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いざお見舞い
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ーー チサト side ーー
お風呂…… 恥ずかしかった。
パウルには馬鹿にされるし、エディトにはフォローされて逆に辛いし、ドロテアには面白がられるし。
もう一緒に入らない!って言ったらカイが泣くし。
しょぼーん……
次の日、迎えに来たフィールからツィーゲ伯爵が寝込んでいると聞いた。大丈夫なのかな?
「それで、領主が見舞いに行くそうなんだがチサトも行かないか?」
「行って良いの!?」
「あぁ。うちの領主がツィーゲ伯が気に入っている私とチサトも連れて行きたいと言っている。先ほどイーヴァイン院長に休みの許可を取った」
ギゼラがお世話になってるんだから行かなくちゃ! そんなに具合悪いのかなぁ?
「酷ければうちの領主が飛んで行くだろうから大した事ないだろう」
「良かった! ……隣町までどれくらい?」
「馬車で片道1日だな」
「1日!? じゃ、泊まりなの?」
「そうだ。向こうの町に2泊する」
じゅ、準備!
着替えとタオルと……お弁当?
「持ち物の準備は? なにを持って行けば良い?」
「着替えくらいだな。昼食は領主のお抱え料理人が作るし、宿泊は向こうの町だ」
「お見舞いの品は?」
「領主が用意してるから必要ない」
……なんか、遊びに行くみたいじゃない? って言ったら、似たようなものだって。……フィールって意外と適当? カタブツ感あったような……あれぇ?
着替えだけなので準備はすぐに終わってしまった。
「チサト、提案があるのだが」
「提案?」
「この家にバスタブを置こうかと……」
「バスタブ! 欲しい! 肩まで浸かれるのが良い!」
「分かった。2人で浸かろう」
「ふっ……」
2人で浸かる、って事は……後ろから抱っこで……ぴったりくっついて、とか!?
「顔が赤いよ?」
「だっ……だって……想像しちゃって……」
「明日は1日中馬車だから、手加減するからね?」
「ふゃんっ!」
恥ずかしい想像しちゃった上に耳元で囁かれて身体の奥がきゅうんとしちゃうぅ……快楽に流されるダメなおれがいる……
朝です!
良い天気です! 良い朝でもあります!
いつの間に着せてもらったのか分からないけど、すべすべの手触りのシャツを着て寝ていました。フィールはトランクスだけ履いてる。……ふんどしじゃなかった。
成長する子供はサイズフリーのふんどしで、大人になるとトランクス型の下着になるんだって。
トランクスの方がいいけど、成長が止まった事になると思うと踏ん切りがつかない。まだ成長期は終わってないはずだし! ウエストは紐だから少し大きめでも構わないだろうけど。
やっぱり今度、買ってこよう!
朝食を食べて支度を終えたら領主の屋敷に行く。
フィールは護衛なので馬で、おれは料理人さん達と馬車で。良い人たちばかりでみんなで可愛がってくれるけど、16歳って微妙に信じてくれてない気もする。
「本当に16歳ですよ?」
「分かったよ。栄養が足りなかったんだろう? 今はたくさん食べられてるかい?」
「ちゃんとお腹いっぱい食べてます」
「ならこれから大きくなれるね」
子供の頃は偏食だったけど好き嫌い克服したし、食べさせてもらってないと思われるとじーちゃんばーちゃんに申し訳ない。頑張るぞ!
「少ない! そんなだから大きくならないんだ」
「普通です! これ以上食べたら吐きます」
「普通……?」
「むしろ多めに食べました!」
料理人さんとのやり取り。
この人の言う「たくさん」は無理だった。そう言えば孤児院のみんなもおれより食べるっけ。
「料理長、職業柄たくさん食べさせたいんだろうが無理をさせてはいけないよ」
「旦那様!」
領主様は先に食べ終えて様子を見に来たそうだ。あ、フィール。
「チサト、馬車はどうだ?」
「うん、快適だよ。みんな優しいし」
「チサトくん、デーメル隊長の馬に乗っても良いんだよ」
護衛の馬に足手まといが乗っちゃダメだろうと思うけど、本当は護衛がいらないくらい安全な道なのか。ツィーゲ伯爵がフィールを気に入ってるからお見舞いに連れて来たんだって。なら乗せてもらっても良いかな?
「わっ!」
「ほら、リタもチサトを乗せたいって言ってるよ」
前にも乗せてくれた馬のリタがおれの袖を優しく噛んで引っ張る。かわいい!!
「リタ! おれの事覚えててくれたの? わぁ! ちょっ、くすぐったいって!」
お腹のあたりに鼻面を擦り付けてくる。
耳の付け根を掻いてやると、いたずらをやめてうっとりと目を閉じた。
「それでは、出発する!」
領主様の一声で迅速にそれぞれの持ち場に付き、おれはフィールの前に乗せてもらった。街道の左右は穀倉地帯で麦らしき作物が青々と茂っていた。
「フィール、あれは何?」
「三日月羊だ」
確かに白っぽくてモコモコした生き物が畑の中に点々といる。ツノがおでこに1本で、反っている。ツノの形から三日月羊の名前がついたようだ。
「あの茶色いのは?」
「牛」
そのままだった。ツノは水牛のように大きくて尖ってる。牛乳を絞ってバターやチーズを作ったり、捌いて肉にする。今日の昼食のローストビーフサンドもあの牛の肉だった。
こちらの家畜は基本放し飼いで町の近くには豚や鶏がいるそうだ。馬車の中からは見られなかったから、やっぱり馬は楽しい。リタ、ありがとう!!
