覚えて卒業して行く。おれだって!!

「ラウリ先生の紹介でお伺いしましたチサト・デーメルと申します」
「あー、聞いてるよー。コツを掴めばすぐできるようになるからねー。頑張ろうねー」

所長さんはのんびりした喋り方の優しいおじさん。

「あのねー、これを頭に付けてー、首には貼れないから紐で結んでー、胸とお腹には貼ってねー、そこを順に意識して涼しくなれーとか、あったかくなれー、とか考えると良いんだよー。じゃあここで仰向けになってねー。胸とお腹出してねー」

言われるがままに診察台に寝転び、シャツのボタンを外して前をはだけた。

「ココとココ、2ヶ所に貼るからねー。頭のてっぺんは髪の毛にピンで留めてー、首は自分でねー」

首のはリボンにボタンがついたみたいになっている。胸は心臓のあたりでお腹はおへそ。おへそにはドーナツ型だ。頭、首、胸、お腹の順に貼ったものを触って確認しながら魔力の流れを意識する、らしい。

ピンとこない。

「あ、汗かくからこっちに着替えて奥の部屋に行って練習ねー。暑くなってるから涼しくなれーって念じるんだよー」

渡された服は手術着みたいなゆったりとした膝丈のワンピース。奥の部屋は大きなガラス窓の日当たりの良い部屋だった。……サンルームってやつかな?

そこにはアレクより少し大きな赤い髪のそっくりな顔の子が2人。

「この子達は両親の都合で北の町から引っ越してきたから、寒さには強いけど暑さに弱いんだよー。このお兄ちゃんも一緒に練習するから仲良くしてあげてねー」
「「いいよー!」」

見た目もそっくりで同時に返事をする。双子! かわいい!!

「チサトだよ。よろしくね」
「チサト? おとななのにあついのだめなの?」
「だめなの。今日初めてだから教えてくれる?」
「いいけどぼくたち、まだじょうずじゃないよ」
「どんな風にするの?」

説明してもらったように頭のてっぺんから1、2、3、4、と触って「すずしくなーれ」と呪文(?)を唱えている。所長が頷いてるから合ってるのか。

真似してやってみるけど、変化なし。

「「あついー! しょちょー、おみずちょーだい」」
「自分で出来るでしょー?」
「あつくてうごけないー!」
「チサトー、おみずちょーだい!」

この子達も上手くいかなくて焦れて甘えているみたい。

室内のミニキッチンでお水を汲み、飲ませていて思いついた。子供向けのテレビで歌いながら体を触ってその部位の覚えるやつ。貼ったボタンを触りながら歌を歌えばもしかして上手くいくんじゃないかな?

双子ちゃんのボタン(?)をツンツンしながらデタラメな歌を適当に歌ってみた。

♪ あーついときには スー スー
♪ さーむいときには ぽっかぽか
♪ 魔力の流れで体を包んで
♪ ぽっかぽっかすーすー 気持ち良い~!

「なにそれー?」
「ヘンなうたー」
「えー? 楽しくない?」

2人は顔を見合わせて互いの様子を伺って、同時ににっと笑って声を揃えた。

「「たのしい!!」」

掴みはオッケー! よし、続きだ!

♪ 最初に触るのどこだっけ?

「あたま!」
「てっぺん!」

♪ なでなでなで
♪ つーぎに触るのどこですか?

「くびー!」
「のどー!」

♪ えー? どっちー?
♪ こちょこちょイタズラしてみよう

「「きゃーーー!」」

♪ 今度はどこを触ろうか?

「「むねだよ!」」

♪ 残念、ちがうよお尻だよー

「「えぇー!?」」

♪ おぉっと違った、胸でしたー!
♪ 今度はだいじょぶ、間違えない!
♪ おへそをくるりと回りましょう

「おへそ!」
「くるり!」
「涼しくなぁれ!」

しーーーーーん

あれ?
なんだか涼しくなったような……?

「あつくない」
「すずしい」
「2人も?」
「「うん!」」

いきなり成功? ホントに???

「では試してみましょうか」

所長はそう言って暖炉に火を入れた。暑い! と、思ったのに暑くない。火に近づけばちゃんと熱いけどほんの少し離れるだけで熱が遮断される。

これなら詰襟の騎士服でも汗をかかないね!

あ、わざわざ涼しい服作ってもらったのに無駄になっちゃった?

「あなた方はまだコントロールが完全ではないのでー、その魔石パッチを外すと体温調節ができないと思いますー。あと何回か通ってー、それなしでコントロールできるようになって下さいねー」
「「これちょうだい」」
「ダメでーす」
「「けちー!」」
「これはまだ少ししかないから、あげられないんだよー」
「他の困っている人のために我慢しよう?」
「「ぶー!」」
「ここ、きらい? おれはちゃんと練習しに来るよ」
「チサトまたくる? またへんなうた うたう?」
「ヘンな歌、一緒に歌おう!」
「それならくる!」
「チサトとあそぶー!」

また一緒に歌う約束をして何度か歌って歌を覚えて家に帰った。
他の子たちがどんどん来なくなって置いてかれた気がしてたのかも知れないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜王妃は家出中につき

ゴルゴンゾーラ安井
BL
竜人の国、アルディオンの王ジークハルトの后リディエールは、か弱い人族として生まれながら王の唯一の番として150年竜王妃としての努めを果たしてきた。 2人の息子も王子として立派に育てたし、娘も3人嫁がせた。 これからは夫婦水入らずの生活も視野に隠居を考えていたリディエールだったが、ジークハルトに浮気疑惑が持ち上がる。 帰れる実家は既にない。 ならば、選択肢は一つ。 家出させていただきます! 元冒険者のリディが王宮を飛び出して好き勝手大暴れします。 本編完結しました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。 非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。 両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。 そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。 非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。 ※全年齢向け作品です。

EDEN ―孕ませ―

豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。 平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。 【ご注意】 ※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。 ※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。 ※前半はほとんどがエロシーンです。

処理中です...