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出産に立ち会う
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ーー デーメル side ーー
言葉が通じなくなる現象がなくなったのはこの世界に馴染んだのかと考えていたが、子宮ができたのが原因ではないだろうか? 私が日々注ぎ込んだ魔力(精液)を使って成熟したなんて……。
それにしても子供。
庇護欲はあれど大して思い入れはなかったが、チサトが子供を可愛がる姿には癒される。産まれたら精一杯世話をしよう。
「こ……、このっ……! バカ息子ーーーーーっ!!」
結婚と妊娠の報告をしたら母が飛んで来た。
そしてチサトを見るなり罵声を浴びせられ、変態扱いをされた。不本意だ。私は断じて変態ではない。
「騙くらかして手篭めにしたんじゃないのか? チサトくん、困ってないか?」
「あ、あの、初めまして、チサトと申します。フィールには初めて会った時からずっと優しくしてもらってます」
「他にも付き合ってみたいなー、とかない?」
「ありません!」
聞き捨てならないことを言われたがチサトが即座に否定してくれた。
「チサトくんがそう言うなら良いけど。じゃ、俺、何でもするから言ってね?」
「チサト、母がうっとおしかったら帰ってもらうから言ってくれ」
「……緊張してたけど大丈夫そう。これからよろしくお願いします」
「よし、よろしくされました!」
人を雇うか身内に頼むか迷ったが信用に足る人物かどうかをいちいち見定めるのが面倒なので母が来てくれたのは良かった。
つわりが酷くなり、診察してもらうと魔力不足だから外部から補給をするように言われた。毎晩1度では足りなかったようで嬉しい誤算だ。激しくしないよう気を配っていると焦れてねだるチサトがかわいい。
そう言えば妊娠中は感度が上がるのだったか。ほんの少し膨らんだ胸も新鮮だ。
仕事の方は予想日の1ヶ月前からオルトを隊長代行にする、はずだったがコリンも妊娠したので副隊長補佐だったシュタッフスを隊長代行、エルマーを副隊長代行にする。エルマーは少々頼りないのだが、役職を得てしっかりする人間もいるから、厳しく指導していけば良いだろう。
日に日に大きくなる腹部を見ながら出産時にチサトの蕾が傷つかないかと不安を抱えつつ、無事に産まれてくれることを願う。チサトは腹を蹴る我が子に感動しているが、正直なところ私以外がチサトの中に入っていると思うと嫉妬してしまう。私が入れる場所ではないのだが。
予想日を前に祖父母が到着した。
気を使わなくて済むように、と隣の家を借りたそうで父と母方の祖父母と兄家族が来ても泊まれるらしい。こう言う事に一番気が回るのは祖父だろう。
頭が上がらない。
そして予想日の深夜、陣痛がやって来た。いよいよだ。だがあんなに痛がっている……大丈夫だろうか?
「そんなに気になるなら次はお前が産んだらどうだ?」
「私とチサトでは痛みに対する耐性が違います」
「いや、怪我とは違うぞ? 体の内側の痛みだから切り傷や骨折とはまた違う痛みなんだよ」
元騎士団員の祖母が言うなら間違いないだろうがなおさら不安になってくる。しかし、私が産むと言う事はチサトが私に入れる訳で……却下だ。医者が到着し、母と私が付き添っての出産となったが苦しげなチサトに何もしてやれない自分が歯がゆくて仕方がない。
陣痛の合間にする腸内洗浄はたとえ医者でも任せたくない。
指導を受けて私がやった。恥ずかしがるチサトに欲情しかけた自分が疎ましい。
「そろそろだよ。お腹の中きれいにしてあるから力んでも出てくるのは赤ちゃんだけだからねー、安心して力んでねー」
「いっ、だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「痛いねー」
「ふぅふぅ…… ひぎぃぃぃぃぃぃ!」
「痛いねー」
チサトが苦しんでいるのに医者は適当な相槌を打つだけで苛立つが、医者が慌てたらこちらも不安になるからそのための対応なのかも知れない。
「……ほぇあ! ほぇあ! ほぇあ!」
「はーい、若いのに頑張ったねー。はい、赤ちゃん。」
医者は手早く赤ん坊を拭って柔らかな布で包み、チサトに手渡した。
「ちっちゃい! 赤ちゃんこんなにちっちゃいの!?」
「標準だよー。初産だから少しは小さめかな? はい、まず水を飲ませてね」」
水を2匙ほど飲ませると、赤ん坊は体の大きさからは考えられない大声で泣き出した。
「このお茶を飲めばもう母乳出るから」
医者から渡された茶をチサトが飲む間、母がデレデレの顔で孫を抱いている。私も少しだけ抱いたが壊れそうで緊張した。頃合いを見て授乳の仕方を教わり、チサトの胸に吸い付かせると一心不乱に母乳を飲む。
慈愛に満ちた表情のチサトはとても美しかった。
程なくして眠り始めた赤ん坊を母が受け取り、チサトは体内に残った胎盤を排出する後産というもので再び苦しんでいたが、それも終わって衣服を整え、睡眠を取らせた。
赤ん坊はチサトと同じ黒髪で目の色はまだはっきりしないが、可愛くない訳がない。
父の上腕二頭筋と同じくらいしかないこの子がどれ程大きくなるか、楽しみだ。……チサトに似て小さいままかも知れない。
翌日には父が、翌々日には父方母方の祖父母が到着し、兄家族は1ヶ月後にやって来た。赤ん坊の首がしっかり座るのを待ってくれたらしい。息子のアレックスが抱いても心配ないように、との配慮だった。
