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136 キースとリチャード 2
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「…リチャードはそこからまた…酷い事をしたのか?」
キースの問いに、ファオンは頷く。
「両手をまた…縛られて上に吊された時…僕…僕…人形じゃ無いって…。
『嫌!もう嫌!』
って…思い切り叫んでも、聞いて貰えない。
腿や…股の辺りに這った、リチャードの冷たい手の感触…今でも覚えてる…。
冬で…暖炉に火が入っていたけど…寒々しい…。
口付けられて…リチャードの綺麗な…ぞっとする顔を見える…。
人形のような…。
綺麗で…冷たい表情。
だから思った。
これは儀式なんだっ…て。
リチャードと同じ、人形にされる儀式なんだ………っ……でも…」
ファオンは身を、切なげにくねらせた。
「僕…嫌だった………。
にん…ぎょうになる…の………」
ファオンは一旦俯き、言葉を飲み込み…。
けれどまた、語り始める。
「…また…始まった。
後ろから挿入(い)れられ…それから正面から、横から……。
何度も、何度も………。
それからまた口に挿入(い)れられて…。
リチャードは顔や体にかけて…。
『お前は汚れてるから…似合いだ』…って………。
体中リチャードの匂いで…埋められて咽せそうで…。
僕の部分が全部消されてる感じだった。
僕なのに…僕の体なのに、僕はどこにもいない…。
全部、リチャードのもので…僕が消えて行く。
本当は怖かったけど…何も感じなかった。
口に挿入(い)れ…舌を使え。
口を動かせ…。
けど…僕は人形になって心が消えて抜け殻になって………。
僕が……消えて行って…………。
虚ろになった。
リチャードは怒って………。
でもその時、召使いにリチャードは呼ばれて…部屋を出て行った。
今なら、ほっとした。
けどその時僕は………」
「もう何も、感じなかった?」
キースに聞かれ、ファオンは頷く。
「召使いが来て。
縛られた腕が外され…。
続き部屋のお風呂に入れられた…。
大きな、地下浴場で…凄く洒落ていたけれど…。
大人の召使いに、あちこちされられても、何も感じなかった。
綺麗にされて…食事が出たけど…。
何も、感じなかった。
匂いですら…。
食べ物の匂いじゃ無く…かけられたリチャードの匂いがして…気持ち悪くて、食べられなかった。
無理にスプーンで食べさせられたけど…吐いた。
自分の吐いた物の匂いですら…リチャードの…匂いがした。
気持ち悪くて………。
必死で、今度は人形になろうとした。
感じるから辛い…。
だから…空虚になろうと…した………。
けど…食べられなくて…眠れなくて…僕………空っぽになっていた。
その晩リチャードが来て…また、いっぱいした…。
体に変な物を塗って…体が熱く成ったりおかしくなったけど…。
もう僕…別の誰かのように、自分を感じてた。
リチャードがその時、どう感じてたのか解らない。
僕は…挿入されて仰け反ったり…普通の反応したかも知れないけど…。
もうそれは僕じゃ無かった…。
本物の僕は、空虚だったから………。
次の日の昼間だった…。
その晩ずっとリチャードと一緒で朝も一緒に寝てた。
けど昼頃出かけて行って…。
その間も片時も離れず、体を触られ続けた。
リチャードが消えて…ほっとした。
凄く疲れてた。
どうしようも無いくらい。
そしたら…シーリーンとアリオンが部屋に入って来た。
布にくるまれて…部屋を出て。
馬車に乗って…。
別の屋敷の、寝台にいた。
アリオンとシーリーンと…キリアンも来た。
でも僕その時、疲れ切っていて…。
誰の顔を見ても、何も…感じなかった………」
ファオンは顔を上げる。
「冷たい場所で…僕は空っぽで…。
アリオンが、手をさすってくれた。
シーリーンも後ろから抱きしめてくれた。
二人が…大切に扱ってくれたから…僕は息を吹き返した。
また…世界が戻って来た時…。
僕はずっと、叫んでた。
ただめちゃくちゃに、叫んでた。
アリオンもシーリーンも悲しそうで…キリアンは少し笑って
『好きなだけ叫んでいい』
って…その時ようやく、キリアンの温もりを感じた。
アリオンの温もりも。シーリーンのも。
キリアンが言った。
『お帰り』って。
アリオンもシーリーンも
『もう何も心配しなくていい。
リチャードには二度とさせない』…。
って………。
僕はその時…リチャードと二度と会いたくない。
って思った。
ぞっとした………。
陶器の人形の方が、ずっと暖かく感じる…。
冬だったせいか…。
リチャードの、心が冷たかったからか………。
本当に…怖くて…もう二度と、人形に…虚ろに、空っぽに…なりたくなかった!
