森と花の国の王子

あーす。

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決戦

更に強大化する化け物

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 宙に浮く神聖騎士らの手から、光が放射されるのと。
二人の神聖騎士へと、周囲の黒い靄が襲いかかったのは、ほぼ同時。

神聖騎士に襲いかかる靄は、神聖騎士を包む光に触れた途端、霧散し。
神聖騎士らが発した光の放射は、ダッケズ…正式名ダッケンダグズを直撃する。

ダッケンダグズは全てのトゲと角から真っ黒な靄を出し、自分の身を光の砲弾から護ろうとした。

が真っ白な光は、身を守る黒い靄を弾き飛ばしながら、激しくブチ当たる。
ダッケンダグズの肌は一部焼けたように血肉を覗かせ、獣は大きな声上げ、痛みにもがき咆吼する。

ウギィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

ディアヴォロスは、くらっ!と身を揺らすアイリスの身を支え、素早く抱き上げ、後方シェイルの横に駆け込み、光の結界内に逃げ込む。

「…アイリス…どうしたの?!」
シェイルの問いに答えず、ディアヴォロスはアイリスの足を地に着け、横で抱くように身を支えた。

アイリスが、くらくらする頭に手を当て、呻く。
「…凄く役得で、もう少し抱き上げられたままでいてくれたら、もっと嬉しかったんですが…」

背後でディンダーデンが、腕組んで唸る。
「お前みたいな筋肉質のデカい男。
幾らディアヴォロスだって、抱き上げ続けるのは腕が保たず、無理だ」

シェイルが振り向いて、ディンダーデンに尋ねる。
「それ、もしかして妬いてる?」

ディンダーデンはとうとう、シェイルに歯を剥いた。
「俺があいつアイリスにソノ気になるのは!
あいつが、うんとうんとうんと弱って、可愛らしい時だけだ!!!」

アイリスはまだ頭に手を当て支え、呻く。
「アースルーリンドじゃ…幾ら召喚しても、ここまでにならなかったのに…」

ディアヴォロスは神聖騎士らと回路を繋ぐ、アイリスに囁く。
「ここでは神聖騎士だけじゃなく、『影』もが力を操りにくい。
それで普段より、かなり余分に光を使うから…」

アイリスはふと気づき、顔を上げた。
ディアヴォロスから光竜ワーキュラスの、いやしの光が流れ込み、目眩めまいおさまって来る。
「…それで…召喚した神聖騎士が、超大物の『影』と戦った後ぐらい…一気に疲労するんですね?」

ディアスはアイリスへと癒しの光を送り続けながら、神聖騎士の戦いを見つめる。
「…まだ…来るぞ」

神聖騎士らは続けざまに光の砲弾を放ち、ダッケンダグズの体を護る靄を力尽くで弾き飛ばし、肌を抉り続ける。

黒く鋭いトゲだらけの肌の、1/3が赤く爛れ、肉を覗かせ、焼け焦げた匂いが洞窟内に充満し始める。

“デカいだけあって、しぶといな!!!”
ドロレスが叫び、尚も両手後ろに引く。

ガガン!!!

両手突き出した途端、激しい光の放射が再びダッケンダグズの肌を抉った。

ギィヤァオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

ダッケンダグズは激しく咆吼しながらも、鉤爪の大きな腕を振り下ろし、トゲだらけの尻尾を振り回し、暴れ狂う。

ドガッ!!!
ガガンッ!!!

神聖騎士が軽く避けるので、鉤爪は岩壁を削り、尻尾は横壁へめり込んだ。

アイリスは神聖騎士が光の砲弾を放つ度、がくん!がっくん!と身が揺れるのを意識する。
その都度、ワーキュラスからの光が、神聖騎士と自分。
そして西の聖地を繋ぐ、回路に流れ込み、神聖騎士が光を使うたび細くなる回路を支え、維持するための凄まじい負担を、減らしてくれた。

