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9 復活を果たすエルベス大公家とギュンター

ディンダーデンとギュンター、交代準備

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「ディンダーデン…ダメ…。
そんなコトしちゃ…。
感じすぎて…頭がおかしくなる…」

が、ディンダーデンはお構いなし。
「(うつ伏せで腰を垂直近く迄引き上げ…ほぼ真上から突き刺す体位が、半端なく感じるみたいだな…)
もっと、おかしくなっていいから…。
存分に、感じてろ」

「あんっ!
ああんっ!」
「(…随分と、可愛い声で鳴くようになった。
…俺の影響か、アイリスのかが分からないのが、不満だ)」

ディンダーデンが好きなだけサスベスの体を弄び、珍しく満腹状態になった時。
サスベスは気絶して、寝台に沈んでいた。

横の椅子にかけ、アイリスからの手紙を受け取る。

“オーガスタスより、あなたに顔を出して欲しい、必須軍事訓練があるとの事。
代理に、すっかり体調の整った、ギュンターを差し向けます。
けれどギュンターはサスベスにとって、暗殺指令を出した相手。
その部分は伏せて、こっそりギュンターの事を持ち上げてサスベスに、吹き込んでください”

「(…必須軍事訓練…ってのは、命令聞かないはみ出し者の騎士らを、脅して軍務に尽かせろ。
って俺への、命令の事じゃないか………)」

どう考えても、今や愛らしくなったサスベスと存分に楽しむ方が、むさい男ら脅すより、楽しい。

それにオーガスタスの命令を無視したら…。
あのスカした赤毛の左将軍補佐を、わざわざここまで足を運ばせた上で、喧嘩も出来る…。

「(あの巨体を、一度は殴ってみたかった…。
ギュンターですら
“出来なかった”
とほざいてる、無敵の男だからな…)」

わくわくした。
けれど、策士のアイリスが代わりに、暗殺の的となったギュンターを代理で寄越すと言ってる。

「(よりによって、ギュンター?
あの馬鹿笑顔、絶対何か、企んでやがるな)」

ディンダーデンはこの手紙にも、ばっくれよう。
と決意した。

しかし。
ギュンターの、偽葬式を出すしか案の無かった所へ…。
結局、一番効果の高い方法を、見つけ出して実行に移したのも、アイリス…。

「(…ヤツがここに来てから…病み上がりでまだ足のフラ付くギュンターが出歩く際、護衛したが。
誰も殺しに来なくて、拍子抜けしたもんな………)」

「………………………………………」

ディンダーデンは、アイリスは実績ある成功者。
と認めるのが癪に障った。

ので、アイリスを持ち上げるのは止め、ギュンターが来るまで、思い切り好きなだけがんがんサスベスを刺し貫いて、楽しんだ。

正直、自分の体力に付いてこられる相手は、サスベスだけだろう。
とすら、思えたから、今やサスベスはディンダーデンにとっても、大切な相手。

“明日の正午近くに訪ねる”
と、ギュンターからの使者が言付けを携え、訪問した後、ディンダーデンはサスベスに、言い聞かせた。

「軍務で一時、ここを離れる。
だが…時間があれば再びここに…。
お前に会いに来る。
約束する」

けれどサスベスは、今迄ここまで、くたくたにさせて精液を枯れる程搾り取る男には、会った事が無かったので、ほぼ意識朦朧としたまま、頷いた。








がつがつがつがつ…!

ローフィスとディングレーは、平常に戻ったギュンターが、体力を戻そうと凄い勢いで食べ物を口に掻き込む光景に、呆れた。

給仕がもう、三度も走って、食べ物をギュンターのテーブルに運んでると言うのに。
あっ。
という間に、皿は空。

給仕は三人に増え、更に五人の給仕が行き来した頃。
一人が叫んだ。

「調理が間に合わないと!
コックに怒鳴られました!」

ディングレーが、即座に叫ぶ。
「別に、高級料理じゃ無くていい!
火さえ、通ってれば!
まかないでもなんでも、食える物を運べ!」

給仕は決死の表情で、頷いた。

がつがつがつ…!

食べ続けるギュンターを見つつ、ローフィスは使者から羊皮紙を受け取り、眺め…。
そして、ローランデを抱きたい一心で元気取り戻そうとしてるギュンターを見、ため息を吐きつつも、ディングレーに囁く。

「ディンダーデンと連絡がついて、こちらに戻る事を了承したそうだ」

ディングレーが頷くのを見た後、ローフィスはギュンターに言い放つ。
「ギュンター。
アイリスから至急、お前に暗殺指令出した、銀髪の頭領の元へ。
コマしに行けと連絡が来た」

ぶっっっ!

