83 / 286
二つを兼ねる者 セグナ・アグナータ
83 ぼやくファルコン
しおりを挟む
皆が居留地に戻ると、アランが駆け寄って来る。
「襲われたのか?!」
だがファルコンが、憮然として言った。
「襲った」
「?!」
テントから顔を出す、キースとシーリーンもが、互いを見交わし首を捻った。
皆が傷を負っていたので、全員が広場の石の椅子にかけ、治療士の手当てを受ける。
ファルコンがジロリとファオンを見る。
「どういう了見で一人、突っ走ったんだ?!」
ファオンはまだ、体が沸騰したように熱く、ぼーっとしていた。
が、振り向く。
「…杖付きを見つけたから…つい」
アリオンが静かに尋ねる。
「あれだけの群れに、襲いかかられず殺れると思ったのか?」
セルティスも怒鳴る。
「たった一人で…?!」
ファオンは皆が怒ってる様子に、俯く。
「…シリルローレルといた時…たった二人だったし、杖付きを見つけたらとにかく直ぐ殺せと言われていて…。
その…つい、習慣で」
そこまで聞いた時、椅子の端で立って聞いていたアランが溜息をつき、キースとシーリーンは顔を見合わせた。
ファルコンがとうとう、怒鳴る。
「手前にいた100もいる《化け物》は目に、入ってなかったのか?!」
「…ええと…」
ファオンが顔を上げると、アリオンも、セルティスもが俯いて溜息を吐き出した。
レオが背と胸の傷を、治療士に布を巻かれながら言った。
「ファオンを同行させる時、防具を着けないと駄目かもな」
セルティスが顔を上げる。
「…だがそれだと、剣を振り遅れる」
アリオンも頷く。
「一瞬でも早く…剣を振り切るから今まで怪我しなかった」
ファオンが顔を上げ、怪我だらけの同行者を見つめ、再び項垂れる。
「…ごめんなさい…」
だがレオはそれには答えず、アリオンに振り向く。
「キリアンがいた時も、こんな具合か?」
アリオンはレオに見つめられて頷く。
「今日はまだマシな位だ。
群れの後ろにいた杖付きを殺る為、横の高い岩の上から、群れのまっただ中へ飛び降りたんだから」
ファルコンが怒って言った。
「今日、群れに突っ込んだのは俺達って訳だ!」
レオがファルコンに振り向く。
「だが巣を一つ、潰したのは確かだ。
今日の戦いは、数日分を一気に片づけた」
「…しかも午前中。
戦ったのはほんの数分間」
セルティスの呟きに、ファルコンが怒鳴る。
「だが死にに飛び込んだのと変わらないぜ!」
レオが溜息交じりに呟く。
「良く…付いてきてくれた。感謝する。
これからあれをやる時は、もう少し人を増やす」
ファルコンが大きく頷き、セルティスもアリオンもほっとして肩を下げた。
レオだけが、治療を終え立ち上がり、項垂れるファオンの肩をぽん。と叩いて言った。
「素晴らしい働きだ」
ファオンは顔を上げた。
けれどテントに戻って行くレオの、背に巻かれた布を見て、喜びの表情は浮かばなかった。
キースが、治療を終えテントに戻って行くファルコンの背に尋ねる。
「…巣を潰したのか?!」
けれとセルティスもが、立ち上がりながら言った。
「…ああ。
ファオンは杖付きを見た途端突っ走って行き、レオはファオンが《化け物》らに見つからないよう、俺達に襲撃命令を出し、俺達は突っ込んで行った」
そして振り向き、顔を引き締め低い声で言う。
「100匹あまりの《化け物》相手に、たった四人で真正面から」
ファルコンが、足を止めて振り向いて怒鳴る。
「アリオンにじっくり、話を聞け!
俺は今、話す気分じゃ無い!」
セルティスもファルコンの言葉に頷くと、自分のテントに戻って行く。
アランは俯くファオンにそっと囁く。
「俺のテントで休んでろ」
ファオンは顔を下げたまま頷き、立ち上がった。
アリオンが、去ろうとするファオンの背に叫ぶ。
「気にするな!
