森と花の国の王子

あーす。

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合流の打ち合わせ

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 ザムル城で、ゼイブンは結局。
たいそう長身で逞しいバルバロッサ王にお姫様だっこされ、ぐったりしていた。

一階から城内に攻め入り、どんどん上の階へと駆け上がり、城を制圧して行く部下達に、王は指示を出しながらも。
チラ…と腕の中の、やつれたゼイブンを見た。

肩までのウェーブがかかった、柔らかなグレイッシュな栗毛が額や頬に纏わり付き、長い睫と半分付せられたブルー・グレーの瞳。
鼻筋が通り、整いきった美麗な顔立ち。
抱いている感触は、確かに青年の体だったけれど。
自分の身長を考えると、組み敷くのに丁度良い大きさ。

それで思わず呟いた。
「…こうしてると、食指をそそる凄い美青年だな…」

ゼイブンはそれを聞くなり目を見開き、腕を振り回して暴れ出し
「ギュンター!
ギュンター!
お前のがまだ、全っ然安心だ!
今直ぐ来てくれ!!!」
と喚き出した。

ギュンターはエウロペ、ラフォーレンらとダンザインからの心話を受け、バルバロッサ王邸宅の様子を聞いていたけれど。
エウロペに視線向けられ、仕方なしに王の側に歩いて行く。

両手広げ、王からゼイブンを引き受けようとしながら、ぼやいた。
「…いつもは、俺は乱暴だから。
って、避けまくってる癖に…」
ゼイブンは両腕まだ振り回しながら、怒鳴る。
「オーガスタスがいたら、オーガスタスがいいに決まってるが!
お前は両腕塞がってたら、幾ら何でも俺を殴れないからな!!!」

バルバロッサ王は振り回すゼイブンの腕が、顔に当たりそうで。
首を傾け、避けながら呻く。
「…もう大丈夫だ。
今のお前は、全然ソノ気が起こらない」

ゼイブンは腕を振り回すのを、ピタ!と止め、王を見た。
間近で見ると、浅黒い肌で青い瞳で、通った鼻筋で綺麗な顔立ちの、ほんっとにイイ男だったけど。
睨み付けて唸る。
「…いいか。
俺には愛妻も息子も居るんだ!
今更ホられ、男に趣旨替えしましたなんて。
そんな恥ずかしい告白は、させないでくれ」

バルバロッサ王はゼイブンを、マジマジと見る。
「…嫁はともかく、息子まで居るのか?」
ゼイブンは頷く。
「凄く毛色のいい美女で、俺はぞっこんで口説き落とし、めでたく結婚にこぎ着けた」

ギュンターはそれを聞き、ため息交じりに呻く。
「…けどエッチがさほど好きじゃなくて、息子が生まれたら途端、息子に夢中で。
それ以来、ほとんどエッチの相手してくれなくなったんだよな?確か。
お前ほどエッチ大好き男が。
なんでエッチあんまり好きじゃない、潔癖症の女に惚れるかな…」

ゼイブンは歯を剥いた。
「他に言われるならともかく。
お前にだけは、絶ーーー対、言われたくない!!!
男なんて恋愛対象外の、育ちの良いノンケの貴公子に惚れ込んで、強引に関係続けてるお前にはな!!!」

エウロペも思ったけど。
ラフォーレンが言った。
「目くそ鼻くそ」

途端、ギュンターとゼイブンに、揃ってきっ!!!と振り向き睨まれて。
ラフォーレンはさっ。
と二人から顔を背けた。

エウロペがすかさず王の前に進み出ると、ダンザインからの通話を簡略化してバルバロッサ王に伝え、意向を告げる。
「…とりあえず私は、邸宅に戻りたいんですが」
ギュンターはそれを聞くと
「俺はオーガスタスと合流したい。
流石に一人で敵陣の間を突っ走るのは、しんどいだろう?」
と申し出て、王の腕の中の、ゼイブンを見る。
「…お前がしゃんとしてたら。
短剣使いだから、同行を頼みたいが」
とぼやく。

ラフォーレンは、戦闘時は頼もしく、有能だったバルバロッサ王の部下らが。
報告のため、部屋を入れ替わり立ち替わり出入りする全員が全員。
そろいもそろって自分を、色を含んだやらしい目付きでジロジロ見て行くのを察し。
顔を下げ、貞操の危機をひしひしと感じ、呻く。
「私はエウロペ殿と、行動を共にしたい。
(心から)」
そう切望を口にした。

