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おお!っと王都で驚いた
辞令の中身は
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王都から帰って来て3ヶ月後、アレクシスとヨハンがそれぞれのお母さんと遊びに来た。せっかくなのでコリンさんとオスカー母子も呼んで、寒い季節なので霜柱を踏んづけたり、孤児院に遊びに行ったり、ピクニックに行ったりした。
活発なアレクシスが木登りをしてついていけないヨハンが拗ねたり、王都には居ない虫を見つけて大騒ぎしたり、夜はホタルみたいに光る虫を追いかけて遊んだ。
4人はとても仲良くなったけどコリンさんちの子は家でないと眠れないと言うので帰り、3人はエミールさん達が泊まっている宿の1つのベッドで一緒に眠った。ハルトを預かってくれたアレクシスの母エミールさんとヨハン母のクレメンスさんにも感謝!!
それから2ヶ月後にフィールに異動の辞令がおりた。
こっちの世界でも転勤てあるんだなぁ。
仕事はしていなかったけど孤児院にも転勤に付いて行く事を伝えた。子供達は泣いて別れを惜しんでくれたけど、おやつに呼ばれたらサクッと切り替えられた。……切ない。
それはともかく。
多少なりとも荷物があるので馬車を借りて乗り換えなしで行くそうだ。みんなの服とハルトのおもちゃとフィールの武器と防具。……鎧なんて持ってたんだ。
「非常時への備えと儀礼用だ。もっとも式典は礼服だし、動きが鈍るからよほど攻撃力の高い魔獣が出た時しか使わないがな」
一撃で即死するレベルの魔獣がいるの!?
フィールの実家の離れに住まわせてもらえるから家具も調理道具も持って行かなくて良い。家の木の実を漬けた果実酒は持っていかないと!
オルトさんちのオスカーはまだ小さいから離れたら忘れられてしまいそうだけど、また会えるよね?
俺たちは春が近づいた頃、住み慣れた我が家を後にした。
「わんわ。ちっちゅ。とー」
「わんわんいたね。狐さんもいたの? 鳥さん狙われないかな?」
「狐がちっちゅなのか?」
「ちっちゅ!」
「……蝶の事か?」
「ちょ?」
狐がいた訳じゃなくて蝶々が言えないだけだったのか。ハルトはおしゃべりが好きで色んな言葉を並べる。でもまだ赤ちゃん言葉なので伝わらない事も多い。
「ちょ! ちょ!」
「これ、てんとう虫?」
「虫は全て蝶なのか」
馬車に舞い込んできたオレンジ色のてんとう虫を指差して蝶々だと言い張る。少し模様が違うし大きめだけどてんとう虫だと思う。
「かわいいね」
「かーいー!」
他愛もない会話をしながら揺られていると、徐々に眠くなって行く。一足先に眠ったハルトを抱いたままフィールにもたれかかって眠ってしまった。
ガタンッ!
「うわっ!」
大きな揺れで目を覚ますとフィールがしっかり抱き抱えてくれていた。
「どうしたの?」
「危険は感じないから道に不具合でもあったんだろう」
「すみません、車輪がはまってしまったようです。少し降りて頂けますか?」
「分かった」
寝ぼけ眼のハルトを抱いて外に出ると、石畳がいくつか落ち窪んでいた。
「ラビュリント・ハーゼか?」
「その可能性もありますが」
まずはフィールと馭者さんが馬車を持ち上げて平らな道に移動させた。そしてフィールが落ち窪んだ部分の石畳を持ち上げてどかし、地面を叩いたり触ったり覗き込んだりする。
「ただの老朽化だな」
「それなら良かった! ここのところ雨が続いたから土台が緩んだのかも知れませんね」
「それが原因だろう。次の町の領主に伝えておこう」
窪みを囲むように石を積んで布を付けた木を立てて目印にする。これで後から来る人達がはまらずに済む。怪我をして欲しくないもんね。
ハルトはすっかり目を覚まし、馬車の窓から見える物を指差してはご機嫌できゃっきゃと喜んでいた。
2回ほど休憩を挟んでツィーゲの町に着いた。フィールは領主様に挨拶をして道の状態を報告する。そしておれはギゼに王都に住む事になったと告げると、今度領主様が王都に行く時について行きます、と言った。
王都は他の貴族の目があるのできちんとした振る舞いができないと連れて行ってもらえないのだとか。
「ギゼならできるよ」
「はい。頑張ります! ハルトも元気でね」
「あい!」
名前を呼ばれると自動的に良いお返事をするハルトは他の使用人の人達からも可愛がられ、おやつをもらったり抱っこしてもらったり肩車してもらったり。みんな優しくて大好きだ。夕飯までご馳走になってしまった。
宿に泊まって翌日も早くに出発し、今度は何事もなく次の町に着いた。
こんな調子で7日間かけて王都に辿り着いた時にはハルトが遊び足りなくてぐずって大変だった。フィールが休憩中に放り投げる高い高いや追いかけっこをしてくれてなんとか宥めた。
おれが途中で急に怠くなって熱っぽくなったのは疲れたのかな?
途中の町で1日くらいおれが休んでハルトが遊ぶ日をとれば良かったのかな?
