アグナータの命運

あーす。

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夢の中の調教

227 アリオンとロレンツ そして歩哨のキリアン

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 アリオンは岩陰に身を隠し、伝い歩きながら横目で建物を見つめ、下に続く崖の中の道へと歩く。
ロレンツは先を足音も立てず進む。

周囲を岩で覆われた入り口。
中に入ると岩で囲まれた細い坂道。
高さだけは3メートル程あったけど…。
横幅は体格のいい男が二人、かろうじて並べる程。

坂は岩が凸凹していて、滑り落ちる危険は無かった。
螺旋状にゆるやかに曲がる道を下って行く。

アリオンは必死で足音を殺した。
が、どうしても岩に反響して響く。

やがて少し広い場所に出る。
見張りの歩哨が一人、立ってる。
その向こうには鉄格子のついた扉。

…つまり下から来ると、この鉄格子に阻まれて上へと上がれない。

アリオンは平気で歩哨に近寄る、ロレンツに尋ねそびれた。
この坂の鉄格子は、後下に幾つあるのかと。

歩哨が、振り向く。
ロレンツは金の髪を振り、にこやかに微笑む。

「やあ!
えーっと…」
そう言って、視線を歩哨が腰に下げた、鍵の束を見る。
「…それって、ここの門の鍵だけ?
それとも…」

「…ここと、囚人を入れとく部屋の鍵だ。
…あんた、誰?」

さっ!とロレンツが頭を横に傾ける。
アリオンは坂の岩陰から一気に飛び出し、歩哨を殴り付けた。

がっっっっ!

ロレンツは屈み、直ぐ歩哨の腰から鍵を取る。
そして背後のアリオンに振り向く。

「後、二つあるから」

アリオンは肩を落とす。
「鉄格子の門ごとに、歩哨が鍵持って立ってるのか?」

ロレンツが振り向く。
「…知ってたんじゃ無いの?
だから崖に這いつくばってたのかと思った」

アリオンは顔下げる。
「…見張りがいるから上がれない。
としか聞いてない」

ロレンツは呆れた。
「ともかく、後二人歩哨を倒して鍵を手に入れないと。
下からは鉄格子に阻まれて上がってこられないから」

「…お前でも殴るくらいは出来るだろう?」
アリオンは凄く戻りたそうに、坂道の上を見る。

ロレンツは鍵で鉄格子の扉を開けながら言う。

「俺が油断させ、あんたが殴る。
一番効率良いだろ?
さっさと来いよ!」

扉を開けて促す、有無を言わせぬロレンツに、アリオンはまた、項垂れた。



デュランはキリアンを、ファーレーンを閉じ込めた石造りの部屋へと導く。

ファーレーンは両手首を束ねて木の枷に挟まれ、拘束されて振り向く。
シーリーンのように、上には吊されてなかった。

が、ファーレーンが入り口からやって来るキリアンに近寄ると、枷は部屋の隅に固定された鉄の鎖に繋がれ、じゃらじゃら鳴ってファーレーンがキリアンに近寄る毎に伸びて行く。
が、扉に辿り着く前に、鎖はぴん!と張って、届かなかった。

「キリアン!」

ファーレーンが叫ぶ。
が、キリアンはファーレーンをじっ。と見る。

「俺は歩哨だから、あんたが逃げないよう見張る」

ファーレーンはキリアンの背後に立つ、デュランを見る。
「…頭を殴ったのか?」

デュランは言い淀む。
「休暇取ってもう崖を降りる、催眠術師が術をかけた」

「…どうしたら解ける」

ファーレーンの理性的な言葉に、デュランはぱっ!と顔を輝かせ、満面の笑顔。

「ロレンツに三度、ケツに突っ込まれないと解けない」

ファーレーンが一辺に歯を剥く。
「てめぇ!」

デュランはにこにこ笑って言った。
「キリアンがずっと歩哨してる間に、俺はここを降りる。
その後だったら、あんた逃げ出して、ロレンツにキリアン引き合わせても俺は関係無い」

「…なんて無責任な…」

ファーレーンに呆れられても、デュランの笑みは止まない。
「ここでの楽しみは、調教だけなのに。
俺は参加させて貰えないから、さっさと降りたい」

「…調教って…ファオンをか!」

ファーレーンに歯を剥いて怒鳴られて、デュランはキリアンの背後に慌てて隠れる。
そしてキリアンにそっと言う。

「食事の差し入れはお前がしろ。
こいつを、絶対逃がすなよ!」

キリアンは頷く。
デュランはチラ。とファーレーンに振り向くキリアンの横顔を見る。
兄であるファーレーンを思い出し、術が解けては。
と慌ててキリアンの肩に腕を回し、部屋の外に促す。

「…あいつは囚人。
お前は歩哨。
分かってるな?!」

キリアンは頷いて、部屋を出る。
扉を閉める前、ファーレーンが大声で怒鳴り付ける。

「やっぱり頭、殴ったんだろう?!!」

美麗なファーレーンだったが、やはり歯を剥き怒鳴る姿はど・迫力。


夢見てるレオとセルティスが、こそっ…とキースを見る。

キースは項垂れて言った。
「…やっぱり手枷してても…催眠術師に術かけてもらわないと…手籠めする前に、めちゃくちゃ蹴られそうだ」

アリオンとシーリーンが同時に頷き…。
レオとセルティスもそれより遅れて、そっ…と二人揃って頷いた。
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