お風呂…… 恥ずかしかった。
パウルには馬鹿にされるし、エディトにはフォローされて逆に辛いし、ドロテアには面白がられるし。
もう一緒に入らない!って言ったらカイが泣くし。
しょぼーん……
次の日、迎えに来たフィールからツィーゲ伯爵が寝込んでいると聞いた。大丈夫なのかな?
「それで、領主が見舞いに行くそうなんだがチサトも行かないか?」
「行って良いの!?」
「あぁ。うちの領主がツィーゲ伯が気に入っている私とチサトも連れて行きたいと言っている。先ほどイーヴァイン院長に休みの許可を取った」
ギゼラがお世話になってるんだから行かなくちゃ! そんなに具合悪いのかなぁ?
「酷ければうちの領主が飛んで行くだろうから大した事ないだろう」
「良かった! ……隣町までどれくらい?」
「馬車で片道1日だな」
「1日!? じゃ、泊まりなの?」
「そうだ。向こうの町に2泊する」
じゅ、準備!
着替えとタオルと……お弁当?
「持ち物の準備は? なにを持って行けば良い?」
「着替えくらいだな。昼食は領主のお抱え料理人が作るし、宿泊は向こうの町だ」
「お見舞いの品は?」
「領主が用意してるから必要ない」
……なんか、遊びに行くみたいじゃない? って言ったら、似たようなものだって。……フィールって意外と適当? カタブツ感あったような……あれぇ?
着替えだけなので準備はすぐに終わってしまった。
「チサト、提案があるのだが」
「提案?」
「この家にバスタブを置こうかと……」
「バスタブ! 欲しい! 肩まで浸かれるのが良い!」
「分かった。2人で浸かろう」
「ふっ……」
2人で浸かる、って事は……後ろから抱っこで……ぴったりくっついて、とか!?
「顔が赤いよ?」
「だっ……だって……想像しちゃって……」
「明日は1日中馬車だから、手加減するからね?」
「ふゃんっ!」
恥ずかしい想像しちゃった上に耳元で囁かれて身体の奥がきゅうんとしちゃうぅ……快楽に流されるダメなおれがいる……
朝です!
良い天気です! 良い朝でもあります!
いつの間に着せてもらったのか分からないけど、すべすべの手触りのシャツを着て寝ていました。フィールはトランクスだけ履いてる。……ふんどしじゃなかった。
成長する子供はサイズフリーのふんどしで、大人になるとトランクス型の下着になるんだって。
トランクスの方がいいけど、成長が止まった事になると思うと踏ん切りがつかない。まだ成長期は終わってないはずだし! ウエストは紐だから少し大きめでも構わないだろうけど。
やっぱり今度、買ってこよう!
朝食を食べて支度を終えたら領主の屋敷に行く。
フィールは護衛なので馬で、おれは料理人さん達と馬車で。良い人たちばかりでみんなで可愛がってくれるけど、16歳って微妙に信じてくれてない気もする。
「本当に16歳ですよ?」
「分かったよ。栄養が足りなかったんだろう? 今はたくさん食べられてるかい?」
「ちゃんとお腹いっぱい食べてます」
「ならこれから大きくなれるね」
子供の頃は偏食だったけど好き嫌い克服したし、食べさせてもらってないと思われるとじーちゃんばーちゃんに申し訳ない。頑張るぞ!
「少ない! そんなだから大きくならないんだ」
「普通です! これ以上食べたら吐きます」
「普通……?」
「むしろ多めに食べました!」
料理人さんとのやり取り。
この人の言う「たくさん」は無理だった。そう言えば孤児院のみんなもおれより食べるっけ。
「料理長、職業柄たくさん食べさせたいんだろうが無理をさせてはいけないよ」
「旦那様!」
領主様は先に食べ終えて様子を見に来たそうだ。あ、フィール。
「チサト、馬車はどうだ?」
「うん、快適だよ。みんな優しいし」
「チサトくん、デーメル隊長の馬に乗っても良いんだよ」
護衛の馬に足手まといが乗っちゃダメだろうと思うけど、本当は護衛がいらないくらい安全な道なのか。ツィーゲ伯爵がフィールを気に入ってるからお見舞いに連れて来たんだって。なら乗せてもらっても良いかな?
「わっ!」
「ほら、リタもチサトを乗せたいって言ってるよ」
前にも乗せてくれた馬のリタがおれの袖を優しく噛んで引っ張る。かわいい!!
「リタ! おれの事覚えててくれたの? わぁ! ちょっ、くすぐったいって!」
お腹のあたりに鼻面を擦り付けてくる。
耳の付け根を掻いてやると、いたずらをやめてうっとりと目を閉じた。
「それでは、出発する!」
領主様の一声で迅速にそれぞれの持ち場に付き、おれはフィールの前に乗せてもらった。街道の左右は穀倉地帯で麦らしき作物が青々と茂っていた。
「フィール、あれは何?」
「三日月羊だ」
確かに白っぽくてモコモコした生き物が畑の中に点々といる。ツノがおでこに1本で、反っている。ツノの形から三日月羊の名前がついたようだ。
「あの茶色いのは?」
「牛」
そのままだった。ツノは水牛のように大きくて尖ってる。牛乳を絞ってバターやチーズを作ったり、捌いて肉にする。今日の昼食のローストビーフサンドもあの牛の肉だった。
こちらの家畜は基本放し飼いで町の近くには豚や鶏がいるそうだ。馬車の中からは見られなかったから、やっぱり馬は楽しい。リタ、ありがとう!!
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