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ディングレーの不運な午後
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ローフィスはやれやれ…と、泣きつかれて眠るハウリィの寝顔を見つめる。
小窓の外は、午後のオレンジの陽が差し込んでいた。
ロクに安心して、眠ってないんだろうな…。
ローフィスはそう思い、横で安らかな寝息を立てる、ハウリィの眠りを見守った。
不届きな噂をされてると知らないディングレーは、実家からの使者を迎え、結局講義には出られず。
召使いを使いに出し、講師に『欠席』の連絡を入れさせた。
サボれて嬉しい。
と言えば嬉しいものの…使者とは名ばかり。
監査同然で、召使いらに生活状況を聞き出され、父親に報告が行く。
名目は『困った事が無いよう、首尾良く足りない物などを調達するため』
衣類の汚れ、剣の消耗などをチェックされ、壊れかけていると新しい物を届けてくれる。
が、毎度奥の部屋に押し込んだ居間を飾るはずの、宝石がこれでもか!とはめ込まれた金綺羅家具が、所狭しと置かれた部屋の扉を開けられ、聞かれる。
「これはいつ、居間へ移されるんです?」
ディングレーは毎度
「忙しいんだ!
家具の配置なんかに、こだわってる暇なんか無い!」
と怒鳴ってみせ、返答を濁す。
今ですら、かなり金綺羅で落ち着かないのに。
これ以上豪華な家具を置いたら、もっと落ち着かなくなる。
講義終了の鐘が鳴った頃、使者がやっと帰り、ディングレーはソファにへたり込んだ。
部屋を一歩でも出れば、もう『王族』の名がついて回る。
王族っぽく威張ってるのは、思い切り気が張る。
しかもいつも自分の、一挙一投足はそこら中の注目を浴びる。
が、言うべき時にしっかり発言しとかないと、学年トップとしての責任放棄になる。
ふと、今日の講義が全て終了したと思い出し、夕食前に一年の二人。
アスランとマレーを迎えに行かなけりゃと、ソファから立ち上がり、衣服を正し始めた。
金刺繍付きの紺の上着の、乱れを直し胸のボタンを止めていると、ローフィスがふらりと部屋に、入って来る。
ディングレーは一気に顔を輝かせ、思わず笑顔でローフィスを迎えた。
「よう…!
どうした?」
つい嬉しくてそう声を掛ける。
が、ローフィスはどシリアスで体を横向け、背後に隠した小柄な少年を見せて呟く。
「…全面戦争の、火蓋を俺が、切っちまったかも」
ディングレーは目を、見開く。
「………ギュンターへの『目立つ事はするな』警告は?」
ローフィスはがっくり項垂れて、小声で呻いた。
「…しなくていい」
ディングレーがハウリィに視線を送ると、小柄な綿菓子のような甘い感じの美少年は、俯いたまま顔が上げられない様子。
ローフィスはハウリィに屈むと、肩を抱いて囁く。
「グーデンと違ってデカくて、見かけ、だけは怖そうだが。
意外に怖く無いから」
ディングレーはその言葉に、がっくり…と首を垂れた。
「…どっか、行く気だったんだろう?」
ローフィスに尋ねられ、『怖い』と言われて傷ついたディングレーは、項垂れて呟く。
「アスランとマレーを迎えに、一年宿舎へ」
「行って来い」
ディングレーは頷き、扉に立ってるローフィスの横に進む。
ハウリィが、少し怯えるようにローフィスの後ろに隠れるので。
ディングレーはまた、がっくり。と首を落とした。
が、小声で努めて優しく囁く。
「アスランとマレーが居るから。
…俺も居るが。
多分、奴らと居れば、怖く無い」
ローフィスは背後に隠れてるハウリィに、優しく微笑む。
「きっと、楽しいぞ?」
ハウリィはおずおずと顔を上げ、やっと笑顔を浮かべ、ローフィスに頷いた。
