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情けない自分
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ーー デーメルside ーー
チサトへの気持ちの変化を自覚したものの、昨夜の事をどう伝えたらいいのか悩まずにはいられない。だが……正直に話すべきなのか。結局はっきり決められないまま仕事をしていたら迷惑だから早く帰れと追い払われた。迷惑……?
ギクシャクするかと心配した孤児院からの帰り道はいつも通りで、初めての二日酔いの辛さを語りつつ育ててくれた祖父が酒を飲んでは陽気に踊っていたと笑っていた。
夕飯を孤児院で作って持ち帰り、私と食べると言う。
遅くなる事もあるからありがたい。
そして夕食とシャワーの後、話をしたいとチサトに伝えた。
「まず……私はチサトを初めて見た時から庇護欲を掻き立てられ、保護者になろうと考えた。可愛くて一生懸命で真面目で、一緒にいてとても居心地が良いからだ。年の離れた弟として、家族として穏やかに暮らしたいと思った。だが……」
言い淀んだ私を見てちさとがいまにも泣きそうな顔になった。
「だが、って…… もう家族になるのは嫌になった……?」
「そうじゃない! 泣かないでくれ! 私は……チサトと……結婚をしたいと……して欲しいと……考えが変わったんだ」
勢いで本音を語ってしまった。いや、隠すつもりもないので構わないが、チサトが目をまん丸にして驚いている。そして……昨日、何があったのか、質問された。
……上手い嘘などつけないから正直に話した。
明らかに酔って膝に乗った事、私の体を弄り自分の体も弄っていたずらを始めた事。そして実験したいと言い出し、私を押し倒してペニスを舐めた事。私が理性を飛ばしてチサトに不埒なことをしてしまった事。精液を飲ませてしまった事。
そして一日中考えて、私はチサトと結婚したかったのだと気づいた事。
「……体の関係のためにこんなこと言ってるんじゃないぞ!」
「その……ぼく、そういう意味で誰かを好きになった事がなくて……ちゃんとしたキスも……した事なかったのに、そんな事を……ぼくは……」
ゆっくり考えさせて欲しいと言われたので、もちろんだと答えた。
「……この世界にはジョセイがいないんですね」
「ジョセイ?」
チサトからジョセイと言う者について話を聞いた。
後孔とは別に子宮にだけ繋がる生殖のための穴があるなんて……ペニスがないなんて……なんと不思議な。
だがそれよりも、チサトは向こうの人間でジョセイではない。
受け入れる体になれないのだろうか? ……いや、確かに狭かったが快楽はしっかり受け取っていた。子供はできなくてもいいが、チサトを繋ぎ止めるために快楽は有効だろうか。
チサトにこちらの世界での生殖について説明した。
「でーめうー! おーよ。◎△%$☆仝*」
「チサト、おはよう」
小さな庭で朝の鍛錬に汗を流す私に話しかける喋れなくなっているチサトはやはり可愛らしい。
……雷の時に喋れなくなったが、あの時はチサトから口づけされて我を忘れてしまって申し訳ない事をした。チサトといると私は幸せだがチサトはどうなのだろう? 私に不埒な事をされ、知りたくなかった自分の1面を見せつけられて……
嫌われるかも知れない。
可能性を考えただけで胸が締め付けられるようだ。
「でーめう?」
私の顔を心配そうに覗き込むチサトの顎に手を添え、仰向かせて触れるだけの優しい口づけを数回繰り返し、緩く開いた口に舌を入れて口内をくすぐった。
「で……める、さ…… 朝ごはん…… お仕事……」
「喋れるようになったね」
「喋るためのちゅーはこんなにしっかりしなくても良いんです!」
「すまない……」
「ご飯食べましょう!」
私の理性はなぜこんなに役に立たないのか。
人付き合いは苦手だとオルトに甘えて来たツケが回って来たのか。チサトが作ってくれたせっかくの朝食の味がよく分からなくて、気持ちが沈んでいった。
「もう! デーメルさん大人なんですからそんな泣きそうな顔しないで下さい!」
「そんな顔をしているか?」
「してます。 ……そんなにちゅーしたいんですか?」
「……チサトが可愛くて理性が言う事を聞かないんだ。それでつい、余計な事をして……チサトに嫌われて……」
「嫌ってません!」
チサトは情けない私を励まし、背後から抱きついて来た。
「お仕事行きますよ」
「……私も抱きしめたいのだが」
「ダメだからこれで我慢して下さい」
「ふふっ……そうか。確かにこれなら私からいたずらできなくて、理性が飛ぶ事もないな。愛しているよ」
「ちょっ!! 恥ずかしいこと言わないで下さい!」
「ダメか」
「もう! 置いて行きます!!」
そうは言っても歩く速度が違うのですぐに追いついてしまった。チサトはうつむき加減で必死に足を運んでいるので追い越さないよう、速度を緩める。耳が赤いのは必死に歩いているからだろうか?