お前の活躍は快挙だ!」
ファオンは項垂れたまま、そう言ってくれるアリオンに振り向き、感謝の籠もる瞳で見つめて頷く。
けれどアランのテントに、背をまるめ、項垂れたまま歩いて行った。
アランが治療を終えたアリオンに尋ねる。
「事情を聞けるか?」
キースも、シーリーンもが、アリオンの両横の椅子に座り、腕組みしてアリオンを見つめる。
その時、離れた場所でこっそり伺っていたリチャードとデュランもがやって来ると、アリオンから少し離れた椅子に座る。
アリオンは皆に無言で促され、溜息と共にさっきの顛末を話し始めた。
「襲われたのか?!」
だがファルコンが、憮然として言った。
「襲った」
「?!」
テントから顔を出す、キースとシーリーンもが、互いを見交わし首を捻った。
皆が傷を負っていたので、全員が広場の石の椅子にかけ、治療士の手当てを受ける。
ファルコンがジロリとファオンを見る。
「どういう了見で一人、突っ走ったんだ?!」
ファオンはまだ、体が沸騰したように熱く、ぼーっとしていた。
が、振り向く。
「…杖付きを見つけたから…つい」
アリオンが静かに尋ねる。
「あれだけの群れに、襲いかかられず殺れると思ったのか?」
セルティスも怒鳴る。
「たった一人で…?!」
ファオンは皆が怒ってる様子に、俯く。
「…シリルローレルといた時…たった二人だったし、杖付きを見つけたらとにかく直ぐ殺せと言われていて…。
その…つい、習慣で」
そこまで聞いた時、椅子の端で立って聞いていたアランが溜息をつき、キースとシーリーンは顔を見合わせた。
ファルコンがとうとう、怒鳴る。
「手前にいた100もいる《化け物》は目に、入ってなかったのか?!」
「…ええと…」
ファオンが顔を上げると、アリオンも、セルティスもが俯いて溜息を吐き出した。
レオが背と胸の傷を、治療士に布を巻かれながら言った。
「ファオンを同行させる時、防具を着けないと駄目かもな」
セルティスが顔を上げる。
「…だがそれだと、剣を振り遅れる」
アリオンも頷く。
「一瞬でも早く…剣を振り切るから今まで怪我しなかった」
ファオンが顔を上げ、怪我だらけの同行者を見つめ、再び項垂れる。
「…ごめんなさい…」
だがレオはそれには答えず、アリオンに振り向く。
「キリアンがいた時も、こんな具合か?」
アリオンはレオに見つめられて頷く。
「今日はまだマシな位だ。
群れの後ろにいた杖付きを殺る為、横の高い岩の上から、群れのまっただ中へ飛び降りたんだから」
ファルコンが怒って言った。
「今日、群れに突っ込んだのは俺達って訳だ!」
レオがファルコンに振り向く。
「だが巣を一つ、潰したのは確かだ。
今日の戦いは、数日分を一気に片づけた」
「…しかも午前中。
戦ったのはほんの数分間」
セルティスの呟きに、ファルコンが怒鳴る。
「だが死にに飛び込んだのと変わらないぜ!」
レオが溜息交じりに呟く。
「良く…付いてきてくれた。感謝する。
これからあれをやる時は、もう少し人を増やす」
ファルコンが大きく頷き、セルティスもアリオンもほっとして肩を下げた。
レオだけが、治療を終え立ち上がり、項垂れるファオンの肩をぽん。と叩いて言った。
「素晴らしい働きだ」
ファオンは顔を上げた。
けれどテントに戻って行くレオの、背に巻かれた布を見て、喜びの表情は浮かばなかった。
キースが、治療を終えテントに戻って行くファルコンの背に尋ねる。
「…巣を潰したのか?!」
けれとセルティスもが、立ち上がりながら言った。
「…ああ。
ファオンは杖付きを見た途端突っ走って行き、レオはファオンが《化け物》らに見つからないよう、俺達に襲撃命令を出し、俺達は突っ込んで行った」
そして振り向き、顔を引き締め低い声で言う。
「100匹あまりの《化け物》相手に、たった四人で真正面から」
ファルコンが、足を止めて振り向いて怒鳴る。
「アリオンにじっくり、話を聞け!
俺は今、話す気分じゃ無い!」
セルティスもファルコンの言葉に頷くと、自分のテントに戻って行く。
アランは俯くファオンにそっと囁く。
「俺のテントで休んでろ」
ファオンは顔を下げたまま頷き、立ち上がった。
アリオンが、去ろうとするファオンの背に叫ぶ。
「気にするな!
お前の活躍は快挙だ!」
ファオンは項垂れたまま、そう言ってくれるアリオンに振り向き、感謝の籠もる瞳で見つめて頷く。
けれどアランのテントに、背をまるめ、項垂れたまま歩いて行った。
アランが治療を終えたアリオンに尋ねる。
「事情を聞けるか?」
キースも、シーリーンもが、アリオンの両横の椅子に座り、腕組みしてアリオンを見つめる。
その時、離れた場所でこっそり伺っていたリチャードとデュランもがやって来ると、アリオンから少し離れた椅子に座る。
アリオンは皆に無言で促され、溜息と共にさっきの顛末を話し始めた。
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる