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アールドット国王の別邸
バルバロッサの素性
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バルバロッサの後に付いて、皆はかなりくたびれた体を引きずりながら、ぞろぞろと歩く。
ゼイブンだけは横の体格良い浅黒い肌の男に、腕に抱くラフィーレを差し出しながら
「あんた、運んでくれないか?」
と押しつけていた。
男はジロリ…とゼイブンを見下ろし
「あんたの息子じゃ無いのか?
大事な子供は自分で運べ」
と拒絶していて、ローフィスとギュンターはこっそり、落胆するゼイブンを見、くすくす笑っていた。
ラステルがスタスタ先を歩く、バルバロッサの横に付いて、矢継ぎ早に質問を浴びせる。
「部下と連絡が取れなくて、困ってます。
この辺り、現在どういう状況に成ってるんです?
貴方はどこで嗅ぎつけて、こんな紅蜥蜴だらけの物騒な場所にやって来たんですか?」
バルバロッサはラステルを見下ろし、呻く。
「あんた、何者だ?」
ラステルは笑顔で取りなした。
「失礼。
名乗ってませんでしたね。
私はオーデ・フォール、エルデリオン王子の側近、ラステルと申します」
バルバロッサはピタ。と足を止めるので、背後を歩いてたオーガスタスはバルバロッサの止まった背にぶつかるところで、間一髪歩を止めた。
バルバロッサはかなり背の低い(彼からしたら)、にこにこ笑うラステルをじっ…と見つめた後。
背後に振り向くとオーガスタスに
「…もしかして、陰で大陸エルデルシュベインの各国を動かしてるとか言う…陰謀の首謀者として名高い…ラステルか?」
オーガスタスは見つめられ、バルバロッサの瞳がサファイアのように青い瞳だと意識しながら
「多分、そいつ」
と返答した。
バルバロッサは頷きながら、またオーガスタスに振り向く。
「なんかいちいちあんたとは…違和感無く会話出来るが…。
初対面だよな?俺達」
オーガスタスは顔を下げて呟く。
「あんた、奴隷上がりと聞いたが…俺もだからかな?」
バルバロッサは目を見開いた。
「アースルーリンドにも、奴隷制度があるのか?!」
オーガスタスは頷く。
「国王は認めてないが…。
アースルーリンドの東西南北、四つの領地は、王に忠誠は誓ってるが、ほぼ独立領地。
それぞれの領主はそれぞれの地の、王同然。
で、南領地ノンアクタルだけは、あんたみたいな肌の浅黒い男らが統べているので、後宮もあれば奴隷制度もある」
バルバロッサは頷くものの、聞く。
「…奴隷だったのか?」
オーガスタスは笑う。
「餓鬼の頃。
高官の護衛として鍛えられた」
「…荒っぽい扱いか?」
「…多分、あんたの境遇と、変わらないだろうな」
バルバロッサは頷く。
「俺は顔が良かったし、目の色も髪の色も白人のようで珍しいと…最初は性奴隷用に躾けられる予定だった。
あの、糞アッハバクテスの元へ、召し出される貴重品としてな。
が、あまりにも粗暴で暴れん坊だったし、体格も良かったから…結局奴隷商人は調教するのに匙を投げ、剣闘奴隷の檻に放り込まれた」
「良かったな」
オーガスタスの言葉に、バルバロッサは顔を上げて笑う。
「…普通のヤツは、奴隷なんてどの境遇でも同じだと思ってるだろうが…。
あんはいちいち、俺が期待する返答返すな」
オーガスタスは肩すくめた。
「性奴隷だなんて、あんたやってらんないだろう?」
バルバロッサは笑うと、またオーガスタスの肩をぽん。と叩いて頷いた。
「扱いは悪いが、思いっきり暴れられて、そういう意味では最高だった」
「それについては俺も、同感だ」
オーガスタスに言われ、バルバロッサは楽しそうだった。
ラステルは二人の会話につい…同情して良いものかどうか、思案した。
案の定、ロットバルトなんかは、二人に同情しきって顔を下げてたし、テリュスも神妙な顔付き。
エリューンも同情を隠さない表情。
ノルデュラス公爵は顔を下げ、ラウールは二人の会話をしっかと聞いていて…。
スフォルツァも顔を引き締め、ラフォーレンもやはり二人を気遣うような表情を浮かべ、ゼイブンだけが
