森と花の国の王子

あーす。

文字の大きさ
上 下
383 / 418
アールドット国王の別邸

シャーレと出会うミラーシェン

しおりを挟む
 けど横の映像は流れ続け、エディエルゼは視線が吸い寄せられた。

それからミラーシェンは、大抵二人から三人の男に、寝台の上で縛り付けられ、毎日体を嬲られ続ける…。

湯に浸かってる間も。
食事中も見張りが居て、香油を塗られ飾り立てられ…優美だがミラーシェンにとっては苦痛の、寝台のある部屋に連れて来られ、寝台に上がるなり手足を鎖で繋がれ…。
仮面の男達が入って来て…。
また体を好きなだけ嬲られる。

ある日とうとう、ミラーシェンは湯に浸かっていた時。
こっそり盗んだ食事用のナイフを取り出す。

“ごめん兄様…。
私はもう疲れた…。
毎日…毎日が男達にさけずまれる日々…。
もう…これ以上…耐え…られない…”

エディエルゼはそんなミラーシェンの映像を見るなり、ぎゅっ!ときつく、腕の中のミラーシェンを抱きしめた。

けどその時。
金の光の中に、少年の姿…。

“君…も?
逝ってしまうの…?
そしたら僕…ひとりぼっち…”

ミラーシェンは顔を上げる。
金の光に包まれ、金髪で青い瞳の、天使のような美少年は、とても悲しげで…。

ミラーシェンは彼に言った。
“天使…?”
シャーレは首を横に振る。
“ここに…居る。
君と同じ…。
気持ち悪いおじさんに、いつもいやらしい事される…。
お尻に、挿入れられるの…。
僕、あれ凄く嫌い…”

“逃げられないの?”
ミラーシェンが聞くと、シャーレは悲しげに首を横に振った。

“何とかいっぱい頑張ったんだけど…。
僕…が出来たのは…精神こころを飛ばすことだけ…”

ミラーシェンは自分と同い年らしいその美少年に、囁いた。
“でも、私と話せる…”

そう言った時。
シャーレは凄く嬉しそうに、微笑んだ…。

悲しげな天使のような美少年の…その笑顔を見たら。
ミラーシェンはもう、自分の命を絶てなかった。

シャーレは囁く。
“僕…少しずつ出来ること、増えてる…。
君にも、してあげる…。
嫌な事、されてる時。
精神を飛ばすの。
そうすると、吐き気がしないの…”

その後。
また、ミラーシェンは寝台に鎖で繋がれ、また仮面の男に体を嬲られたけど。
金の光が体を包み始め…感覚が、ぼうっ…と白んでくる。

触れられてる手の感触も、挿入されてる肉棒の感覚も、おぼろ…。

側に、幻のシャーレが笑っていた。

“ね?
これだと、辛くない…”

ミラーシェンも頷く。
“凄く、いい…”

けれどシャーレは俯く。
“…でも…僕寂しい…。
側に居る者はみんな、僕の事…人間って思ってないの。
綺麗な…大金を稼げるお人形…”

それを聞いて、ミラーシェンも頷いた。
“…うん…。
忘れそうになる…。
自分が、生きて意思のある人間だって事…”

“好きな事…何も出来ない…”

項垂れたシャーレにそう言われ、ミラーシェンは尋ねた。
“何がしたい?”
シャーレは微笑む。
“森の中で…木イチゴを摘むの!
とっても甘くって、美味しいんだよ…”

途端、周囲が森になって…ミラーシェンは体を嬲られてる感覚が遠くなり、森の中でシャーレと手を繋ぎ、駆けて木イチゴを探してた。

“凄い、シャーレ!
こんな事、出来るんだ!”

シャーレは駆けながら笑った。
“僕も出来るって、知らなかった!”