それにしてもハルトは2歳にもならないのに体力が……ついていけない……ぜぃぜぃ……。始めに少し追いかけっこしただけなのに、息が切れて苦しいのでフィールに任せちゃった。パパ、ありがとう!
活発なアレクシスが木登りをしてついていけないヨハンが拗ねたり、王都には居ない虫を見つけて大騒ぎしたり、夜はホタルみたいに光る虫を追いかけて遊んだ。
4人はとても仲良くなったけどコリンさんちの子は家でないと眠れないと言うので帰り、3人はエミールさん達が泊まっている宿の1つのベッドで一緒に眠った。ハルトを預かってくれたアレクシスの母エミールさんとヨハン母のクレメンスさんにも感謝!!
それから2ヶ月後にフィールに異動の辞令がおりた。
こっちの世界でも転勤てあるんだなぁ。
仕事はしていなかったけど孤児院にも転勤に付いて行く事を伝えた。子供達は泣いて別れを惜しんでくれたけど、おやつに呼ばれたらサクッと切り替えられた。……切ない。
それはともかく。
多少なりとも荷物があるので馬車を借りて乗り換えなしで行くそうだ。みんなの服とハルトのおもちゃとフィールの武器と防具。……鎧なんて持ってたんだ。
「非常時への備えと儀礼用だ。もっとも式典は礼服だし、動きが鈍るからよほど攻撃力の高い魔獣が出た時しか使わないがな」
一撃で即死するレベルの魔獣がいるの!?
フィールの実家の離れに住まわせてもらえるから家具も調理道具も持って行かなくて良い。家の木の実を漬けた果実酒は持っていかないと!
オルトさんちのオスカーはまだ小さいから離れたら忘れられてしまいそうだけど、また会えるよね?
俺たちは春が近づいた頃、住み慣れた我が家を後にした。
「わんわ。ちっちゅ。とー」
「わんわんいたね。狐さんもいたの? 鳥さん狙われないかな?」
「狐がちっちゅなのか?」
「ちっちゅ!」
「……蝶の事か?」
「ちょ?」
狐がいた訳じゃなくて蝶々が言えないだけだったのか。ハルトはおしゃべりが好きで色んな言葉を並べる。でもまだ赤ちゃん言葉なので伝わらない事も多い。
「ちょ! ちょ!」
「これ、てんとう虫?」
「虫は全て蝶なのか」
馬車に舞い込んできたオレンジ色のてんとう虫を指差して蝶々だと言い張る。少し模様が違うし大きめだけどてんとう虫だと思う。
「かわいいね」
「かーいー!」
他愛もない会話をしながら揺られていると、徐々に眠くなって行く。一足先に眠ったハルトを抱いたままフィールにもたれかかって眠ってしまった。
ガタンッ!
「うわっ!」
大きな揺れで目を覚ますとフィールがしっかり抱き抱えてくれていた。
「どうしたの?」
「危険は感じないから道に不具合でもあったんだろう」
「すみません、車輪がはまってしまったようです。少し降りて頂けますか?」
「分かった」
寝ぼけ眼のハルトを抱いて外に出ると、石畳がいくつか落ち窪んでいた。
「ラビュリント・ハーゼか?」
「その可能性もありますが」
まずはフィールと馭者さんが馬車を持ち上げて平らな道に移動させた。そしてフィールが落ち窪んだ部分の石畳を持ち上げてどかし、地面を叩いたり触ったり覗き込んだりする。
「ただの老朽化だな」
「それなら良かった! ここのところ雨が続いたから土台が緩んだのかも知れませんね」
「それが原因だろう。次の町の領主に伝えておこう」
窪みを囲むように石を積んで布を付けた木を立てて目印にする。これで後から来る人達がはまらずに済む。怪我をして欲しくないもんね。
ハルトはすっかり目を覚まし、馬車の窓から見える物を指差してはご機嫌できゃっきゃと喜んでいた。
2回ほど休憩を挟んでツィーゲの町に着いた。フィールは領主様に挨拶をして道の状態を報告する。そしておれはギゼに王都に住む事になったと告げると、今度領主様が王都に行く時について行きます、と言った。
王都は他の貴族の目があるのできちんとした振る舞いができないと連れて行ってもらえないのだとか。
「ギゼならできるよ」
「はい。頑張ります! ハルトも元気でね」
「あい!」
名前を呼ばれると自動的に良いお返事をするハルトは他の使用人の人達からも可愛がられ、おやつをもらったり抱っこしてもらったり肩車してもらったり。みんな優しくて大好きだ。夕飯までご馳走になってしまった。
宿に泊まって翌日も早くに出発し、今度は何事もなく次の町に着いた。
こんな調子で7日間かけて王都に辿り着いた時にはハルトが遊び足りなくてぐずって大変だった。フィールが休憩中に放り投げる高い高いや追いかけっこをしてくれてなんとか宥めた。
おれが途中で急に怠くなって熱っぽくなったのは疲れたのかな?
途中の町で1日くらいおれが休んでハルトが遊ぶ日をとれば良かったのかな?
それにしてもハルトは2歳にもならないのに体力が……ついていけない……ぜぃぜぃ……。始めに少し追いかけっこしただけなのに、息が切れて苦しいのでフィールに任せちゃった。パパ、ありがとう!
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