「…なるほど。
だからどっちも桁外れに強いんだな。
腕っ節も体格も、精神も」
と言いつつ、感心したように顔を振ってはいたが、どっかふざけてた。
ミラーシェンは顔を下げ、けれど立派に境遇を跳ね退けた二人を、尊敬の眼差しで見つめ、エディエルゼは真顔で話を聞いていた。
エウロペだけが、腕に抱くレジィが少し顔を動かし、気づき始める様子を見て、微笑んでいた。
ギュンターとローフィスはとっくにオーガスタスの来歴を知ってるのか。
真顔で顔を下げていた。
エルデリオンは運ばれて行くデルデの、目を閉じた青い顔を心配げに見つめ、全然聞いて無い様子。
その後バルバロッサは、オーガスタスの肩を抱き、続きを話し出す。
「暴れついでに隙を付いて逃げ出し、その後その地で悪名轟かす、盗賊集団に拾われた。
奴隷から比べりゃ、扱いはかなり良かったな」
オーガスタスも自身の身の上を披露する。
「俺は養父に引き取られ、王立騎士養成学校に入れられたが…一見上品な王侯貴族も混じってはいるが、上級生に生意気だと目を付けられ、毎日喧嘩に明け暮れてたな」
「…今の身分は何なんだ?
将軍か?」
「いや?
左将軍補佐だ」
「将軍に次ぐ身分か。
確かアースルーリンドのディアヴォロスとか言う左将軍は、神がかりで有名だと聞いた」
「その神がかりが、俺の仕えてる将軍だ」
バルバロッサはピタ。と歩を止め、オーガスタスを見た。
「…じゃお前が、神がかりの左将軍に仕えてる、苦労の絶えない…ど迫力の長身で体格の良い…補佐のオーガスタスか?」
オーガスタスは見つめられ、とぼけた口調で告げた。
「国王になったあんたに名が知られてるなんて、光栄だが…。
評価は今一だな。
苦労の絶えない?」
バルバロッサは頷きながら、また歩き出す。
「左将軍は人の心が読めると聞いた。
つまり、サボりたいと思っても直ぐバレる。
そりゃ苦労は絶えないだろうと、俺ですら同情したが…違うのか?」
問われて、オーガスタスは顔を下げた。
「その通りなんで、全然嬉しくない」
バルバロッサはますます笑い、オーガスタスの肩をポンポン叩いた。
そしてやっと、ラステルに振り向く。
「悪い。
あんたの話題だったな」
ラステルはにこにこ笑うと
「お話が弾んでるご様子で…ようございました」
と告げた。
バルバロッサはそれを聞いた途端、オーガスタスに振り向く。
「笑顔で馬鹿丁寧に告げられると…逆に不信感が募るものだが…。
この男の言葉は、額面道理受け取りそうだ」
オーガスタスは頷きながら、見解を述べる。
「無心の笑顔を見せながらも陰謀企めるから…多分凄いんじゃ無いのか?」
ラステルはバルバロッサに、片眉上げ、もう片眉思いっきり寄せられて見つめられ…珍しく言葉に詰まった。
が、気を取り直して笑いかけ
「ここに来た経緯を、お話し頂けるとありがたいのですが…」
と聞き出したい内容について尋ねた。
バルバロッサは
「そうだったな…」
と思い出し、この近くにアッハバクテスが潜伏してると聞き、別宅を買い取った話をし始めた。
オーガスタスは背後でノルデュラス公爵が
「心を読む上司になんて、絶対仕えられない…」
と小声で呻くのを聞いた。
更に公爵は、ローフィスの背の衣服を引き
「本当に全部、お見通しなのか?」
と聞き、無言で頷くローフィスを、目を見開いて見た。
ギュンターの背後を、ミラーシェンと一緒に歩くエディエルゼは
「本当にアースルーリンドの将軍は、人の心が読めるのか?」
と聞き、ギュンターにも頷かれ、ミラーシェンと顔を見合わせ、呆けた。
が、ラウールに
「空飛ぶ船に乗って、信じられない数々を目にした今。
大して驚けないだろう?」
と聞かれ、エディエルゼは
「確かに…」
と顔を下げた。
振り向くバルバロッサと目が合ったエディエルゼは、つい肌の浅黒い金髪の美丈夫を見つめ返す。
バルバロッサは
「あれも本当に、野郎なのか?」
とこっそりラステルに聞いていて、ラステルは
「貴方の国から遙か遠い、北の国の王子ですので」
と、笑顔で説明する。
「あんな美女は早々居ないものだが…男とは。
どれだけ抱いても、孕む心配が無い」
エディエルゼは途端、きっっっ!