僕は僕でいたい!
リチャードには見えなくても…僕の世界があって!
僕の大切な人がいて!
僕は…その人達と触れあって!
暖かい想いがわき出して!
だから二度と!
意志のない人形になりたくない!
あのぞっとする冷たく…小さな手に触れられたくない!
僕の体は僕の物だ!
好きにして、触って…いいものじゃない!
僕…ここに来て《皆を繋ぐ者》にされて…。
あの時に戻ると思った…。
僕…自身では僕の体を好きに出来ない…!
僕の…ものなのに!
…けど…だんだん解ってきた。
レオはリチャードと違う…。
縛るけど。
命じるけど…。
でも違う。
レオは僕を、人形にしたいんじゃないって!
レオは『やり方』を教えてるだけで、僕に空虚になれ。
虚ろになれ!
って言わない…逆に凄く熱くて…ちゃんと温もりがあって…!
リチャードのように僕を消したりはしない!
ちゃんと…僕を見てくれている!
でも《皆を繋ぐ者》だから!
《皆を繋ぐ者》はこうするんだって…それを教えてるだけ………」
ファオンは顔を、下げた。
そして、リチャードを見る。
「僕…あのあと、自分の体が暖かいとも感じられなかった。
暫く…本当に、何も感じられなくなった。
空が青くて綺麗だとか…。
ナイフで腕を切っても…別の世界にいるみたいに、自分の腕が痛いとか…。
感じなかった。
まるで!
どうして僕を消すの!
どうして…物にしてリチャードの物にしたいの!
僕の心は…要らないから?
好きに嬲れる生きたオモチャが欲しいから?
でも僕は人間でいたい!
世界をちゃんと、感じたい!
でもリチャードに抱かれるって言うのは…。
僕を消し去る事を僕は受け入れなくちゃならない!
もう絶対に嫌だ!嫌だ!嫌だ!!」
リチャードは…項垂れきっていた。
キースが囁く。
「…ファオンに…言いたいことは…?」
「もし…俺…が………」
けれど言いかけて、俯く。
そして囁いた。
「…俺…ずっと…俺を見てくれる…受け入れてくれる…愛してくれる相手がいなかった…。
…だ…から………」
けれど、何も言えないように項垂れた。
「…ファオンがどう感じていたか、解ったか?」
リチャードが、頷く。
「上滑りの謝罪程度で…足りると思うか?」
リチャードが首を、横に振る。
そして、すっ…と立ち上がる。
「…二度と…触れない。
お前が…いいと言わない限り…二度と…しない。
ずっと心のどこかで…お前を俺の好きにしたことで…。
お前を俺の物のように…錯覚してた。
けど…俺のものじゃ無いと…なりえないと…はっきりと解った。
謝っても…足りないから…。
今度からはちゃんと態度で…現す。
二度と…こんな風に…好きなようにしようとは…思わない。
他の男がしてるから…俺もしていい。
と、二度と思わない」
ファオンは俯く…リチャードを見た。
震えていた。
キースはそっ…と、リチャードに囁く。
「…シュティッセンに…どう扱うかを教えて貰え。
頼んで…懇願して。
まだロクに愛し方も知らないのに迂闊に手を出した報いだ。
アリオンやシーリーンと自分を同列に扱うな。
解ったな?」
キースは哀れんでるように見えた。
リチャードの事を。
けれどリチャードには、哀れみは屈辱だったから…。
あえてその屈辱を罰の代わりに受けてるように…ファオンには見えた。
黙ってテントを出て行くリチャードを、ファオンは俯いて見送った。
キースはそっと…ファオンに告げた。
「君の言葉はやっと…今リチャードに届いた」
ファオンは涙を流しながら…頷いた。
キースの問いに、ファオンは頷く。
「両手をまた…縛られて上に吊された時…僕…僕…人形じゃ無いって…。
『嫌!もう嫌!』
って…思い切り叫んでも、聞いて貰えない。
腿や…股の辺りに這った、リチャードの冷たい手の感触…今でも覚えてる…。
冬で…暖炉に火が入っていたけど…寒々しい…。
口付けられて…リチャードの綺麗な…ぞっとする顔を見える…。
人形のような…。
綺麗で…冷たい表情。
だから思った。