二人は楽しそうに…幻の森で木イチゴを摘んで…笑いながら食べた。

“甘い…”
ミラーシェンが言うと、シャーレも笑顔で頷いた。

そしてシャーレは…次第にいつも姿を見せるようになり…。
ミラーシェンと二人、精神を飛ばして崖の中を、宙に浮かんで彷徨う。

“どこにも…見張りが居る…”
ミラーシェンが言うと、シャーレは泣いた。
“君に実際に会うことすら、出来ない…”

ミラーシェンは泣いているシャーレを、抱きしめた。
精神でだったけど…。
シャーレはそれでいつも、落ち着いた。

けれどミラーシェンの心に、シャーレの声が響く。
“いつまで…?
いつまでこんな毎日…?”

ミラーシェンも、シャーレが離れ体に戻ると…そこら中、男の体液で汚され、後腔に挿入後の生々しい感覚と、手足がだるく、くたびれきっただるい…最早自分の物ですら無い体に、落胆していた…。

この体は、嬲る男達の為にだけ、存在してるよう。

けどまた湯殿に連れて行かれ、体を清められ…。
そしてまた体を飾り立てられ、後腔に薬を塗り込まれ…。
また、シーツが取り替えられ、整えられた寝台の上へ。
鎖で手足を縛られ…また…別の仮面の男達が、入って来る…。

事が始まると、いつの間にかシャーレの光で包み込まれ、意識は半分眠ったよう…。
“全部…消えてしまえばいいのに…。
こんな男達全部…。
兄様が斬り殺してくれたらいいのに…”

シャーレは尋ねる。
“…どこ…?”

ミラーシェンの意識を辿り、シャーレはエディエルゼの姿を探す。
エディエルゼは布で顔を隠し、たった一騎。
故郷を出て、南西にひた走る。
馬はエディエルゼを乗せて駆け続けるけど…。

“とても…遠い…”

シャーレが囁き、ミラーシェンはがっかりした。
“でもここに兄様が来たら…いくらお強くても、敵の数が多すぎて、命を落とされる…。
来なくって…いい…”

ミラーシェンはシャーレと共に、宙に浮く。
高い上空から、自分達の閉じ込められてる城を見る。

“近くに…助けてくれそうな人…居る?”

シャーレは探し、ラステル配下の小グループを見つける。
“こっち…あっちにも…。
でも、見張ってるだけみたい…”

ミラーシェンは尋ねた。
“誰の…配下?”

シャーレは彼らの意識から、遙か東のオーデ・フォール中央王国の王城を見る。

“遠いね…”

ミラーシェンが言うと、シャーレは頷く。

“王様か…王子様なら…助けてくれるかも…”
“探せる?”

シャーレはラステル配下から、ラステルを探し出し…城の廊下を歩くラステルの姿を見つけ…けれど突然、頭を振る。

“ダメ…。
もう無理。
頭痛が…”
“じゃ、止めて。
無理しないで。
オーデ・フォール中央王国の王子様…兄様を助けてくれるかな?
たった一人で…兄様、ここに来ちゃダメ…”

シャーレは頭を押さえ、囁いた。
“分からない…けど、見張りしてる配下の人達が…もしかして………”

ミラーシェンはその時、涙を浮かべて微笑んだ。

“また、兄様に会える?!
会える?!!!!”

シャーレは囁く。
“分からない…。
そんなに好きな人?”
“大好き!
とっても綺麗で…でも凄く強くて…そしてとても…お優しいんだ!”

エディエルゼはそれを聞いた途端、涙が溢れて止まらなくなって、ぎゅっ!とミラーシェンを抱きしめた。

けれどその時、映像は止まり、抱きしめられたミラーシェンは、暗い声で囁いた。

“…けど私…の体…。
散々汚され…もう…元に戻らない…”

エディエルゼは顔を上げ、落胆しきった声で囁く、ミラーシェンを見た。

とても大人びて…けれど希望の無い表情で。
エディエルゼはまた、涙が込み上げ、頬に涙を伝わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あばずれローニャ