ときっつい濃い青の瞳で睨み付けた。
が、バルバロッサは笑顔を送り、更にもっと、エディエルゼに睨み付けられた。
次にバルバロッサはギュンターに振り向くと
「どう見ても可愛がられる顔だが、体格がいい。
あんた、男に尻貸すのか?」
と聞く。
皆、ギュンターが受け身をするのかどうか聞かれるのを見て、一斉に同情した。
が、ギュンターは真顔で言い返す。
「確かに俺の顔は軟弱だし、餓鬼の頃叔父貴に、男に可愛がられりゃ楽に暮らせるとは言われた。
が、どう頑張っても受け身は無理なので、喧嘩の腕を磨く方に精進した」
バルバロッサはそれを聞き
「なるほど」
と言った後、またオーガスタスに振り向き尋ねる。
「あの男も、奴隷上がりか?」
「早くに母親を亡くし、父親の顔も知らず、母の姉に引き取られ、貧乏貴族で盗賊らの襲撃をひっきり無しに受ける、過酷な地の育ちだから…。
一応貴族だが粗暴な育ちで、俺と気が合う」
バルバロッサはまた
「なるほど」
と頷いた。
次にエリューンをチラ…と見た後。
デルデに付き添い心配げな、エルデリオンに視線を送る。
が、ラステルに
「彼がオーデ・フォールの次期国王、エルデリオンです」
そう、紹介と共に身分で牽制かけられ、直ぐローフィスに視線を移し
「口説いたら落とせるか?」
とオーガスタスに聞く。
オーガスタスはバルバロッサを睨み付けるローフィスを見た後
「寝首を掻かれるから、止めとけ」
と素っ気無く忠告した。
「そんな、物騒か?」
バルバロッサに問われ、オーガスタスはしっかり頷く。
「態度がソフトだけからと、油断したが最後。
隙を付いて殺られる。
顔にダマされるな」
バルバロッサはため息と共に、やはりアースルーリンドの、ギュンターと張る美形のゼイブンを見た。
途端、オーガスタスに
「あれは止めとけ」
と言われ、ギュンターにまで
「食中毒起こすぞ?
あり得ないほどの女好きで、性格も最悪」
と言われた。
ゼイブンはぶすっ垂れて二人の言葉を聞き、色目で見てるバルバロッサに
「不本意だが、二人の言うとおりだ。
俺のケツは女のためにある。
男にホらせる為には無い」
と言い切った。
ゼイブンだけは横の体格良い浅黒い肌の男に、腕に抱くラフィーレを差し出しながら
「あんた、運んでくれないか?」
と押しつけていた。
男はジロリ…とゼイブンを見下ろし
「あんたの息子じゃ無いのか?
大事な子供は自分で運べ」
と拒絶していて、ローフィスとギュンターはこっそり、落胆するゼイブンを見、くすくす笑っていた。
ラステルがスタスタ先を歩く、バルバロッサの横に付いて、矢継ぎ早に質問を浴びせる。
「部下と連絡が取れなくて、困ってます。
この辺り、現在どういう状況に成ってるんです?