これは儀式なんだっ…て。
リチャードと同じ、人形にされる儀式なんだ………っ……でも…」
ファオンは身を、切なげにくねらせた。
「僕…嫌だった………。
にん…ぎょうになる…の………」
ファオンは一旦俯き、言葉を飲み込み…。
けれどまた、語り始める。
「…また…始まった。
後ろから挿入(い)れられ…それから正面から、横から……。
何度も、何度も………。
それからまた口に挿入(い)れられて…。
リチャードは顔や体にかけて…。
『お前は汚れてるから…似合いだ』…って………。
体中リチャードの匂いで…埋められて咽せそうで…。
僕の部分が全部消されてる感じだった。
僕なのに…僕の体なのに、僕はどこにもいない…。
全部、リチャードのもので…僕が消えて行く。
本当は怖かったけど…何も感じなかった。
口に挿入(い)れ…舌を使え。
口を動かせ…。
けど…僕は人形になって心が消えて抜け殻になって………。
僕が……消えて行って…………。
虚ろになった。
リチャードは怒って………。
でもその時、召使いにリチャードは呼ばれて…部屋を出て行った。
今なら、ほっとした。
けどその時僕は………」
「もう何も、感じなかった?」
キースに聞かれ、ファオンは頷く。
「召使いが来て。
縛られた腕が外され…。
続き部屋のお風呂に入れられた…。
大きな、地下浴場で…凄く洒落ていたけれど…。
大人の召使いに、あちこちされられても、何も感じなかった。
綺麗にされて…食事が出たけど…。
何も、感じなかった。
匂いですら…。
食べ物の匂いじゃ無く…かけられたリチャードの匂いがして…気持ち悪くて、食べられなかった。
無理にスプーンで食べさせられたけど…吐いた。
自分の吐いた物の匂いですら…リチャードの…匂いがした。
気持ち悪くて………。
必死で、今度は人形になろうとした。
感じるから辛い…。
だから…空虚になろうと…した………。
けど…食べられなくて…眠れなくて…僕………空っぽになっていた。
その晩リチャードが来て…また、いっぱいした…。
体に変な物を塗って…体が熱く成ったりおかしくなったけど…。
もう僕…別の誰かのように、自分を感じてた。
リチャードがその時、どう感じてたのか解らない。
僕は…挿入されて仰け反ったり…普通の反応したかも知れないけど…。
もうそれは僕じゃ無かった…。
本物の僕は、空虚だったから………。
次の日の昼間だった…。
その晩ずっとリチャードと一緒で朝も一緒に寝てた。
けど昼頃出かけて行って…。
その間も片時も離れず、体を触られ続けた。
リチャードが消えて…ほっとした。
凄く疲れてた。
どうしようも無いくらい。
そしたら…シーリーンとアリオンが部屋に入って来た。
布にくるまれて…部屋を出て。
馬車に乗って…。
別の屋敷の、寝台にいた。
アリオンとシーリーンと…キリアンも来た。
でも僕その時、疲れ切っていて…。
誰の顔を見ても、何も…感じなかった………」
ファオンは顔を上げる。
「冷たい場所で…僕は空っぽで…。
アリオンが、手をさすってくれた。
シーリーンも後ろから抱きしめてくれた。
二人が…大切に扱ってくれたから…僕は息を吹き返した。
また…世界が戻って来た時…。
僕はずっと、叫んでた。
ただめちゃくちゃに、叫んでた。
アリオンもシーリーンも悲しそうで…キリアンは少し笑って
『好きなだけ叫んでいい』
って…その時ようやく、キリアンの温もりを感じた。
アリオンの温もりも。シーリーンのも。
キリアンが言った。
『お帰り』って。
アリオンもシーリーンも
『もう何も心配しなくていい。
リチャードには二度とさせない』…。
って………。
僕はその時…リチャードと二度と会いたくない。
って思った。
ぞっとした………。
陶器の人形の方が、ずっと暖かく感じる…。
冬だったせいか…。
リチャードの、心が冷たかったからか………。
本当に…怖くて…もう二度と、人形に…虚ろに、空っぽに…なりたくなかった!
僕は僕でいたい!
リチャードには見えなくても…僕の世界があって!
僕の大切な人がいて!
僕は…その人達と触れあって!
暖かい想いがわき出して!
だから二度と!
意志のない人形になりたくない!
あのぞっとする冷たく…小さな手に触れられたくない!
僕の体は僕の物だ!
好きにして、触って…いいものじゃない!
僕…ここに来て《皆を繋ぐ者》にされて…。
あの時に戻ると思った…。
僕…自身では僕の体を好きに出来ない…!
僕の…ものなのに!
…けど…だんだん解ってきた。
レオはリチャードと違う…。
縛るけど。
命じるけど…。
でも違う。
レオは僕を、人形にしたいんじゃないって!
レオは『やり方』を教えてるだけで、僕に空虚になれ。
虚ろになれ!
って言わない…逆に凄く熱くて…ちゃんと温もりがあって…!
リチャードのように僕を消したりはしない!
ちゃんと…僕を見てくれている!
でも《皆を繋ぐ者》だから!
《皆を繋ぐ者》はこうするんだって…それを教えてるだけ………」
ファオンは顔を、下げた。
そして、リチャードを見る。
「僕…あのあと、自分の体が暖かいとも感じられなかった。
暫く…本当に、何も感じられなくなった。
空が青くて綺麗だとか…。
ナイフで腕を切っても…別の世界にいるみたいに、自分の腕が痛いとか…。
感じなかった。
まるで!
どうして僕を消すの!
どうして…物にしてリチャードの物にしたいの!
僕の心は…要らないから?
好きに嬲れる生きたオモチャが欲しいから?
でも僕は人間でいたい!
世界をちゃんと、感じたい!
でもリチャードに抱かれるって言うのは…。
僕を消し去る事を僕は受け入れなくちゃならない!
もう絶対に嫌だ!嫌だ!嫌だ!!」
リチャードは…項垂れきっていた。
キースが囁く。
「…ファオンに…言いたいことは…?」
「もし…俺…が………」
けれど言いかけて、俯く。
そして囁いた。
「…俺…ずっと…俺を見てくれる…受け入れてくれる…愛してくれる相手がいなかった…。
…だ…から………」
けれど、何も言えないように項垂れた。
「…ファオンがどう感じていたか、解ったか?」
リチャードが、頷く。
「上滑りの謝罪程度で…足りると思うか?」
リチャードが首を、横に振る。
そして、すっ…と立ち上がる。
「…二度と…触れない。
お前が…いいと言わない限り…二度と…しない。
ずっと心のどこかで…お前を俺の好きにしたことで…。
お前を俺の物のように…錯覚してた。
けど…俺のものじゃ無いと…なりえないと…はっきりと解った。
謝っても…足りないから…。
今度からはちゃんと態度で…現す。
二度と…こんな風に…好きなようにしようとは…思わない。
他の男がしてるから…俺もしていい。
と、二度と思わない」
ファオンは俯く…リチャードを見た。
震えていた。
キースはそっ…と、リチャードに囁く。
「…シュティッセンに…どう扱うかを教えて貰え。
頼んで…懇願して。
まだロクに愛し方も知らないのに迂闊に手を出した報いだ。
アリオンやシーリーンと自分を同列に扱うな。
解ったな?」
キースは哀れんでるように見えた。
リチャードの事を。
けれどリチャードには、哀れみは屈辱だったから…。
あえてその屈辱を罰の代わりに受けてるように…ファオンには見えた。
黙ってテントを出て行くリチャードを、ファオンは俯いて見送った。
キースはそっと…ファオンに告げた。
「君の言葉はやっと…今リチャードに届いた」
ファオンは涙を流しながら…頷いた。
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