だが突然、ディアヴォロスとアイリス、シェイルの目前に、さっきの大きな顔。
『闇の第三』が現れ、青く光る目を見開いて怒鳴る。

“なる程!!!
『影』で恐れられているダッケンダグズも!!!
光竜が力を貸せば…殺られるのか!!!
だが召喚主も、たいそう大変そうだ…”

ディアヴォロスは眉間を寄せ、大きな黒い靄の、青く目を光らせる顔をめつける。

“これで…どうだ!!!
さっき押さえ付けた時、我が操れる芽を、あヤツダッケンダグズに埋め込んだ!!!
我が眷属、シェーホクスを融合させてやる!!!
『影の国』で一・二を争う最強眷属の合体だ!!!
召喚主の命尽きる前に、倒せるかな?!”

光の砲弾の連射で、姿をほぼ光の中に消していたダッケンダグズが。
突如、吠え始める。

ウィィィィギュアァァァァァァァァァァァァァ!!!

神聖騎士らが膨れ上がるダッケンダグズの姿に気づき、思わず揃って背後に下がる。

がっ…がんっ!!!
ドォオオオオオン!!!

ハデな音が、洞窟中に鳴り響く。
合体した魔物はどんどん大きくなって、天井を突き破り始める。
洞窟の天井が、大きく揺れたかと思うと崩れ始め、上から岩や小石が降って来る。

“くっ!!!”

ムアールは身をひるがえして飛び下がり、光の結界内に居る皆の天井が、崩れ落ちるのを手を上に突き出し、空圧で支える。

ザァァッ!!!

ディングレーもディンダーデンもが、巨大な頭上の一枚岩が、周囲の小石をまき散らし、宙で留まるのを見た。

ドロレスが素早く光投げ、大きな一枚岩を砕く。

ばっっっ!!!

光で包み込まれた岩は、光消えた後、細かい砂となり。
ディングレー、ローランデ、シェイルが張った結界でも、防げる程度の衝撃となった。

振り注ぐ砂が、結界の周囲を伝い落ちるのをディングレーもローランデもが、ほっとして見つめる。

が。
ドロレスとムアールが皆の光の結界の、両横の宙に浮かび、背後に振り向く。

どんどん大きさを増し、洞窟の天井を突き破ったダッケンダグズとシェーホクスが合体した新たな魔物は、巨大なコウモリの羽根を生やし、長く鋭い牙の生えた細長い口の、巨大な黒い竜へと変形して行く。

ディアヴォロスは背後に振り向く。
洞窟の入り口へと。
が、洞窟の天井はほぼ崩れ、そこには崩れ落ちた岩だらけの道が出来ていて、両横の壁は背丈を超えたその上が無くなり、上は空が広がっていた。

それでも所々残ってる天井は、いつ崩れるか解らない不安定さ。

ディアヴォロスは素早くアイリスを抱き上げる。
ローランデは直ぐ気づき、ディンダーデンの腕を握り、背後に振り向く。

ディアヴォロスはディングレーを真っ直ぐ見つめ
「走れ!!!
崩れきる前に出る!!!」
と怒鳴った。

その声の途中で、もうローランデは背後に向かって駆け始め、ディンダーデンも血相変えて併走する。
ディングレーはディアヴォロスと併走し、ディアヴォロスに見つめられて頷かれ。
アイリスを抱き上げて走るディアヴォロスの、背後を通ってシェイルと、併走し始めた。

シェイルがでこぼこした岩に足を取られかけると、さっ!と腕を掴み支える。

「俺の…護衛?!」
転ぶところを助けられ、直ぐ走り出しながらシェイルがディングレーを見上げ、尋ねる。
ディングレーは頷いた後
「抱え上げた方が…」
と呟く。
が、ディアヴォロスは素早く囁き返す。
「君が、逃げ遅れる」

ディングレーはそれを聞くと
「…つまり抱えたシェイルも一緒に、逃げ遅れるな…」
と独り言のように呟く。

シェイルはディングレーの掴む手を振り払い
「ちゃんと走れる!」
と叫んだ。

けどまた。
あまりにもでこぼこし過ぎてる、崩れた岩の隙間に足を取られかけ。
ディングレーに腕を掴まれ、転びそうなところを支えられた。
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