言葉が通じなくなる現象がなくなったのはこの世界に馴染んだのかと考えていたが、子宮ができたのが原因ではないだろうか? 私が日々注ぎ込んだ魔力(精液)を使って成熟したなんて……。
それにしても子供。
庇護欲はあれど大して思い入れはなかったが、チサトが子供を可愛がる姿には癒される。産まれたら精一杯世話をしよう。
「こ……、このっ……! バカ息子ーーーーーっ!!」
結婚と妊娠の報告をしたら母が飛んで来た。
そしてチサトを見るなり罵声を浴びせられ、変態扱いをされた。不本意だ。私は断じて変態ではない。
「騙くらかして手篭めにしたんじゃないのか? チサトくん、困ってないか?」
「あ、あの、初めまして、チサトと申します。フィールには初めて会った時からずっと優しくしてもらってます」
「他にも付き合ってみたいなー、とかない?」
「ありません!」
聞き捨てならないことを言われたがチサトが即座に否定してくれた。
「チサトくんがそう言うなら良いけど。じゃ、俺、何でもするから言ってね?」
「チサト、母がうっとおしかったら帰ってもらうから言ってくれ」
「……緊張してたけど大丈夫そう。これからよろしくお願いします」
「よし、よろしくされました!」
人を雇うか身内に頼むか迷ったが信用に足る人物かどうかをいちいち見定めるのが面倒なので母が来てくれたのは良かった。
つわりが酷くなり、診察してもらうと魔力不足だから外部から補給をするように言われた。毎晩1度では足りなかったようで嬉しい誤算だ。激しくしないよう気を配っていると焦れてねだるチサトがかわいい。
そう言えば妊娠中は感度が上がるのだったか。ほんの少し膨らんだ胸も新鮮だ。
仕事の方は予想日の1ヶ月前からオルトを隊長代行にする、はずだったがコリンも妊娠したので副隊長補佐だったシュタッフスを隊長代行、エルマーを副隊長代行にする。エルマーは少々頼りないのだが、役職を得てしっかりする人間もいるから、厳しく指導していけば良いだろう。
日に日に大きくなる腹部を見ながら出産時にチサトの蕾が傷つかないかと不安を抱えつつ、無事に産まれてくれることを願う。チサトは腹を蹴る我が子に感動しているが、正直なところ私以外がチサトの中に入っていると思うと嫉妬してしまう。私が入れる場所ではないのだが。
予想日を前に祖父母が到着した。
気を使わなくて済むように、と隣の家を借りたそうで父と母方の祖父母と兄家族が来ても泊まれるらしい。こう言う事に一番気が回るのは祖父だろう。
頭が上がらない。
そして予想日の深夜、陣痛がやって来た。いよいよだ。だがあんなに痛がっている……大丈夫だろうか?
「そんなに気になるなら次はお前が産んだらどうだ?」
「私とチサトでは痛みに対する耐性が違います」
「いや、怪我とは違うぞ? 体の内側の痛みだから切り傷や骨折とはまた違う痛みなんだよ」
元騎士団員の祖母が言うなら間違いないだろうがなおさら不安になってくる。しかし、私が産むと言う事はチサトが私に入れる訳で……却下だ。医者が到着し、母と私が付き添っての出産となったが苦しげなチサトに何もしてやれない自分が歯がゆくて仕方がない。
陣痛の合間にする腸内洗浄はたとえ医者でも任せたくない。
指導を受けて私がやった。恥ずかしがるチサトに欲情しかけた自分が疎ましい。
「そろそろだよ。お腹の中きれいにしてあるから力んでも出てくるのは赤ちゃんだけだからねー、安心して力んでねー」
「いっ、だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「痛いねー」
「ふぅふぅ…… ひぎぃぃぃぃぃぃ!」
「痛いねー」
チサトが苦しんでいるのに医者は適当な相槌を打つだけで苛立つが、医者が慌てたらこちらも不安になるからそのための対応なのかも知れない。
「……ほぇあ! ほぇあ! ほぇあ!」
「はーい、若いのに頑張ったねー。はい、赤ちゃん。」
医者は手早く赤ん坊を拭って柔らかな布で包み、チサトに手渡した。
「ちっちゃい! 赤ちゃんこんなにちっちゃいの!?」
「標準だよー。初産だから少しは小さめかな? はい、まず水を飲ませてね」」
水を2匙ほど飲ませると、赤ん坊は体の大きさからは考えられない大声で泣き出した。
「このお茶を飲めばもう母乳出るから」
医者から渡された茶をチサトが飲む間、母がデレデレの顔で孫を抱いている。私も少しだけ抱いたが壊れそうで緊張した。頃合いを見て授乳の仕方を教わり、チサトの胸に吸い付かせると一心不乱に母乳を飲む。
慈愛に満ちた表情のチサトはとても美しかった。
程なくして眠り始めた赤ん坊を母が受け取り、チサトは体内に残った胎盤を排出する後産というもので再び苦しんでいたが、それも終わって衣服を整え、睡眠を取らせた。
赤ん坊はチサトと同じ黒髪で目の色はまだはっきりしないが、可愛くない訳がない。
父の上腕二頭筋と同じくらいしかないこの子がどれ程大きくなるか、楽しみだ。……チサトに似て小さいままかも知れない。
翌日には父が、翌々日には父方母方の祖父母が到着し、兄家族は1ヶ月後にやって来た。赤ん坊の首がしっかり座るのを待ってくれたらしい。息子のアレックスが抱いても心配ないように、との配慮だった。
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