貴方はどこで嗅ぎつけて、こんな紅蜥蜴だらけの物騒な場所にやって来たんですか?」
バルバロッサはラステルを見下ろし、呻く。
「あんた、何者だ?」
ラステルは笑顔で取りなした。
「失礼。
名乗ってませんでしたね。
私はオーデ・フォール、エルデリオン王子の側近、ラステルと申します」
バルバロッサはピタ。と足を止めるので、背後を歩いてたオーガスタスはバルバロッサの止まった背にぶつかるところで、間一髪歩を止めた。
バルバロッサはかなり背の低い(彼からしたら)、にこにこ笑うラステルをじっ…と見つめた後。
背後に振り向くとオーガスタスに
「…もしかして、陰で大陸エルデルシュベインの各国を動かしてるとか言う…陰謀の首謀者として名高い…ラステルか?」
オーガスタスは見つめられ、バルバロッサの瞳がサファイアのように青い瞳だと意識しながら
「多分、そいつ」
と返答した。
バルバロッサは頷きながら、またオーガスタスに振り向く。
「なんかいちいちあんたとは…違和感無く会話出来るが…。
初対面だよな?俺達」
オーガスタスは顔を下げて呟く。
「あんた、奴隷上がりと聞いたが…俺もだからかな?」
バルバロッサは目を見開いた。
「アースルーリンドにも、奴隷制度があるのか?!」
オーガスタスは頷く。
「国王は認めてないが…。
アースルーリンドの東西南北、四つの領地は、王に忠誠は誓ってるが、ほぼ独立領地。
それぞれの領主はそれぞれの地の、王同然。
で、南領地ノンアクタルだけは、あんたみたいな肌の浅黒い男らが統べているので、後宮もあれば奴隷制度もある」
バルバロッサは頷くものの、聞く。
「…奴隷だったのか?」
オーガスタスは笑う。
「餓鬼の頃。
高官の護衛として鍛えられた」
「…荒っぽい扱いか?」
「…多分、あんたの境遇と、変わらないだろうな」
バルバロッサは頷く。
「俺は顔が良かったし、目の色も髪の色も白人のようで珍しいと…最初は性奴隷用に躾けられる予定だった。
あの、糞アッハバクテスの元へ、召し出される貴重品としてな。
が、あまりにも粗暴で暴れん坊だったし、体格も良かったから…結局奴隷商人は調教するのに匙を投げ、剣闘奴隷の檻に放り込まれた」
「良かったな」
オーガスタスの言葉に、バルバロッサは顔を上げて笑う。
「…普通のヤツは、奴隷なんてどの境遇でも同じだと思ってるだろうが…。
あんはいちいち、俺が期待する返答返すな」
オーガスタスは肩すくめた。
「性奴隷だなんて、あんたやってらんないだろう?」
バルバロッサは笑うと、またオーガスタスの肩をぽん。と叩いて頷いた。
「扱いは悪いが、思いっきり暴れられて、そういう意味では最高だった」
「それについては俺も、同感だ」
オーガスタスに言われ、バルバロッサは楽しそうだった。
ラステルは二人の会話につい…同情して良いものかどうか、思案した。
案の定、ロットバルトなんかは、二人に同情しきって顔を下げてたし、テリュスも神妙な顔付き。
エリューンも同情を隠さない表情。
ノルデュラス公爵は顔を下げ、ラウールは二人の会話をしっかと聞いていて…。
スフォルツァも顔を引き締め、ラフォーレンもやはり二人を気遣うような表情を浮かべ、ゼイブンだけが
「…なるほど。
だからどっちも桁外れに強いんだな。
腕っ節も体格も、精神も」
と言いつつ、感心したように顔を振ってはいたが、どっかふざけてた。
ミラーシェンは顔を下げ、けれど立派に境遇を跳ね退けた二人を、尊敬の眼差しで見つめ、エディエルゼは真顔で話を聞いていた。
エウロペだけが、腕に抱くレジィが少し顔を動かし、気づき始める様子を見て、微笑んでいた。
ギュンターとローフィスはとっくにオーガスタスの来歴を知ってるのか。
真顔で顔を下げていた。
エルデリオンは運ばれて行くデルデの、目を閉じた青い顔を心配げに見つめ、全然聞いて無い様子。
その後バルバロッサは、オーガスタスの肩を抱き、続きを話し出す。
「暴れついでに隙を付いて逃げ出し、その後その地で悪名轟かす、盗賊集団に拾われた。
奴隷から比べりゃ、扱いはかなり良かったな」
オーガスタスも自身の身の上を披露する。
「俺は養父に引き取られ、王立騎士養成学校に入れられたが…一見上品な王侯貴族も混じってはいるが、上級生に生意気だと目を付けられ、毎日喧嘩に明け暮れてたな」
「…今の身分は何なんだ?