黒神譚
恋愛
ちょっとエッチで甘々なTSラブストーリー。 主人公は色欲の魔神シトリーを討伐した際に、いまわの際の魔神に強烈な呪いをかけられてしまう。 その呪いとは女体化および、その女となった体で男性を虜にする色欲の呪い。 女性となった主人公は女性名ローニャと名乗り、各地を転々として最高クラスの司祭でも祓うことができない呪いを解く術を探す旅を続けるのだった。 だが、ローニャにかけられた呪いは太陽の加護が失われた時により強力になる女性化の呪い。日没後に心身ともに完全な女性になってしまった時。ローニャは常に呪いに自我を支配され、往く先々で様々な色男たちと恋愛スキャンダルを巻き起こす。 そんなローニャを人々はいつの間にか「あばずれローニャ」「恋多き女・ローニャ」と呼ぶようになった。 果たしてローニャは無事に呪いを解き、魔神シトリーを討伐した英雄として帰郷し故郷に錦の旗を飾ることができるのだろうか? それとも女性としての生き方を受け入れて色欲の呪いのままに男性を誑し込んで生き続けるのだろうか? TS・恋愛・ファンタジー・魔法・アクション何でもありのラブコメです。 今回は、複雑な設定はなく一般的でありふれたい世界観でとっつきやすい物語になっています。 1話1200文字程度ですので、どうぞお気軽にお読みください。(毎日19時更新)

【完】オメガ騎士は運命の番に愛される《義弟の濃厚マーキングでアルファ偽装中》

市川パナ
BL
オメガの騎士は性別をアルファだと偽っていた。取り巻くのは事情を知らない同僚の騎士たちや社交界の面々。協力者は、添い寝でアルファのフェロモンを付けてくれる義理の弟と、抑制剤を処方してくれるお医者様だ。オメガだとバレたら騎士として認めてもらえない。夢を追うことは、本当は許されない事なのかもしれない。迷う日々の中、運命の番の騎士が赴任してきて、体に熱がともる。 ※総受け・攻め4人(本番Hは本命のみ)。モブレ未遂アリ。サスペンス風味。 ※IFはエロ詰めです。随時追加予定。 リクエスト受付は終了させていただきます……!! ありがとうございました!!

悪役令息はゾウの夢を見る

朝顔
BL
現実世界で過労死した健は、縁あってゾウの神様がいるBLゲームの世界のキャラクターに憑依する。 楽勝主人公を選ぶはずが、見た目が可哀想だと同情して悪役令息のキャラを選んでしまう。 超がつくほど真面目な性格の健は、選んだからにはシナリオ通りに悲劇を迎えるまでちゃんと演じなければと思い込んでしまう。 悪役令息の子供時代に憑依したので、それっぽく我儘で傲慢な子供時代を胃痛を抱えながら、必死に演じていた。 そんな中、ついに因縁の主人公が登場したので悪役として接するのだが、主人公は予想を超える人物だった。 嫌われようとしているのに、全然嫌ってくれなくてむしろどんどん懐いてしまう。 しかも儚げ美人主人公に成長するはずなのに、なぜか正反対に逞しく成長してしまい……。 なんとかシナリオ通りに軌道修正しようと奮闘するのだが思いもよらぬ方向に……。 嫌われ者の悪役令息なのに、他のキャラ達とも仲良くなってしまう。 健は新しい世界で幸せを見つけることができるのか。 ※※※ 悪役令息になりきれなかった主人公が総愛されするお話です。 恋愛面では固定カプ。 子供時代スタートなので、R18シーンは十八歳からなります。 ※他サイトでも同時連載しております。