ディングレーは相変わらず、どんな相手の心も溶かす、ローフィスの人当たりの良さを羨ましげに見つめつつ扉を開け、部屋を出た。
ディングレーが姿を消した後、ローフィスは椅子にどっか!と腰掛け、目を丸くするハウリィに告げる。
「好きに、寛いでいいから」
が。
ハウリィは豪勢な室内に、目を丸くする。
天井には素晴らしく大きな、ガラスで飾られたシャンデリア。
壁はブルーに金の飾り模様。
金の縁飾りの付いた、大きな鏡。
金の飾りの付いた、暖炉。
金の飾り付きの、深紅の布の張られたソファ。
どれも手の込んだ彫刻が彫り込まれた、豪華な家具ばかり。
「でもここ…………」
ローフィスは、にっこり微笑った。
「王族の私室だ。
グーデンのじゃないから、もの凄く安全だ」
言われてハウリィは呆れ、がその豪華な王族の私室に、恐れ多くて竦み上がった。
そして寛ぎ切るローフィスに目で、訴える。
が、ローフィスは足を足乗せに置き、背もたれに姿勢を崩して座り、にこにこと促すもんだから。
ハウリィはおずおずと、深紅のびろうどが張られ、ふんだんに金飾りの付いた椅子の端に、ちょこん、と畏まって腰掛けた。
ディングレーは一年宿舎の大貴族用の居間に入ると、マレーとアスランの横に座るスフォルツァを見つける。
そして扉から出て来たアイリスを見、顎をしゃくった。
察しのいいアイリスは、直ぐ寄って来ると見上げ、尋ねる。
「…どうしました?」
一年では背が高い方だろうが、自分からしたら小柄。
相変わらず育ちの良さげな、艶やかな濃い栗毛に囲まれた色白の美少年を見つめつつ、屈んでそっと囁く。
「もう一人の一年、ハウリィを。
四年のローフィスが保護し、今俺の自室にいる」
ハウリィの名に、思わず振り向くアスランの視線に気づくが、ディングレーはよりいっそうアイリスに、顔を寄せて囁いた。
「グーデンとの抗争が、表面化するかもしれない」
その言葉に、アイリスは平静を崩さず頷く。
「つまり何としても三人を、守りぬけ。と?」
ディングレーはアイリスの聡明な顔を見、囁く。
「お前らだけでは無理だ。
他にも声掛ける。
奴らが動けばこちらも対応する」
「ギュンターや…二年のローランデ達ですか?」
ディングレーは動揺も見せず直ぐ切り返す、アイリスを見つめる。
動揺どころかアイリスは、微笑んでいた。
「(事の重大さが、分かってない馬鹿かそれとも…呆れるほど、自信家なのかな?)
…お前自身も気をつけろ!」
が、アイリスはにこにこして告げる。
「貴方にお気遣い頂けて、本当に光栄です」
「(のれんに腕押し。っこういうのを言うんだな)
…危険が、本当に解ってるならそれでいい。
が喧嘩は、上級生に任せとけ。
いつも数人配置し、誰か手近な相手を呼び出せ。
いいか。
間違ってもお前達一年が喧嘩、買うなよ?」
「皆にそう伝えます」
ディングレーが、大きく頷く。
が、ふと。
ぎんぎんと睨み付ける視線を感じ、顔を上げる。
アイリスに顔を寄せて喋ってたせいか、スフォルツァの…自分に向ける視線が、半端なくきつい。
「…あいつに、俺達はただ喋ってて、俺はお前を口説いてないと。
説明しといてくれ」
ディングレーの言葉に、アイリスは椅子から立ち上がってるスフォルツァに、視線を向ける。
相変わらず明るい栗毛を粋に肩に胸に流し、切れ長のヘイゼルの瞳の、少女が憧れる王子様風の出で立ち。
がその瞳は明らかに、王族で二つ年上のディングレーを、睨み付けていた。
「口説かれた。と。
報告出来たら光栄なのに」
ため息交じりにつぶやくアイリスの、腕をディングレーが咄嗟、異論を唱え、引く。
ディングレーに切羽詰まった表情で見つめられ、アイリスは仕方なしに呟く。
「言いませんよ。口説かれただなんて」
「ホントだな?
…洒落で、済まないんだぞ?
