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グーデン一味の待ち伏せを予測し、逃げ道を案内するローランデ
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ギュンターはアスランと一緒に鍛錬場を出た途端。
横の茂みが、がさっ!と音立てるのに気づく。
一瞬身構える。
が、来る気配は無く、どうやら見張りが知らせに走ったんだと察した。
となると、三年宿舎入り口か宿舎内。
ディングレー私室に入るのを、待ち伏せてる連中が襲ってくるはず。
けれどその時、背後からふっ…といい香りがして、振り向くと濃い栗毛と淡い栗毛が交互に混じる、艶やかな髪を振ったローランデが、腕に触れて囁く。
「…こちらに」
ギュンターは問おうとした。
が、一刻を争うと感じ、一気に怪我してるアスランを抱き上げ、先を駆けるローランデの背を追う。
アスランは力強い腕で抱き上げられた時、打った背と脇腹に痛みが走った。
が、歯を食い縛って呻き声を消し、ギュンターの胸に縋り付く。
ローランデは一瞬背後に振り向くものの、しなやかな髪を振って“こちら”と言うように、宿舎前の広い道に入らず、手前の細い道に案内する。
ギュンターはアスランを気遣うことも忘れ、ローランデの後に続いた。
ローランデは並ぶ宿舎の中でも一番手前の、一年宿舎の通用口に入る。
廊下を駆け抜け、がらんとした大食堂へ入って行った。
アスランはギュンターに抱かれながらも、廊下に並ぶ扉の、本来の自室の前を、通り過ぎて思った。
「(…あそこで…最初はわくわくしたけど。
グーデンに拉致された後…怯えて泣いてた…)」
けれど力強いギュンターの走りが、過去の不安を打ち消す。
ローランデは大食堂の使用人勝手口の扉を開け、細く質素な廊下を駆け抜けて行く。
途中、角から曲がってきた召使いにぶつかりそうになると
「ごめん!」
と叫び、先へ走る。
ギュンターも、驚きながらこちらにやって来る召使いを見、横幅ギリギリの狭い廊下で体を横向け、すり抜けながら、振り向きもせずローランデの背に続く。
アスランは一瞬で向きが変わって、召使いの腕に足が少し当たり
「ごめん!」
と叫ぶと、振り向く召使いは苦笑いして頷いてた。
凄い速さでギュンターは駆けて行き、アスランはグーデンの部屋からギュンターに、やっぱりこんな風に抱き上げられて連れ出された時の、わくわく感を思い出した。
「(…緊急事態なのに…。
あの時だってグーデンに…思い出したくも無い、酷いコトされた後だったのに…。
どうしてギュンターに抱き上げられて運ばれると………。
わくわく、しちゃうんだろう?)」
扉が開き、突然明るくなる。
ローランデは出て直ぐの二年宿舎の、使用人勝手口に飛び込む。
入ると、廊下はやっぱり横幅は狭め。
二人通るのがやっと。
けれどあちこちに角があって、その先にも廊下があり、どこかの部屋に続いてるらしくて。
ギュンターは先をあちこち角を曲がりながらも、迷わず走るローランデが、エライと思った。
「(…まるで、迷路だ…)」
ギュンターは角を曲がるローランデの背を追い、角に入った途端。
もう別の角にその背を消して行くローランデの背を、見失わないよう速度を上げる。
やがて質素な木の階段を上がり、少し明るい廊下を駆け抜けた時。
突然横の扉が開いて、顔を出しかけた召使いが、目前を走って行くローランデに目を見開く。
…多分その召使いの、自室なんだろう。
ローランデは
「ごめん。
来客を案内してる!」
と叫ぶと、召使いは後続のギュンターに振り向き、慌てて室内に戻り、邪魔にならないよう、素早く扉を閉めた。
