森と花の国の王子

あーす。

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決戦

問題の洞窟に辿り着く一行

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 一行はその後、脇目も振らず先頭のディアヴォロスの背を、ひたすら追った。
森の中の岩場を駆け昇り、足場の悪い淵を駆け抜け、木々の隙間を縫うように坂を上り…。
やがて岩場だらけの道を、緩やかに下り始める。

後続のディングレー、アイリス、ローランデ、ディンダーデンらは、木陰にチラと姿を見せる、紅蜥蜴ラ・ベッタの手の者らしい盗賊が。
シェイルをまるで特大の宝石のように、見つめてるのに気づく。

が、あまりの速度にどの盗賊も襲うのを諦め、姿を引っ込めて行く。
のでディンダーデンは幾度も
『ついて行けるか!
速度を落とせ!!!』
とディアヴォロスに、怒鳴りそびれた。

岩場を下り、横の坂を下りて行く。
下に降りると、平らな土。
そして下って来た岩場は、洞窟の天井だった。

ディアヴォロスが洞窟の前で馬の歩を止め、後続が降りきるのを待つ。

最後尾、ディンダーデンの馬が土に歩を付けると。
一気に馬の首を洞窟に向け、駆け込んで行く。
背後ディングレーも直ぐ続き、アイリスは“仕方無い”
と言うように若干躊躇ためらいながら。
それでも馬をかっ飛ばし、ディングレーの後を追う。

ローランデはシェイルを促すように、しなやかに優しく併走し、シェイルもローランデから少しだけ遅れ、付いて行く。

ディンダーデンはため息吐くと
「(これ…思いっきり躊躇ためらう進軍だよな)」
と馬を促すのを躊躇ちゅうちょし。
が、アイリス同様行くしか無いと、馬を進めた。
ただし洞窟に入った途端
「入り口で見張るって選択、ナイのか?!!!!」
と怒鳴った。

中は広く、暗い。
がちょい走ったところで、皆馬を止めて下りてるのを目にし、ディンダーデンは思いっきり、手綱引いた。

全員さっさと降りると、その先。
岩が入り組み、人一人が通れる程度の、細い隙間を入って行く。

ディンダーデンも、馬から降りる。
が、やっぱり叫んだ。
「ここで待ってて、いいか?!」

が、入り組んだ岩場の先から、ディアヴォロスの声。
「かえって、危険だ!!!」

ディンダーデンはそれを聞くなり、慌てて歩を進めた。

周囲がゴツゴツした岩だらけで、高い天井の、曲がりくねった細道を進む。
幸い皆が身に付けてるペンダントが光り始め、暗闇の筈が、かなり明るかった。

ディンダーデンは突如、最後尾のシェイルと、ちょい先のローランデを押し退け。
腕を伸ばし、その先のアイリスの衣服を掴み、振り向かせる。
「残ってた方が危険って、どーゆー意味だ?!」
アイリスが、目を見開いて振り向く。

ローランデとシェイルの頭上に上半身迫り出し、衣服掴んでるディンダーデンの、顔は美麗だが体格も態度も迫力ある様に。
ローランデもシェイルも、頭屈めて顔をしかめてる。

アイリスは尚も言葉が出ず、表情ダケは雄々しいけど、説破詰まったようなディンダーデンの“気”に、呆れた。
「…怖い者なしの、猛者の態度とは思えない…」
は、怖く無い!!!」
「…で、しょうね…。
『闇の第二』が貴方の存在を感知し、貴方が乗っ取られたら。
こっちが危険って事だと思います」

ディンダーデンは一行で一番年下の、その男のすっとぼけた返答に、まだ握った衣服を放さず…どころか、ぐい…!と引き寄せ、怒鳴る。
「お前、神聖神殿隊付き連隊騎士の長だろう?!
もらったペンダント(護符)はちゃんと付けてる!
それでも危険か?!」
「…危険じゃなかったら、ディアヴォロスはそう言ってる」

ディンダーデンはぐっ!と言葉に詰まり、また優雅な美男アイリスを、忌々いまいましそうに睨んだ。

「…キス、したりして」
「…シェイル…」

ディンダーデンが顔を下げると、迫り出した自分の上半身の、下で頭屈めてるローランデとシェイルが小声で話してた。

「アイリスにキスしないんなら、今直ぐどいて」
シェイルに上目遣いで睨まれ、ディンダーデンはアイリスの衣服を、ぱっ!と放した。

「…そんな気分じゃ無いし、今のこいつは可愛くない」

シェイルとローランデは、顔を見合わせた。
「…アイリスはいつでも可愛いと思うけど」
ローランデが言うと、シェイルは肩すくめた。
「アイリスが可愛い態度取るのは、君にだけ、なんだぜ?」
ローランデは目を見開いた。
「他は違うの?」
シェイルは首を縦に振った。
「全然」

ディンダーデンも、唸る。
小賢こざかしく生意気で、憎たらしい」

ローランデは歩きながら呆けた。
「私の感想と、全然違う」
シェイルも頷いたけど。
背後から続く、ディンダーデンも頷いた。

アイリスは前歩くディングレーが会話を聞き、振り向くのを見、眉間寄せる。
「貴方も、ディンダーデンと同意見?」
ディングレーは無言で、頷いた。

けれど突然。
黒い靄が周囲に漂い始め、シェイルは怒鳴る。
「マズい!
ローランデ、ディンダーデンを護って!」

ディンダーデンは異論唱えようとしたけど。
ローランデはディンダーデンに身を寄せると、手を十時に振って小声で呪文を唱えてる。
やがてローランデのペンダントは真っ白く輝き始め、ディンダーデンのペンダントも同調するように、暗闇に白く光り輝く。
やがて光は周囲を覆い始め、二人は光の結界で包まれた。

シェイルは何か鋭い声で呪文唱え、光の結界張っても尚、侵入しようとする黒いトゲのような鋭い靄を、光の雷土いかづちで弾き飛ばしてた。

「そこに、そのまま!!!」

ディアヴォロスの声が飛ぶと、ディングレーがやって来て、ローランデとディンダーデンの前に立ち、護りに入る。

ディングレーは二人に近づくと、呪文も唱えてないのにペンダントが真っ白に輝き、ディンダーデンとローランデの二人と共に、光の結界に包まれる。

光りの結界は、皆の下げてるペンダントの白く輝く光が一人増えて増量され、眩いばかりに白く輝き出す。

が、それでも光を突き破ろうと、トゲのような黒い靄は、地を這い光の結界に、攻撃を加える。

シェイルは更に呪文唱え、光の結界に突っ込む、黒く大きなトゲを弾き飛ばした。
やがてディングレーに吸い寄せられるように地を這う、大きく黒く鋭い幾本ものトゲは、ディングレーに近づいた途端、弾かれ砕け散る。

ローランデが首捻ってるディンダーデンに、小声で解説した。
「ディングレーの「左の王家」は。
『光の民』の血を継いでるので、『影』に耐性あるんです」

ディンダーデンは自分の斜めの前に立つ、数㎝だけ背の低い、真っ直ぐな黒髪を背に流す尊大なディングレーを見た。
「…「左の王家」…って単に、血の気の多い多情男ってダケじゃ、無かったんだな」

ディングレーはディンダーデンのそのセリフに眉間寄せて振り向くと、言って退ける。
「俺はともかく。
ディアヴォロスまで侮辱するな」

ディンダーデンは、拍子抜けした。
「お前、そんなにいとこが好きなのか?」
反対横のローランデが、小声で囁く。
「彼は…実の兄が苦手で。
ディアヴォロスやローフィスが、兄代わりだから…」

ディンダーデンはディングレーの兄、グーデンを思い出して肩すくめる。
「…「左の王家」では珍しく軟弱な、顔ダケ男か…。
確かにお前より、背は低い。
剣は使えない。
威張るしか能の無い、卑怯者が兄貴じゃ…兄と認めたくなくても、無理は無い」

ディングレーはそれを聞くと、ため息吐いて顔下げた。
ディンダーデンはそれを見て、小声で呟く。
「反論しないと言う事は、俺と同感か。
ディアヴォロスは庇うのに、実の兄はどれだけ侮辱されても、言い返さないんだな。
そんなに嫌いなのか」

ディングレーはとうとう、ディアヴォロスと同い年で年上のディンダーデンを怒鳴りつけた。
「そうだ!
グーデンは大っ嫌いだし!
血が繋がってるなんて、反吐へどが出る!
どうだ、これで満足か!!!」

返事無く、ディングレーが振り向くと、ディンダーデンは腕組んで、無言で頷いてた。
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