あいつ、お前に本気で惚れてる!」
アイリスはそう決死の表情で告げるディングレーを、不満そうに見た。
「貴方が対抗馬なら、スフォルツァも私を諦めるのに」
ディングレーはもう一度、言って聞かせるように思いっきりアイリスの、腕を引く。
「間違っても俺をあいつの、恋敵に据えるな!
他を、当たれ!!!」
アイリスは瞬間、にっこり笑う。
被さるように顔を寄せてるディングレーに顔を寄せて行くと、唇のほんの少し横。
かろうじて頬。に口付けた。
そして周囲がぎょっ!と注目する中、艶然と微笑んで、固まるディングレーに声高に告げる。
「貴方にご心配頂けてこれほど、心強い事はありません」
ディングレーは固まったまま、背後からぎんぎんとスフォルツァの視線が突き刺さるのを感じ、どう取り繕えばいいのか解らず、そのまま固まり続けた。
がアイリスはアスランとマレーに顔を向け、にっこり微笑み、朗らかな声で告げてる。
「一足先に、ハウリィが行ってる。
ディングレーは頼りになるから、三人で彼の私室に泊めてもらうといい」
そして突っ立つディングレーの背を強引に二人と…スフォルツァに振り向かせ、背をどん!と押して促す。
ディングレーは俯いたまま、睨むスフォルツァの視線を極力避け、二人に「行こう」と小声で呟いた。
部屋を出た後、背後からスフォルツァの
「今、彼にキスしたろう?!」
とアイリスを糾弾するような、引き攣った叫びが聞こえ、アイリスが平静な声音で
「心配頂いたお礼を、しただけだし、第一キスしたのは頬だ」
としゃあしゃあと言い訳る声が聞こえ、ディングレーは項垂れる。
が、今度スフォルツァは金切り声で叫ぶ。
「口説かれたんだろう?!」
「…彼に口説かれたりしたら光栄そのものだから、断る馬鹿は、まずいないだろうな」
もうその件で、ディングレーはそれ以上聞く勇気が、無かったから。
小柄なマレーとアスランの背を押して、足早にその場を、逃げ出した。
小窓の外は、午後のオレンジの陽が差し込んでいた。
ロクに安心して、眠ってないんだろうな…。
ローフィスはそう思い、横で安らかな寝息を立てる、ハウリィの眠りを見守った。
不届きな噂をされてると知らないディングレーは、実家からの使者を迎え、結局講義には出られず。
召使いを使いに出し、講師に『欠席』の連絡を入れさせた。
サボれて嬉しい。
と言えば嬉しいものの…使者とは名ばかり。
監査同然で、召使いらに生活状況を聞き出され、父親に報告が行く。
名目は『困った事が無いよう、首尾良く足りない物などを調達するため』
衣類の汚れ、剣の消耗などをチェックされ、壊れかけていると新しい物を届けてくれる。
が、毎度奥の部屋に押し込んだ居間を飾るはずの、宝石がこれでもか!とはめ込まれた金綺羅家具が、所狭しと置かれた部屋の扉を開けられ、聞かれる。
「これはいつ、居間へ移されるんです?」
ディングレーは毎度
「忙しいんだ!
家具の配置なんかに、こだわってる暇なんか無い!」
と怒鳴ってみせ、返答を濁す。
今ですら、かなり金綺羅で落ち着かないのに。
これ以上豪華な家具を置いたら、もっと落ち着かなくなる。
講義終了の鐘が鳴った頃、使者がやっと帰り、ディングレーはソファにへたり込んだ。
部屋を一歩でも出れば、もう『王族』の名がついて回る。
王族っぽく威張ってるのは、思い切り気が張る。
しかもいつも自分の、一挙一投足はそこら中の注目を浴びる。
が、言うべき時にしっかり発言しとかないと、学年トップとしての責任放棄になる。
ふと、今日の講義が全て終了したと思い出し、夕食前に一年の二人。
アスランとマレーを迎えに行かなけりゃと、ソファから立ち上がり、衣服を正し始めた。
金刺繍付きの紺の上着の、乱れを直し胸のボタンを止めていると、ローフィスがふらりと部屋に、入って来る。
ディングレーは一気に顔を輝かせ、思わず笑顔でローフィスを迎えた。
「よう…!