ギュンターは閉まった扉の横を抜け、ローランデが開けた扉に飛び込む。
入った途端。
その部屋が、淡い色彩と銀とで飾られた、さり気なく豪華なとても美しい部屋で。
ギュンターは思わず、目を見開いた。
ローランデの私室らしかった。
ローランデは歩を止め、笑顔で
「もう大丈夫です。アスランを下ろしても」
と言ったが。
ギュンターは一瞬何を言われたのか、分からないほど、その美しい部屋に気を取られてた。
が、無意識の内に気づき、反射的にそっ…とアスランを床に下ろす。
敷かれた絨毯ですら、銀と淡いピンクや水色、淡い緑やグレーの刺繍糸で飾られ、色味が全て抑えられ。
全部が優しい風合いを醸しだして、ギュンターはその見事さに見惚れた。
けれどあちこちの壁の飾りや、テーブルの上に置かれた置物は。
良く見ると手の込んだ彫刻の彫られた、とても豪華な物。
でもディングレー私室と違い、金ではなく銀色だったので、ちっともこれみよがしな豪華さじゃない。
「合同授業後。
ディングレー殿と一緒にここに戻り。
アスランを安全に、ディングレー殿のお部屋へ戻せます」
…凄く、身分が高いんだろう。
そう、この部屋を見れば推察出来るほどなのに。
ローランデはあくまでも、控えめ。
ローランデはギュンターに視線を送ったけど、無反応だったので。
横のアスランに微笑みかける。
「ギュンター殿が鍛錬場を出始めた時。
一年のドラーケンが窓の外の仲間に目配せし、自分も出て行こうとしてるのを、私も見たから。
多分、三年宿舎の外はグーデン一味の四年が。
中では三年平貴族らが。
待ち構えて…ギュンター殿に喧嘩を売ってる間に、君を拉致しようと予測出来たので。
だから…ここに暫く居てくれる?
私の所にも、鎮痛剤はあるし」
アスランはローランデの、匂い立つような優しげな雰囲気と、特別な感じのする高貴さに、圧倒されて頷く。
直ぐ、召使い達が訪れる。
彼らの制服ですら、淡い水色や淡い黄色の、優しい色相。
彼らはローランデのように、優しく微笑むと
「こちらでお寛ぎ下さい」
とアスランを案内する。
一人の召使いに
「後は頼んだ」
とローランデが告げると、召使いはほんとうに感じ良く、優しく微笑む。
ギュンターはまるで別世界にいるかのように、ローランデの居室を見渡した。
ローランデはまるで口を開かないギュンターに
「?」
と思いつつも、横に来て告げる。
「戻りましょう。
ここ暫く…貴方を、ディングレー殿とオーガスタス殿が保護してる。
そうグーデン一味は思ってました。
が、全校生徒集う試合で、それが誤解だとバレたので。
きっと今後、グーデン一味は…貴方を見ると、平気で喧嘩も売るだろうし…突っかかって来るでしょう」
ローランデがそう言いながら、そっと来た召使い用通路に促すので、ギュンターは呆けながら続き…。
そして召使い用の質素な木の階段を降りていく時。
ようやくローランデの言った
“平気で喧嘩を売る”
に気づく。
「…その前は喧嘩売ってて、ここ暫く無かったのに。
また、喧嘩を売って来るってのか?」
ローランデは少し前を歩きながら、頷く。
「…それも多分、四年が。
オーガスタス殿と対等に剣で戦える貴方ですから。
三年は控え、体力の余ってる四年らに狙われるでしょうね」
ギュンターは一瞬、“四年”と聞き、ふと竜のようにゴツい顔と体格の、ダランドステを思い浮かべる。
良く連むダベンデスタと、名前も似ててゴツい系なので一度
「親戚か?」
と聞いたが、ダベンデスタに顔をぶんぶんと横に振られ
「…家系を辿れば、縁があるかもだが。
知り合いじゃ無い」
と言われた。
ローランデと一緒に、来た道を辿る。