ディングレーはギュンターが、口中頬張った食べ物を、一気に吹くのを無言で見た。

が、ローフィスは構わず続ける。
「ディンダーデンが既に行ってる。
だが軍務でこっちに戻る必要があって、代わりにお前に行けと。
ともかく、ゼフィスの事を完全に忘れさせないと。
再びゼフィスが取って戻り、お前の暗殺指令が再開されるから。
お前自身が阻止しろと。
脅してある」

ギュンターは凄まじい目で、ローフィスが手にした、羊皮紙を睨んだ。

のそり…。
とオーガスタスが繋ぎ部屋から姿を現す。



「…ディンダーデンは、ヤツにしか出来ない、軍務がある。
戻せと命じたのは、俺だ。
文句は俺が聞く。
が。
お前が行かなかったら、ゼフィスが戻って暗殺指令は再開。
俺は再び、お前の偽葬式の、手配を考えなくちゃならん」

ローフィスは羊皮紙を手にしたまま、オーガスタスを見上げた。
「俺がこれ、読み上げるまで。
登場を、控えたな?」

オーガスタスは、肩をすくめる。
「俺の口からの第一報は、出来れば避けたい。
言ってきてるのは、アイリスだしな」

ギュンターはオーガスタスの登場で、顔を下げた。

「お前が出てきたら。
俺は聞くしか無いと、計算ずくの。
アイリスの、謀(はかりごと)か?」

オーガスタスが、おもむろに口開く。
「…ディンダーデンを戻せとアイリスに、俺が要請したのは事実だ」

ギュンターは俯く。

そして、長ーーーーーい、沈黙。

「ローランデを抱くことを思い浮かべて、食べまくってたのに。
相手が見も知らぬ、自分を暗殺しようとした頭領にすり替わって、思考停止してるみたいだぞ?」

ディングレーが、感想を述べた所で。
ギュンターが、顔を上げる。

「…ディンダーデンが。
頭領を寝室に閉じ込めてるんだな?
って事は…」

オーガスタスが、頷く。
「暗殺指令も、現在は停止してる」

それを聞いた途端。
ギュンターが椅子を引き、即座に立ち上がる。

がたがた、がたんっ!!!

「…教練(王立騎士養成学校)に、殴り込みかける気か?!」
ローフィスの問いに無言で、ギュンターは戸口に駆け寄る。

が。
ローフィスがその背に、怒鳴りつける。
「暗殺指令は止まっても!
ロスフォール大公の密偵はまだ、周囲をウロついてる!
今お前がローランデの元に行ったら!
ローランデに迷惑かかる可能性、めちゃくちゃ大だぞ!!!」

ピタ…!と。
足を前に踏み出し、前傾姿勢のまま、ギュンターは固まった。

「……………凄い、止まり方…」

ディングレーが呟くと、ようやくギュンターは浮いた片足、床に置き、ローフィスを悔しげに見つめる。

「……………銀髪の一族の地まで。
護衛が必要だな」
オーガスタスの意見に、ディングレーも同意する。
「ヤツ一人で馬で駆けさせると。
きっと行き先が、いつの間にかローランデのとこに、すり替わってる可能性、大だな」

ローフィスが、大きくため息を吐く。
「…いいから、戻って食え!
銀の影の一族の地は、辺境。
フラついてて、行ける場所じゃないし、第一!
ゼフィスを思い出させないよう、精力絶倫の若き頭領を、寝台に沈めなきゃ成らない、体力勝負だぞ?!!!!」

ギュンターは、けどまだ。
その場所で、項垂れて突っ立ち。
拳を握り込み、ぶるぶる震わせている。

「…………………分かった。
俺が今夜、忍んで行って、ローランデに懇願し、ここに来て貰う」

オーガスタスが、そう言った途端。
ギュンターは顔を上げて、オーガスタスを凝視する。
その場限りの、嘘かどうか、探るように。

オーガスタスは、とうとう怒鳴った。
「本当に、実行する!
テーブルに戻れ!
給仕が山盛りの皿を両手に、困ってるだろう?!」

ギュンターは五人の給仕達が、両手に皿を持ち、立ちすくむ姿を見、首を振って“テーブルに置け”と合図するなり、椅子に座り、フォークを取り上げた。

がつがつがつがつ…。

再び、猛烈に掻き込むギュンターの横で。
オーガスタスはローフィスとディングレーに、無言で暫く、見つめられた。

「…言いたい事が、あったら言え!
黙って顔、見てるな!!!」

とうとうオーガスタスが吠えると、ディングレーとローフィス、二人同時に。
ため息交じりに首を横に、振りまくられた。
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