どうした?」
つい嬉しくてそう声を掛ける。
が、ローフィスはどシリアスで体を横向け、背後に隠した小柄な少年を見せて呟く。
「…全面戦争の、火蓋を俺が、切っちまったかも」
ディングレーは目を、見開く。
「………ギュンターへの『目立つ事はするな』警告は?」
ローフィスはがっくり項垂れて、小声で呻いた。
「…しなくていい」
ディングレーがハウリィに視線を送ると、小柄な綿菓子のような甘い感じの美少年は、俯いたまま顔が上げられない様子。
ローフィスはハウリィに屈むと、肩を抱いて囁く。
「グーデンと違ってデカくて、見かけ、だけは怖そうだが。
意外に怖く無いから」
ディングレーはその言葉に、がっくり…と首を垂れた。
「…どっか、行く気だったんだろう?」
ローフィスに尋ねられ、『怖い』と言われて傷ついたディングレーは、項垂れて呟く。
「アスランとマレーを迎えに、一年宿舎へ」
「行って来い」
ディングレーは頷き、扉に立ってるローフィスの横に進む。
ハウリィが、少し怯えるようにローフィスの後ろに隠れるので。
ディングレーはまた、がっくり。と首を落とした。
が、小声で努めて優しく囁く。
「アスランとマレーが居るから。
…俺も居るが。
多分、奴らと居れば、怖く無い」
ローフィスは背後に隠れてるハウリィに、優しく微笑む。
「きっと、楽しいぞ?」
ハウリィはおずおずと顔を上げ、やっと笑顔を浮かべ、ローフィスに頷いた。
ディングレーは相変わらず、どんな相手の心も溶かす、ローフィスの人当たりの良さを羨ましげに見つめつつ扉を開け、部屋を出た。
ディングレーが姿を消した後、ローフィスは椅子にどっか!と腰掛け、目を丸くするハウリィに告げる。
「好きに、寛いでいいから」
が。
ハウリィは豪勢な室内に、目を丸くする。
天井には素晴らしく大きな、ガラスで飾られたシャンデリア。
壁はブルーに金の飾り模様。
金の縁飾りの付いた、大きな鏡。
金の飾りの付いた、暖炉。
金の飾り付きの、深紅の布の張られたソファ。
どれも手の込んだ彫刻が彫り込まれた、豪華な家具ばかり。
「でもここ…………」
ローフィスは、にっこり微笑った。
「王族の私室だ。
グーデンのじゃないから、もの凄く安全だ」
言われてハウリィは呆れ、がその豪華な王族の私室に、恐れ多くて竦み上がった。
そして寛ぎ切るローフィスに目で、訴える。
が、ローフィスは足を足乗せに置き、背もたれに姿勢を崩して座り、にこにこと促すもんだから。
ハウリィはおずおずと、深紅のびろうどが張られ、ふんだんに金飾りの付いた椅子の端に、ちょこん、と畏まって腰掛けた。
ディングレーは一年宿舎の大貴族用の居間に入ると、マレーとアスランの横に座るスフォルツァを見つける。
そして扉から出て来たアイリスを見、顎をしゃくった。
察しのいいアイリスは、直ぐ寄って来ると見上げ、尋ねる。
「…どうしました?」
一年では背が高い方だろうが、自分からしたら小柄。
相変わらず育ちの良さげな、艶やかな濃い栗毛に囲まれた色白の美少年を見つめつつ、屈んでそっと囁く。
「もう一人の一年、ハウリィを。
四年のローフィスが保護し、今俺の自室にいる」
ハウリィの名に、思わず振り向くアスランの視線に気づくが、ディングレーはよりいっそうアイリスに、顔を寄せて囁いた。
「グーデンとの抗争が、表面化するかもしれない」
その言葉に、アイリスは平静を崩さず頷く。
「つまり何としても三人を、守りぬけ。と?」
ディングレーはアイリスの聡明な顔を見、囁く。
「お前らだけでは無理だ。
他にも声掛ける。
奴らが動けばこちらも対応する」
「ギュンターや…二年のローランデ達ですか?」
ディングレーは動揺も見せず直ぐ切り返す、アイリスを見つめる。
動揺どころかアイリスは、微笑んでいた。
「(事の重大さが、分かってない馬鹿かそれとも…呆れるほど、自信家なのかな?)