彼の背になびく、淡くクリーム色に近い、栗毛の髪を見る。
交互に濃い栗毛が混じってるけど、それでも優しく見えた。
「(…だが、剣を握ると別人)」
そう突然思い出した途端、ローランデが振り向く。
扉が開いて、いつの間にか一年宿舎の、外に出ていた。
中鍛錬場へと向かう道すがら、ついギュンターは寄って聞く。
「あれ…。
あの部屋の家具や…」
「?部屋が、どうかしましたか?」
「…あんな色相の美しい部屋は、俺はかつて一度も見た事無い。
あんたの趣味か?」
ローランデは褒められたように色白の頬をほんのり紅に染め、囁く。
「…ええ。
あまりくっきりとした色は、落ち着かないので」
「…ディングレーが…」
「?」
ローランデは隣に並ぶ長身のギュンターを見上げ、言いかける言葉を待った。
ただし。
あんま見つめると、ずっと抱いてた…ディングレーやオーガスタスとの、裸で絡むシーンを思い浮かべそうで。
ローランデはさっ!と視線を背ける。
「…自分の趣味じゃ無いから、落ち着かないと…」
ギュンターの言葉を聞いて、ローランデは俯いたまま頷く。
「あの御方は王族ですから。
それなりの体面を保つため、召使いや執事達が、いつも気遣っています」
「だってあんたも…シェンダー・ラーデンじゃ、王子様の身分だ」
「けれどそれは、シェンダー・ラーデンの地において。
ここ、王都のテールズキースでは大公子息ですし。
見張る目も少ないので、自由に出来ます」
ギュンターはそれを聞いて、ついローランデに振り向く。
年若いのに。
“高貴”
を絵に描いたよう。
「…地元じゃ…ディングレー同様、窮屈か?」
…聞かれてローランデは頬染め俯き、頷いて言った。
「ええ。
公式の場では一挙一頭足が、注目されます」
ギュンターはそれを聞いて、ため息吐いた。
ローフィスに
『お前は下品で良い。
誰も困らない。
だがローランデは、高貴じゃ無いと彼の宮廷の奴らが困る』
と言ってた言葉を、実感した。
だからディングレーは。
身分隠し、こっそりローフィスと出かける息抜きが、高価な剣と引き換えに出来るくらい、貴重………。
けど思い直し、ギュンターはローランデに囁いた。
「…じゃ、ここに居る間は。
思いっきり息抜きが、出来てるんだな?」
ローランデはそれを言われた時。
ようやくとても嬉しそうに、にっこり微笑んで頷いた。
横の茂みが、がさっ!と音立てるのに気づく。
一瞬身構える。
が、来る気配は無く、どうやら見張りが知らせに走ったんだと察した。
となると、三年宿舎入り口か宿舎内。
ディングレー私室に入るのを、待ち伏せてる連中が襲ってくるはず。
けれどその時、背後からふっ…といい香りがして、振り向くと濃い栗毛と淡い栗毛が交互に混じる、艶やかな髪を振ったローランデが、腕に触れて囁く。
「…こちらに」
ギュンターは問おうとした。
が、一刻を争うと感じ、一気に怪我してるアスランを抱き上げ、先を駆けるローランデの背を追う。
アスランは力強い腕で抱き上げられた時、打った背と脇腹に痛みが走った。
が、歯を食い縛って呻き声を消し、ギュンターの胸に縋り付く。
ローランデは一瞬背後に振り向くものの、しなやかな髪を振って“こちら”と言うように、宿舎前の広い道に入らず、手前の細い道に案内する。
ギュンターはアスランを気遣うことも忘れ、ローランデの後に続いた。
ローランデは並ぶ宿舎の中でも一番手前の、一年宿舎の通用口に入る。
廊下を駆け抜け、がらんとした大食堂へ入って行った。
アスランはギュンターに抱かれながらも、廊下に並ぶ扉の、本来の自室の前を、通り過ぎて思った。
「(…あそこで…最初はわくわくしたけど。
グーデンに拉致された後…怯えて泣いてた…)」
