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グーデン一味を蹴り倒すギュンター

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 鍛錬場のザワ付きは収まらず、講師はとうとう、補習の終了を叫ぶ。

ヤッケルとフィンスは顔を見合わせ、シェイルの元へ飛んで行く。

デルアンダーは振り向くと、監督生らに叫ぶ。
「オルスリード!
モーリアス!
アスランに付け!
シャウネス!ラッセンス!」

シャウネスとラッセンスはその先を聞く前に、既にハウリィの横へと駆け寄る。

デルアンダーはテスアッソンと合流すると、小声で告げる。
「私はアスランに付く」
テスアッソンは素早く言葉を返す。
「では私はハウリィに。
ディングレー殿の留守に二人を奪われたら、目も当てられない!」
デルアンダーもその言葉に頷くと、二人は一気に背を向け合い、アスランとハウリィの元へ、それぞれ駆け出した。

ヤッケルは三年大貴族らがバタ付く様子を伺い、シェイルに囁く。
「ラナーン、何だって?」
シェイルは首を横に振る。
「分かってるのは、ラナーンがギュンターに…言い寄った…みたいな感じ?」

ヤッケルとフィンスは顔を見合わせる。
「監督生が、バタつくハズだ」
フィンスの言葉に、ヤッケルも相づち打つ。
「…グーデン第一のお気に入りのラナーンが、ギュンターに言い寄るって事は…。
グーデンはラナーンに飽きて、アスラン達の奪還に、めちゃくちゃマジになってる…って事だろ?」
その問いに、フィンスも頷く。
二人は、アスランを取り囲む、物々しい三年大貴族らと。
戸惑うハウリィの周囲に立って、護りを固める三年大貴族らの引き締まった顔付を、こっそり覗った。

終了と共に、グーデン配下の一・二年は真っ先に扉目がけ駆け出し、場内から姿を消す。
一年大貴族…ディオネルデス、アッサリア、フィフィルースらはバタ付く中、マレーがここに居ず、巻き込まれずにほっとし、逆にスフォルツァの方は、デルアンダー始めオルスリードとモーリアスがアスランを取り囲む様を見、表情を引き締める。

シュルツはグループ生らに、剣を剣立てに終う指示を出しつつ、ギュンターがふらり…と、準備室の扉から、出て行こうとする姿を見つけ、ぎょっ!とし、講師に振り向く。

講師は気づくと、姿が準備室の外に通じる扉へ、消えて行くギュンターに怒鳴る。
「オーガスタスを、待て!!!」

けれどギュンターは振り向かず、そのまま扉を開けて、出て行く。

講師が駆け出す前に、近いシュルツが先に準備室に駆け出す。
が、ハタと気づき、振り向くと
「シェイル!
皆に解散して良いと…!」
と叫ぶ。
シェイルはシュルツに
「後は見るから!」
と叫び返し、横のヤッケルとフィンスを見る。

二人はため息交じりに、ギュンター班の一年らの背を、扉の方へと押して言った。
「宿舎に戻れ」


「ギュンター!」
外へと通じる扉をシュルツが開けた時。
薄暗い屋外で、ギュンターの金髪が大きく揺れるのを、シュルツは見た。

次にギュンターは思い切り上半身を屈めたかと思うと…正面に立つ男がギュンターの回し蹴りを喰らい、後ろにふっ飛んで行く。

ダンッ!!!

直ぐ横に居た男が、上半身起こすギュンターの顔目がけ拳を振る。
びゅん!と風切る轟音。
更に暗がりの中、影のように浮かぶそのデカさは、間違いなく四年…!

けれどギュンターは、殴られたように顔を横に振っていたけど。
拳が通り過ぎると直ぐ顔を戻し、拳を振り返してた。

がっっっっ!!!

ギュンターの拳が当たったかに見えた。
が、顔を掠り頬に掠り傷作っただけで、相手はギラリと目を剥く。
直ぐ、豪速の豪腕が、ギュンターの顔目がけ突き刺さろうとする…!

シュルツは駆け出そうとした。
が、ギュンターは一瞬で身を下に屈め、下から四年の腹へ、拳を振り入れる。

がっっっ!