それにしても本音をこぼしただけで怒らせてしまうのか。
愛想を尽かされないよう、加減を学ばなくてはならないな。
チサトへの気持ちの変化を自覚したものの、昨夜の事をどう伝えたらいいのか悩まずにはいられない。だが……正直に話すべきなのか。結局はっきり決められないまま仕事をしていたら迷惑だから早く帰れと追い払われた。迷惑……?
ギクシャクするかと心配した孤児院からの帰り道はいつも通りで、初めての二日酔いの辛さを語りつつ育ててくれた祖父が酒を飲んでは陽気に踊っていたと笑っていた。
夕飯を孤児院で作って持ち帰り、私と食べると言う。
遅くなる事もあるからありがたい。
そして夕食とシャワーの後、話をしたいとチサトに伝えた。
「まず……私はチサトを初めて見た時から庇護欲を掻き立てられ、保護者になろうと考えた。可愛くて一生懸命で真面目で、一緒にいてとても居心地が良いからだ。年の離れた弟として、家族として穏やかに暮らしたいと思った。だが……」
言い淀んだ私を見てちさとがいまにも泣きそうな顔になった。
「だが、って…… もう家族になるのは嫌になった……?」
「そうじゃない! 泣かないでくれ! 私は……チサトと……結婚をしたいと……して欲しいと……考えが変わったんだ」
勢いで本音を語ってしまった。いや、隠すつもりもないので構わないが、チサトが目をまん丸にして驚いている。そして……昨日、何があったのか、質問された。
……上手い嘘などつけないから正直に話した。
明らかに酔って膝に乗った事、私の体を弄り自分の体も弄っていたずらを始めた事。そして実験したいと言い出し、私を押し倒してペニスを舐めた事。私が理性を飛ばしてチサトに不埒なことをしてしまった事。精液を飲ませてしまった事。
そして一日中考えて、私はチサトと結婚したかったのだと気づいた事。
「……体の関係のためにこんなこと言ってるんじゃないぞ!」
「その……ぼく、そういう意味で誰かを好きになった事がなくて……ちゃんとしたキスも……した事なかったのに、そんな事を……ぼくは……」
ゆっくり考えさせて欲しいと言われたので、もちろんだと答えた。
「……この世界にはジョセイがいないんですね」
「ジョセイ?」
チサトからジョセイと言う者について話を聞いた。
後孔とは別に子宮にだけ繋がる生殖のための穴があるなんて……ペニスがないなんて……なんと不思議な。
だがそれよりも、チサトは向こうの人間でジョセイではない。
受け入れる体になれないのだろうか? ……いや、確かに狭かったが快楽はしっかり受け取っていた。子供はできなくてもいいが、チサトを繋ぎ止めるために快楽は有効だろうか。
チサトにこちらの世界での生殖について説明した。
「でーめうー! おーよ。◎△%$☆仝*」
「チサト、おはよう」
小さな庭で朝の鍛錬に汗を流す私に話しかける喋れなくなっているチサトはやはり可愛らしい。
……雷の時に喋れなくなったが、あの時はチサトから口づけされて我を忘れてしまって申し訳ない事をした。チサトといると私は幸せだがチサトはどうなのだろう? 私に不埒な事をされ、知りたくなかった自分の1面を見せつけられて……
嫌われるかも知れない。
可能性を考えただけで胸が締め付けられるようだ。
「でーめう?」
私の顔を心配そうに覗き込むチサトの顎に手を添え、仰向かせて触れるだけの優しい口づけを数回繰り返し、緩く開いた口に舌を入れて口内をくすぐった。
「で……める、さ…… 朝ごはん…… お仕事……」
「喋れるようになったね」
「喋るためのちゅーはこんなにしっかりしなくても良いんです!」
「すまない……」
「ご飯食べましょう!」
私の理性はなぜこんなに役に立たないのか。
人付き合いは苦手だとオルトに甘えて来たツケが回って来たのか。チサトが作ってくれたせっかくの朝食の味がよく分からなくて、気持ちが沈んでいった。
「もう! デーメルさん大人なんですからそんな泣きそうな顔しないで下さい!」
「そんな顔をしているか?」
「してます。 ……そんなにちゅーしたいんですか?」
「……チサトが可愛くて理性が言う事を聞かないんだ。それでつい、余計な事をして……チサトに嫌われて……」
「嫌ってません!」
チサトは情けない私を励まし、背後から抱きついて来た。
「お仕事行きますよ」
「……私も抱きしめたいのだが」
「ダメだからこれで我慢して下さい」
「ふふっ……そうか。確かにこれなら私からいたずらできなくて、理性が飛ぶ事もないな。愛しているよ」
「ちょっ!! 恥ずかしいこと言わないで下さい!」
「ダメか」
「もう! 置いて行きます!!」
そうは言っても歩く速度が違うのですぐに追いついてしまった。チサトはうつむき加減で必死に足を運んでいるので追い越さないよう、速度を緩める。耳が赤いのは必死に歩いているからだろうか?
それにしても本音をこぼしただけで怒らせてしまうのか。
愛想を尽かされないよう、加減を学ばなくてはならないな。
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