けれど力強いギュンターの走りが、過去の不安を打ち消す。
ローランデは大食堂の使用人勝手口の扉を開け、細く質素な廊下を駆け抜けて行く。
途中、角から曲がってきた召使いにぶつかりそうになると
「ごめん!」
と叫び、先へ走る。
ギュンターも、驚きながらこちらにやって来る召使いを見、横幅ギリギリの狭い廊下で体を横向け、すり抜けながら、振り向きもせずローランデの背に続く。
アスランは一瞬で向きが変わって、召使いの腕に足が少し当たり
「ごめん!」
と叫ぶと、振り向く召使いは苦笑いして頷いてた。
凄い速さでギュンターは駆けて行き、アスランはグーデンの部屋からギュンターに、やっぱりこんな風に抱き上げられて連れ出された時の、わくわく感を思い出した。
「(…緊急事態なのに…。
あの時だってグーデンに…思い出したくも無い、酷いコトされた後だったのに…。
どうしてギュンターに抱き上げられて運ばれると………。
わくわく、しちゃうんだろう?)」
扉が開き、突然明るくなる。
ローランデは出て直ぐの二年宿舎の、使用人勝手口に飛び込む。
入ると、廊下はやっぱり横幅は狭め。
二人通るのがやっと。
けれどあちこちに角があって、その先にも廊下があり、どこかの部屋に続いてるらしくて。
ギュンターは先をあちこち角を曲がりながらも、迷わず走るローランデが、エライと思った。
「(…まるで、迷路だ…)」
ギュンターは角を曲がるローランデの背を追い、角に入った途端。
もう別の角にその背を消して行くローランデの背を、見失わないよう速度を上げる。
やがて質素な木の階段を上がり、少し明るい廊下を駆け抜けた時。
突然横の扉が開いて、顔を出しかけた召使いが、目前を走って行くローランデに目を見開く。
…多分その召使いの、自室なんだろう。
ローランデは
「ごめん。
来客を案内してる!」
と叫ぶと、召使いは後続のギュンターに振り向き、慌てて室内に戻り、邪魔にならないよう、素早く扉を閉めた。
ギュンターは閉まった扉の横を抜け、ローランデが開けた扉に飛び込む。
入った途端。
その部屋が、淡い色彩と銀とで飾られた、さり気なく豪華なとても美しい部屋で。
ギュンターは思わず、目を見開いた。
ローランデの私室らしかった。
ローランデは歩を止め、笑顔で
「もう大丈夫です。アスランを下ろしても」
と言ったが。
ギュンターは一瞬何を言われたのか、分からないほど、その美しい部屋に気を取られてた。
が、無意識の内に気づき、反射的にそっ…とアスランを床に下ろす。
敷かれた絨毯ですら、銀と淡いピンクや水色、淡い緑やグレーの刺繍糸で飾られ、色味が全て抑えられ。
全部が優しい風合いを醸しだして、ギュンターはその見事さに見惚れた。
けれどあちこちの壁の飾りや、テーブルの上に置かれた置物は。
良く見ると手の込んだ彫刻の彫られた、とても豪華な物。
でもディングレー私室と違い、金ではなく銀色だったので、ちっともこれみよがしな豪華さじゃない。
「合同授業後。
ディングレー殿と一緒にここに戻り。
アスランを安全に、ディングレー殿のお部屋へ戻せます」
…凄く、身分が高いんだろう。
そう、この部屋を見れば推察出来るほどなのに。
ローランデはあくまでも、控えめ。
ローランデはギュンターに視線を送ったけど、無反応だったので。
横のアスランに微笑みかける。
「ギュンター殿が鍛錬場を出始めた時。
一年のドラーケンが窓の外の仲間に目配せし、自分も出て行こうとしてるのを、私も見たから。
多分、三年宿舎の外はグーデン一味の四年が。
中では三年平貴族らが。
待ち構えて…ギュンター殿に喧嘩を売ってる間に、君を拉致しようと予測出来たので。
だから…ここに暫く居てくれる?