ゼイブンは、ギュンターが望んだのか。
ダンザインからいきなり光が流れ込み、疲労が一気に軽くなるのを自覚し、王に
「下ろしてくれ」
と告げる。

王に腕を下げられ、足を床に着いて立つ。
ものの、馬に乗るくらいは出来ても、視界が軽くブレまくるので、短剣投げるのは無理。

それでギュンターに言い含めた。
「今短剣投げても、的に当たらず凄く危険だ。
ローフィスはオーガスタスに、随行できないのか?」

ギュンターはそれをダンザインに伝えた。
ダンザインは短剣使いが、誰か調達できないか。
を、心話で皆に尋ねまくり、結局テリュスが
“行く先に、化け物はもう出ないんだな?!
戦う相手は人間なんだな?!”
と念押され。
繋がってるディングレーに
“化け物全部倒したからこそ、左将軍とアイリスはぶっ倒れてる”
と言われ、同意した。
“分かった。
なら直ぐオーガスタスを追う”

エウロペが、心話で怒鳴る。
“で、レジィはまだふらふら?!
彼の中のシャーレが、力使ったから?!”

けれどテリュスでもエリューンでもなく、ミラーシェンが叫び返す。
“僕たちを光で包んで、動く死体から助けてくれたんだ!!!”

エウロペは暫し沈黙した後
「…動く死体?」
と呻く。
側に居たゼイブンが
傀儡くぐつの凶王って“障気”が、出たんだろう?!
ヤツに操られると、猛烈に標的に襲いかかり、斬られて死体になっても操られる。
死体に触れた生きたヤツは、また標的に斬りかかり…。
つまり標的にされると、斬られて死ぬか、襲いかかって来るヤツを斬っても、死体になった敵に触れると、乗っ取られるから…。
ともかく、厄介な相手だ」

ラフォーレンはにこにこ笑うと
「こっちにいて、正解でしたねぇ。
目を背けてたら、どんだけの美女も醜女も。
見ずに済みましたから」
とのたまって、ゼイブンとエウロペに呆れた視線を向けられた。

ギュンターはもう背を向け、行きかけるので、王が尋ねる。
「左将軍のディアヴォロスってヤツを、迎えに行くのか?」
ギュンターは頷く。
「いつも冷静なオーガスタスが。
事、ディアヴォロスに関しては、めちゃ取り乱すから心配だ」

王は興味を引かれ、頷く。
「光竜憑きか。
俺も行きたいところだが。
ここの采配も、その他采配もあるしな」

ギュンターは頷くと、行こうと背を向け、けど歩を止め、振り向いて尋ねた。
「あ、で、ディアヴォロスら一行。
あんたの邸宅に連れて行くけど…いいよな?」

王は頷く。
「…ああ。
…ちょっと待て。
でも確か左将軍は、凄くいい男で。
絶対寄越すなと、誰か騒いでたな」

エウロペが、気づいてすかさず口挟む。
「デルデロッテとノルデュラス公爵?」

聞いた後、まだ自分を見つめてるギュンターに、バルバロッサ王は
「…その二人か。
全っ然構わないから、連れて来い」
と言い渡した。

ギュンターは頷くと、廊下へ消えて行く。

エウロペも
「では先に帰ってます」
と王に告げ、歩き出す。

その後、同行するラフォーレンとゼイブンが、自分の両脇と背に、抱きつくようにぴったり張り付くので。
邪魔で歩きにくくて
『もう少し離れて』
と言いかけ…。

周囲、体格の良い浅黒い肌の精悍なバルバロッサ王の騎士らが、通り過ぎる度ゼイブンとラフォーレンを、女を見るようにじっとりした色目で見て行くのに気づき。
納得行って、ため息吐いた。

けれどやっぱり歩きにくくて
「…幾ら何でも、彼らもまだ仕事中だから。
集団で手込めには、しないだろう?」
とぼやく。

けど止めてあった馬に辿り着く、直前。
通り過ぎた精悍な騎兵に
「一人で二人、満足させる気か?」
と言われ。
背後に居た騎兵も
「一人、分けてくれたら。
俺らが相手するのにな」
と言い。
その男は背後の五人に頷き、五人の精悍な騎兵らも、笑顔で頷く。
「うんとよがらせてやるぜ!!!」
「天国に連れて行ってやる」
「どれだけでも、イき放題!!!」
と、揃って請け負うので。

ゼイブンとラフォーレンは青ざめきって、なお一層エウロペの背にぴったり張り付き
「彼じゃ無いと、満足出来ない特殊な体質で…」
ラフォーレンはエウロペの背に、顔を埋めながらも呻き、ゼイブンも
「俺もです」
と呻き、エウロペはあと数歩の距離を、もっと歩きにくくなって。

辿り着くのに、かなりの時間を要した。
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