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13 勝敗の行方

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 朝食の席で、デルアンネはローランデが随分きつい表情をしているのに気づいた。
が、ギュンターが先に彼女に、告げる。

「用が済んだので、午後にはここを出る」

ローランデは全く何気なくそう言う彼を、目をまん丸にして凝視した。
ギュンターはいい加減にしろ。とたしなめるように、ローランデにつぶやく。

「平気な顔が、出来ないのか?」
「どうして、出来る!」

ローランデに怒鳴られ、ギュンターは肩を、すくめた。

その、たっぷりギュンターに愛された後のローランデの、艶と色香を増す姿をデルアンネが見つめていると、気づいたローランデは俯いて頬を、染める。

「そんなんだから、舐められるんだ」
ギュンターのつぶやきに、デルアンネはつい皮肉った。

「貴方の面の皮が、ぶ厚いのよ!」





 だがお別れだからと、ローランデが顔を輝かせ、夢中でマリーエルをあやしている時だった。

まるで赤ん坊に、ローランデを取られたように気抜けして見つめるギュンターについ、デルアンネは腕組みして近寄ると嫌味を言う。

「…マリーエルに、負けてるようね?」

ギュンターが見ると、彼女はそれは可愛らしく、魅力的に、意地悪く微笑った。

ギュンターは素っ気なくつぶやく。
「お前もな」

デルアンネの笑顔が、一気に怒りに変わった。



 二人が馬に乗る間ずっと、デルアンネは喚き続けてた。

「あんたって、最悪に嫌な奴!
…ムカついて、たまらない!

今度顔を見せたら、絶対に報復してやる!
解った?覚えときなさいよ!

私が、やると言ったら絶対やるんだからね!」

ローランデがつい、今までしとやかに見せてきた彼女の本性に言葉を無くす。

ギュンターは思い切り、笑った。
デルアンネは、ぶすったれた。

「………どうしてそこで、笑うのよ」
「ライバルに対しては、最高の誉め言葉だな!」

デルアンネは更に腹が立ち、とうとう怒鳴った。

「冗談じゃないわ!自分が勝ったと、思ってるの?!
覚えときなさい!
あんたなんかに絶対!
ローランデは渡さないから!!!」

ローランデは隣の馬上で艶やかに笑うギュンターを、つい、見た。
ギュンターは馬に拍車を掛けると振り向き叫ぶ。

「…俺の隣にローランデを連れての凱旋だ!
これを勝ったと言わないんなら、何を勝ったって言うんだ?!」

拍車をかけて馬を促しながら、ローランデはそう言うギュンターを、頬を染め見つめた。

デルアンネは思い切り、癪に触って金切り声を上げる。

「マリーエルには、負けてる癖に………!」


…がその叫び声は駆け出す二人の馬の駒音で掻き消され、彼らの耳には届かなかった………。



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