四年は、拳振りきりながらも身を捻り、下からのギュンターの拳を避ける。
当たりはしたが、急所をハズされ効かず、ギュンターは軽く舌打った。

四年はいきなり正面に居るギュンターに、足を持ち上げ、蹴りつける。
ギュンターは直ぐ横に体を捻りスカし、避けた。

シュルツはギュンターのカンの良さと俊敏さに、呆けて感心しきった。

真正面からあんなデカくて怖い四年に、突然蹴りつけられたら。
オタついて絶対、喰らい吹っ飛ぶ。
…自分なら。

なのにギュンターは少しも慌てず、横に身を捻る最小の動きで、簡単に避けている…。

けれど四年は蹴りをかわされ、完全に頭に血が上ったように、今度はギュンターの腹目がけ、拳を振り入れる。

しゅっっっ!!!

見てるだけで…太い腕から繰り出される拳の威力は恐怖で、一発喰らえばそれだけで、動けないほどの痛みで崩れ落ちる事、確実。

なのにギュンターは、突然一歩下がるとくるりと身を回し、重量級の拳を軽く避けたのち四年の正面に向き合うと、上半身右にさっ!!!と倒し、同時に左足持ち上げ、思いっきり四年の胴を蹴りつけた。

がっっっ!!!

相手は後ろにふっ飛ぶ。

シュルツはあまりに鮮やかな立ち回りに、呆けて見惚れた。

上半身倒してたギュンターが身を起こすと、金の髪がはらり…と額を滑る。
その美貌は相変わらず冴えていたけど、不屈の強さが見て取れて、シュルツは改めてギュンターに見惚れた。

けれどドタドタと足音が聞こえ、シュルツはギュンター正面の、ずっと向こうの暗がりから。
ギュンターにふっ飛ばされた四年二人より、更にデカいダランドステが。
もう二人の四年と、三年数名を引き連れ、ギュンターの正面に立ち塞がるのを見た。

「…!!!」
シュルツは足がモタ付くのを感じた。
戻って助けを呼ぼうと、背後に駆け出す動作と。
ギュンターの助っ人に入ろうと、前へと進む動作を同時にしようとし…。
足が、絡まったのだ。

ギュンターは正面に立つダランドステの竜のようにゴツい顔を見、わらった。
「…どうしても俺を、殴りたいか…!」

シュルツは嗤うギュンターの紫の瞳が、暗がりに光って見え、ぞくりと背筋が冷えるのを感じた。

獲物を狙う獣に、見えたから。

ダランドステは一瞬、甘い美貌のチャラけた下級だと思っていたギュンターが、オーガスタスのような…人で在らざる獣性を見せるのに、目を見開く。

その時ギュンターは…消したかった。
一旦聞こえ始めたら、消えない心の中を吹き抜ける吹雪の音。
雪を巻き込み、渦巻き荒れ狂う轟音。
冷たく…虚しく…悲しく…寂しい。

拒絶したかった。
そんなものは自分に無いと!
自分に…知らしめたかった。

気づいたらダランドステに、突っ込んで行った。
ダランドステが突進して来るギュンター目がけ、拳を振る。
ギュンターは一瞬で歩を止め、身を下に屈める。
思いっきり、ダランドステのスネを蹴りつけた。

どっっっ!!!

ダランドステは左足蹴られ、グラつくが耐えようと思い…けれどあまりの激しい勢いで蹴られ、とうとうバランス崩し…草地に転がった。

どっすん!!!

ダランドステは転がる自分が、信じられなかった。
「…てめぇ…!」
草を握りしめ、身を起こしてギュンターに振り向く。
がもうギュンターは、金の髪振って他の四年に襲いかかってた。

拳が二人同時に繰り出される。
どっちも当たるか。
それとも…。

拳を繰り出した四年は、自分の方がリーチが長いから先に届くと確信し、笑みを漏らす。
が自分の拳はギュンターの顔に突き刺さらず、ギュンターの拳が頬に、めり込んだ。

がっっっ!!!

シュルツは目を見張った。

拳を振り入れながらも相手の拳を、顔を少し横にズラし…掠るギリギリで。
ギュンターは、避けていた。
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