私の所にも、鎮痛剤はあるし」
アスランはローランデの、匂い立つような優しげな雰囲気と、特別な感じのする高貴さに、圧倒されて頷く。
直ぐ、召使い達が訪れる。
彼らの制服ですら、淡い水色や淡い黄色の、優しい色相。
彼らはローランデのように、優しく微笑むと
「こちらでお寛ぎ下さい」
とアスランを案内する。
一人の召使いに
「後は頼んだ」
とローランデが告げると、召使いはほんとうに感じ良く、優しく微笑む。
ギュンターはまるで別世界にいるかのように、ローランデの居室を見渡した。
ローランデはまるで口を開かないギュンターに
「?」
と思いつつも、横に来て告げる。
「戻りましょう。
ここ暫く…貴方を、ディングレー殿とオーガスタス殿が保護してる。
そうグーデン一味は思ってました。
が、全校生徒集う試合で、それが誤解だとバレたので。
きっと今後、グーデン一味は…貴方を見ると、平気で喧嘩も売るだろうし…突っかかって来るでしょう」
ローランデがそう言いながら、そっと来た召使い用通路に促すので、ギュンターは呆けながら続き…。
そして召使い用の質素な木の階段を降りていく時。
ようやくローランデの言った
“平気で喧嘩を売る”
に気づく。
「…その前は喧嘩売ってて、ここ暫く無かったのに。
また、喧嘩を売って来るってのか?」
ローランデは少し前を歩きながら、頷く。
「…それも多分、四年が。
オーガスタス殿と対等に剣で戦える貴方ですから。
三年は控え、体力の余ってる四年らに狙われるでしょうね」
ギュンターは一瞬、“四年”と聞き、ふと竜のようにゴツい顔と体格の、ダランドステを思い浮かべる。
良く連むダベンデスタと、名前も似ててゴツい系なので一度
「親戚か?」
と聞いたが、ダベンデスタに顔をぶんぶんと横に振られ
「…家系を辿れば、縁があるかもだが。
知り合いじゃ無い」
と言われた。
ローランデと一緒に、来た道を辿る。
彼の背になびく、淡くクリーム色に近い、栗毛の髪を見る。
交互に濃い栗毛が混じってるけど、それでも優しく見えた。
「(…だが、剣を握ると別人)」
そう突然思い出した途端、ローランデが振り向く。
扉が開いて、いつの間にか一年宿舎の、外に出ていた。
中鍛錬場へと向かう道すがら、ついギュンターは寄って聞く。
「あれ…。
あの部屋の家具や…」
「?部屋が、どうかしましたか?」
「…あんな色相の美しい部屋は、俺はかつて一度も見た事無い。
あんたの趣味か?」
ローランデは褒められたように色白の頬をほんのり紅に染め、囁く。
「…ええ。
あまりくっきりとした色は、落ち着かないので」
「…ディングレーが…」
「?」
ローランデは隣に並ぶ長身のギュンターを見上げ、言いかける言葉を待った。
ただし。
あんま見つめると、ずっと抱いてた…ディングレーやオーガスタスとの、裸で絡むシーンを思い浮かべそうで。
ローランデはさっ!と視線を背ける。
「…自分の趣味じゃ無いから、落ち着かないと…」
ギュンターの言葉を聞いて、ローランデは俯いたまま頷く。
「あの御方は王族ですから。
それなりの体面を保つため、召使いや執事達が、いつも気遣っています」
「だってあんたも…シェンダー・ラーデンじゃ、王子様の身分だ」
「けれどそれは、シェンダー・ラーデンの地において。
ここ、王都のテールズキースでは大公子息ですし。
見張る目も少ないので、自由に出来ます」
ギュンターはそれを聞いて、ついローランデに振り向く。
年若いのに。
“高貴”
を絵に描いたよう。
「…地元じゃ…ディングレー同様、窮屈か?」
…聞かれてローランデは頬染め俯き、頷いて言った。
「ええ。
公式の場では一挙一頭足が、注目されます」
ギュンターはそれを聞いて、ため息吐いた。
ローフィスに
『お前は下品で良い。
誰も困らない。
だがローランデは、高貴じゃ無いと彼の宮廷の奴らが困る』
と言ってた言葉を、実感した。
だからディングレーは。
身分隠し、こっそりローフィスと出かける息抜きが、高価な剣と引き換えに出来るくらい、貴重………。
けど思い直し、ギュンターはローランデに囁いた。
「…じゃ、ここに居る間は。
思いっきり息抜きが、出来てるんだな?」
ローランデはそれを言われた時。
ようやくとても嬉しそうに、にっこり微笑んで頷いた。
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