…お前自身も気をつけろ!」
が、アイリスはにこにこして告げる。
「貴方にお気遣い頂けて、本当に光栄です」
「(のれんに腕押し。っこういうのを言うんだな)
…危険が、本当に解ってるならそれでいい。
が喧嘩は、上級生に任せとけ。
いつも数人配置し、誰か手近な相手を呼び出せ。
いいか。
間違ってもお前達一年が喧嘩、買うなよ?」
「皆にそう伝えます」
ディングレーが、大きく頷く。
が、ふと。
ぎんぎんと睨み付ける視線を感じ、顔を上げる。
アイリスに顔を寄せて喋ってたせいか、スフォルツァの…自分に向ける視線が、半端なくきつい。
「…あいつに、俺達はただ喋ってて、俺はお前を口説いてないと。
説明しといてくれ」
ディングレーの言葉に、アイリスは椅子から立ち上がってるスフォルツァに、視線を向ける。
相変わらず明るい栗毛を粋に肩に胸に流し、切れ長のヘイゼルの瞳の、少女が憧れる王子様風の出で立ち。
がその瞳は明らかに、王族で二つ年上のディングレーを、睨み付けていた。
「口説かれた。と。
報告出来たら光栄なのに」
ため息交じりにつぶやくアイリスの、腕をディングレーが咄嗟、異論を唱え、引く。
ディングレーに切羽詰まった表情で見つめられ、アイリスは仕方なしに呟く。
「言いませんよ。口説かれただなんて」
「ホントだな?
…洒落で、済まないんだぞ?
あいつ、お前に本気で惚れてる!」
アイリスはそう決死の表情で告げるディングレーを、不満そうに見た。
「貴方が対抗馬なら、スフォルツァも私を諦めるのに」
ディングレーはもう一度、言って聞かせるように思いっきりアイリスの、腕を引く。
「間違っても俺をあいつの、恋敵に据えるな!
他を、当たれ!!!」
アイリスは瞬間、にっこり笑う。
被さるように顔を寄せてるディングレーに顔を寄せて行くと、唇のほんの少し横。
かろうじて頬。に口付けた。
そして周囲がぎょっ!と注目する中、艶然と微笑んで、固まるディングレーに声高に告げる。
「貴方にご心配頂けてこれほど、心強い事はありません」
ディングレーは固まったまま、背後からぎんぎんとスフォルツァの視線が突き刺さるのを感じ、どう取り繕えばいいのか解らず、そのまま固まり続けた。
がアイリスはアスランとマレーに顔を向け、にっこり微笑み、朗らかな声で告げてる。
「一足先に、ハウリィが行ってる。
ディングレーは頼りになるから、三人で彼の私室に泊めてもらうといい」
そして突っ立つディングレーの背を強引に二人と…スフォルツァに振り向かせ、背をどん!と押して促す。
ディングレーは俯いたまま、睨むスフォルツァの視線を極力避け、二人に「行こう」と小声で呟いた。
部屋を出た後、背後からスフォルツァの
「今、彼にキスしたろう?!」
とアイリスを糾弾するような、引き攣った叫びが聞こえ、アイリスが平静な声音で
「心配頂いたお礼を、しただけだし、第一キスしたのは頬だ」
としゃあしゃあと言い訳る声が聞こえ、ディングレーは項垂れる。
が、今度スフォルツァは金切り声で叫ぶ。
「口説かれたんだろう?!」
「…彼に口説かれたりしたら光栄そのものだから、断る馬鹿は、まずいないだろうな」
もうその件で、ディングレーはそれ以上聞く勇気が、無かったから。
小柄なマレーとアスランの背を押して、足早にその場を、逃げ出した。
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