転生したら第13皇子⁈〜構ってくれなくて結構です!蚊帳の外にいさせて下さい!!〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)
BL
『君の死は手違いです』 光の後、体に走った衝撃。 次に目が覚めたら白い部屋。目の前には女の子とも男の子ともとれる子供が1人。 『この世界では生き返らせてあげられないから、別の世界で命をあげるけど、どうする?』 そんなの、そうしてもらうに決まってる! 無事に命を繋げたはいいけど、何かおかしくない? 周りに集まるの、みんな男なんですけど⁈ 頼むから寄らないで、ほっといて!! せっかく生き繋いだんだから、俺は地味に平和に暮らしたいだけなんです! 主人公は至って普通。容姿も普通(?)地位は一国の第13番目の皇子。平凡を愛する事なかれ主義。 主人公以外(女の子も!)みんな美形で美人。 誰も彼もが、普通(?)な皇子様をほっとかない!!? *性描写ありには☆マークつきます。 *複数有り。苦手な方はご注意を!

シンギュラリティはあなたの目の前に… 〜AIはうるさいが、仕事は出来る刑事〜

クマミー
SF
 これは未来の話… 家事、医療、運転手、秘書など… 身の回りの生活にアンドロイドが 広まり始めた時代。  警察に事件の一報があった。それは殺人事件。被害者は男性で頭を殴られた痕があった。主人公風見刑事は捜査を進め、犯人を追う最中、ある事実に到達する。  そこで風見たちは知らぬ間に自分たちの日常生活の中に暗躍するアンドロイドが存在していることを知ることになる。 登場人物 ・風見類 この物語はコイツの視点のことが多い。 刑事になって5年目でバリバリ現場で張り切るが、 少し無鉄砲な性格が災いして、行き詰まったり、 ピンチになることも… 酔っ払い対応にはウンザリしている。 ・KeiRa 未来の警察が採用した高性能AI検索ナビゲーションシステム。人間の言葉を理解し、的確な助言を与える。 常に学習し続ける。声は20代後半で設定されているようだ。常に学習しているせいか、急に人間のような会話の切り返し、毒舌を吐いてくることもある。

たまには働かないと、格好がつかないし、ね?

氷室ゆうり
恋愛
さて、今回は異形化、というか融合系ですね。少しばかり男体化要素もあるかなぁ?杏理君はなんだかんだ私の小説では頑張ってくれます。ちょっとばかり苦手な人もいるかもしれませんが、なるべくマイルドに書いたつもりです。…たぶん。 ああ、ダークにはしていないのでそこはご安心ください。 今回も、r18です。 それでは!

A hero from the darkness of chaos. Its name is Kirk

黒神譚
BL
異界の神や魔神、人間の英雄が絡み合う壮大なスケールで描かれる本格的ファンタジー。 人間の欲望や狂気を隠すことなく赤裸々(せきらら)に綴(つづ)っているので、一般的に温いストーリー設定が多いWEB小説には似つかわしくない、かなり大人向けの作品です。(「小説家になろう」からの移行作品。) ※本作は本格的なファンタジー作品で単純にBL作品とは言い難いです。ですが主人公は両性愛者で男女にかかわらず恋愛をし、かなり濃厚な関係を持つのでBL、女性向けタグとさせて頂きました。 ●ストーリー 争いの絶えない人類は魔王ドノヴァンの怒りを買い、粛清(しゅくせい)されるが、そこではじめて人類は戦争をやめて協力し合うことができた。それを見届けた魔王ドノヴァンは人類に1000年の不戦を約束させて眠りについた。 だが、人類は1000年間も平和を保てずに、やがて争いを始めるようになってしまった。 時は流れて1000年の契約期間が終わりそうになってから、人類は自分の愚かさを悔やんだ。 世界が魔王に滅ぼされると恐れていたその時、一人の神官が今から30年後に救いの聖者が現れると予言するのだった。

王太子さま、侍女を正妃にするなど狂気の沙汰ですぞ!

家紋武範
恋愛
侍女アメリアは王宮勤め。宰相の息子のルイスに恋心を抱いていたが、それが叶ってルイスよりプロポーズされた。それを王太子に伝えると、王太子はルイスへは渡さないとさらって軟禁してしまう。アメリアは軟禁先より抜け出そうと苦心する。

処理中です...