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待ち遠しい週末
しおりを挟む講習が終わると、シェイルはローフィスに振り向く。
ローフィスは自分のグループの一・二年達に、剣を終うよう指示を出していた。
一・二年達が練習用の剣を剣立てに収め、それを用具室へと運んで行く姿を、ローフィスが見送っていたから、シェイルはローフィスの側へ寄る。
「ローフィス、僕…」
ローフィスが振り向き、一瞬、どきっ!とした表情を見せ…けれど背を向ける。
「どうした?」
「…後で宿舎に、行ってもいい?」
ローフィスは、目を見開いて振り向く。
「三年宿舎の二階には!
グーデンがいるんだぞ?!」
シェイルは項垂れた。
「…じゃ…二人きりで、会えないの?」
「週末まで待て」
シェイルは顔を下げ、こくん。
と頷いた。
オーガスタスはシェイルに背を向けたままのローフィスの、様子に気づいてた。
そして、自分の所に来て
「もう解散なんだよね?」
と聞くシェイルを見る。
色香を漂わせていたから…オーガスタスは内心、思った。
「(ローフィスのヤツ、心がぐらぐら揺れ、動揺しまくっただろうな…)」
だが、笑顔で聞いた。
「…なんだ、ローフィスに“抱いて"とかって、迫ってたのか?」
冗談のつもりで。
が、直ぐ背後に居たディングレーは
「笑えないぜ」
そう、こそっと囁いて通り過ぎる。
シェイルは頬を染めて俯くから、オーガスタスは焦った。
つい、泣き言を言う。
「冗談なんだが…。
ここは、否定してくれないと」
シェイルは気づいて、顔を上げる。
「僕てっきり…オーガスタスはローフィスの親友だから。
それで事情が、分かっちゃうのかって、思った」
「………………………………」
オーガスタスは自分から話を振って、墓穴を掘った。
と気づき
「(二度とこの話題は、迂闊に口にすまい)」
と密かに、決意した。
シェイルはじりじりして、週末を待った。
今日が終わればあと、たったの一日だったけど、長かった。
シェイルは夕食後、三年宿舎か四年宿舎に出向こうか。
とまで思ったけど、大人しく一年宿舎で夕食を取り、ローランデの言葉に甘えて、彼の私室で浴室を借りた。
そのちょっと前、ヤッケルが共同浴場に出かける。
と言ってたから
「一緒に行く!」
と言ったけど
「だけどお前、ディアヴォロスに“愛の誓い”立てられただろ?
みんな興味本位でお前の裸、きっとジロジロ見るぜ?」
と言われ…ヤッケルの勧めで、ローランデの私室を訪れ、頼んでみた。
ローランデはにこやかに笑って
「直ぐ浸かれるから」
と扉を開けて、中へ招き入れてくれた。
ローランデの浴室に並ぶ、体の汚れ落としも兼ねる香料は、どれも淡い花の香りで、お湯に入れると仄かに上品な香りがして、シェイルはくつろいだ。
でも…。
今日、抱きついたローフィスの背や、熱く抱きしめられたディアヴォロスの胸元。
思い返すと…股間が反応してしまって、シェイルは恥ずかしげに頬を染めると、そっと手で触れる。
自分で…慰めた事なんて、一度も無かったけど…。
でも、どうしても挿入時、のし掛かるローフィスに見つめられた熱い時や、ディアヴォロスに抱え上げられて頬を寄せられ、突かれた時の事を思い起こすとつい、身がくねる。
「ん…っ…」
気づくと、手で自身の性器に触れて、しごき、慰めながら…放ってた。
シェイルは慌てて汚れた湯面をしゃくで掬い、床に流した。
「(…恥ずかしい…。
よりによって、ローランデの浴室で…。
あ、でも自室だと、ヤッケルが横に居たっけ…)」
シェイルは湯から出ると、布で体を拭き、衣服を着けた。
扉を開けると、ローランデは微笑んで
「お茶とクッキーがあるけど」
と言うので、シェイルは恥ずかしさも忘れ、ローランデの召使いに出された、上品な味のお菓子を堪能した。
けれど…。
ノックの音がして、出ようとした召使いにローランデは手で差し止め、自分が扉に歩み寄り、扉を開ける。
ローランデが目を見開き、下がって一礼するから…ソファにいたシェイルは
“誰?”
と思ったけど、室内に入って来た長身で黒髪の人物が…ディアヴォロスだと分かると、びっくりして彼を見つめ…。
そして気づき、咄嗟顔を下げた。
「(ディアヴォロスにはワーキュラスが居るから…僕の事、分かったんだ…)」
彼を思い浮かべて自慰をした事がバレてると知って、シェイルは頬を真っ赤に染めた。
「シェイルに用があって、彼を迎えに来た」
ローランデは、頷いてシェイルに振り向く。
シェイルは目前に、ディアヴォロスが立ち…手を差し伸べるのを、見た。
それで、きっと頬が凄く熱いから、真っ赤になってる。
と分かって、顔を下げたまま、その手を取って立ち上がる。
ディアヴォロスと部屋を出る時、振り向いてローランデに
「ありがとう」
そう告げると、ローランデは優しく微笑み返した。
シェイルは横のディアヴォロスを見る。
改めて見ると、とても背が高くて…握られた手は熱い…。
ディアヴォロスは歩を止めぬまま先へ行くから、シェイルも並んで横を歩いた。
大貴族用の食堂を通り抜ける際、フィンスがたまたまいて、ディアヴォロスを見て、もの凄く驚いてて…。
シェイルは顔を下げたまま、ディアヴォロスと一緒にフィンスの横を、無言で通り過ぎた。
階段を降りるけど、食堂はガラン…としていて、みんな自室へ戻ってる。
と分かり、シェイルはほっとした。
一年宿舎を出ると、突然ディアヴォロスに抱き上げられる。
彼の整いきった美しい顔が間近で、シェイルは思わず彼の首に腕を回し、抱きついた。
「…私が動くと、とても目立つ。
だからもし、君が私を望むなら。
躊躇せず、私の部屋に来てくれると嬉しい」
ディアヴォロスに低く響く、男らしくも優しい声音でそう囁かれ、シェイルはやっぱり…彼を欲したことがバレてる。
そう改めて分かって、頬を真っ赤に染めて、俯いた。
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