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ギュンターに今後の指示を出すローフィス

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 戸口で、ディングレーはローフィスに感謝をその深い青の瞳に滲ませて、小声で囁く。
「…ギュンターの奴、マジであの状態を収めたのか?
だって…」
ディングレーは一層声を、潜める。
ローフィスは思わず耳を、寄せる。

「…ひどい状態だったんだぞ?」
が、ローフィスは顔を上げてディングレーを真っ直ぐ見つめる。

「…俺の言った事は事実だ」

ディングレーは顔を、揺らす。
「でも、どうやって?」

ローフィスは室内のマレーを見、ディングレーの胸倉掴んで室外へ、半分その身を連れ出すと小声でささやく。
「…抱いたに決まってる」

「…………つまり抱いて…慰めたって、言いたいのか?」
ローフィスは混ぜっ返すその男に憮然。と告げる。
「言いたいんじゃない。
そう言ってるんだ!」

「だって……」
再びディングレーは声を潜める。

「…本当にひどい体験をしてる」
ローフィスは頷く。

ディングレーは分かってないローフィスに、尚も畳み掛ける。
「…そんな相手じゃ余程繊細に扱わないと…逆に傷を、広げるだろう?」

ローフィスは頷くと、言った。
「自分よりギュンターの寝技が器用だと知って、ショックか?」

言われてディングレーは暫く、ローフィスの顔をまじまじと見つめた。

「………まあ…そうかもな」
ローフィスは笑うと顔を上げる。
「…良かったな!マレーは経験者で。
多少不器用に扱っても、文句は出ないぞ。
限度はあるが」

ディングレーはムキになる。
「…慰めが目的の時は俺だって、自分本位に楽しんだりはしない」

ローフィスが、突っ込んだ。
「けどお前、不器用だしな…。
慣れた女なら、最高に男らしい。と受けまくってるみたいだが」

ディングレーは思わず軽口叩く、年上の男ローフィスにらんだ。


 ギュンターは扉を叩く音に、椅子から身を跳ね上げて戸口に寄り、扉を開けた。
やはり…ローフィスで、今度は直ぐ体を横に開けて、中に入れる。

ローフィスが寝台に目をやると、アスランは余程…疲れていたのか、まだ安らかな寝息を立てていた。
『大したもんだ』
物音にも、目を覚ます様子が無い。

ギュンターは寝台から離れた、粗末な木造りの机の両側に並ぶ、二脚の椅子の一つに腰掛ける。
ローフィスは向かいに掛けて、ギュンターに顔を寄せると、ギュンターも寄せて来た。

「…この後が問題だ」
ギュンターが、深く頷き言葉を返す。
「この間オーガスタスと保護した子も、それは怯えていた」
ローフィスも、それを聞いて頷く。
「一年のグーデンの配下は、同学年の連中に見張らせるしか無い。
…こんな事が続けば、オーガスタスは黙って無い」

ギュンターの、顔が揺れる。
「…だが二年の奴が…グーデンを殴ればオーガスタスは退学だと、俺を脅した」

ローフィスは、顔を引き締め告げる。
「…それは俺がさせない」
ギュンターはびっくりして…その爽やかな好青年を見つめる。

だけどどう見ても…自分より上背もなく軽そうで、威風いふうとか権威けんいからは、かけ離れて見えた。

ローフィスは直ぐその視線の思惑おもわくを察し、つぶやく。
「つてが、ある」
ギュンターは納得した。と頷く。

「…しばらく俺のとこに泊めるか?」
ギュンターに問われ、ローフィスは吐息を吐く。
「二年の大貴族用宿舎に行って、フィンスかローランデに見てもらえ」

ギュンターが顔を、揺らす。
「俺はだって…そいつらとは、面識が無い」
「会ってないのか?」

「さっき顔を合わせただけで…ロクにしゃべってない」
「じゃ、二年の普通宿舎で…銀髪の美少年を探せ。
シェイルって名だ。
俺の弟だから…俺の名を出せば奴がその後、何とかする」

ギュンターの、眉が寄る。
「…美少年…?
大丈夫なのか?
そいつ自身も危ないんじゃないのか?」

ギュンターに問われ、ローフィスは吐息混じりに立ち上がる。
「シェイルに連中は、手出し出来ない。
ディアヴォロスが怖いからな」

戸口に歩み寄るローフィスの背を見つめ、ギュンターが慌てて椅子から立ち上がり、その背を追う。
「…ディアヴォロスの名はよく聞くが…どうしてシェイルに手出しするとディアヴォロスが出て来る?」

ローフィスは振り向き、美しい紫の鋭い瞳が、今では猛々しく見える金髪美貌の、背の高い男を見つめた。
「…ディアヴォロスが“愛の誓い”を捧げ、護った相手だ。
シェイルは」

ギュンターの、眉間が思いきり寄った。
「“愛の誓い”…?
それって、一生に関わる重大な誓いで、おいそれと…口にしちゃマズい誓いだろう?」

ローフィスは扉を開けて、言った。
「それをおおやけの面前で、シェイル相手にディアヴォロスが誓ったから…。
グーデンらも、迂闊うかつにシェイルに手出し出来ないんだ。

シェイルに手出ししたら即、ディアヴォロスを敵に回す」

ギュンターはローフィスが閉じかけた扉を手で止め、振り向くローフィスの、明るく輝く青の瞳を喰い入るように見つめ、問う。

「…グーデンはそんなに…ディアヴォロスが怖いのか?」

ローフィスは、くっ!と笑った。
「一度、ディアヴォロスに会えば解る。
剣の腕だけで無く…グーデンと同じ王族とは思えない程高貴な男で…万人ばんにんしたわれている。

そんな男は誰だって出来るだけ、敵には回したくないものだ」

ギュンターは腑に落ちず、尋ね返す。

「例え…グーデンと言えども?」

ローフィスはギュンターが納得出来るよう、言い諭すように瞳を見つめ返し、しっかり頷いた。

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