将軍か?」
「いや?
左将軍補佐だ」
「将軍に次ぐ身分か。
確かアースルーリンドのディアヴォロスとか言う左将軍は、神がかりで有名だと聞いた」
「その神がかりが、俺の仕えてる将軍だ」
バルバロッサはピタ。と歩を止め、オーガスタスを見た。
「…じゃお前が、神がかりの左将軍に仕えてる、苦労の絶えない…ど迫力の長身で体格の良い…補佐のオーガスタスか?」
オーガスタスは見つめられ、とぼけた口調で告げた。
「国王になったあんたに名が知られてるなんて、光栄だが…。
評価は今一だな。
苦労の絶えない?」
バルバロッサは頷きながら、また歩き出す。
「左将軍は人の心が読めると聞いた。
つまり、サボりたいと思っても直ぐバレる。
そりゃ苦労は絶えないだろうと、俺ですら同情したが…違うのか?」
問われて、オーガスタスは顔を下げた。
「その通りなんで、全然嬉しくない」
バルバロッサはますます笑い、オーガスタスの肩をポンポン叩いた。
そしてやっと、ラステルに振り向く。
「悪い。
あんたの話題だったな」
ラステルはにこにこ笑うと
「お話が弾んでるご様子で…ようございました」
と告げた。
バルバロッサはそれを聞いた途端、オーガスタスに振り向く。
「笑顔で馬鹿丁寧に告げられると…逆に不信感が募るものだが…。
この男の言葉は、額面道理受け取りそうだ」
オーガスタスは頷きながら、見解を述べる。
「無心の笑顔を見せながらも陰謀企めるから…多分凄いんじゃ無いのか?」
ラステルはバルバロッサに、片眉上げ、もう片眉思いっきり寄せられて見つめられ…珍しく言葉に詰まった。
が、気を取り直して笑いかけ
「ここに来た経緯を、お話し頂けるとありがたいのですが…」
と聞き出したい内容について尋ねた。
バルバロッサは
「そうだったな…」
と思い出し、この近くにアッハバクテスが潜伏してると聞き、別宅を買い取った話をし始めた。
オーガスタスは背後でノルデュラス公爵が
「心を読む上司になんて、絶対仕えられない…」
と小声で呻くのを聞いた。
更に公爵は、ローフィスの背の衣服を引き
「本当に全部、お見通しなのか?」
と聞き、無言で頷くローフィスを、目を見開いて見た。
ギュンターの背後を、ミラーシェンと一緒に歩くエディエルゼは
「本当にアースルーリンドの将軍は、人の心が読めるのか?」
と聞き、ギュンターにも頷かれ、ミラーシェンと顔を見合わせ、呆けた。
が、ラウールに
「空飛ぶ船に乗って、信じられない数々を目にした今。
大して驚けないだろう?」
と聞かれ、エディエルゼは
「確かに…」
と顔を下げた。
振り向くバルバロッサと目が合ったエディエルゼは、つい肌の浅黒い金髪の美丈夫を見つめ返す。
バルバロッサは
「あれも本当に、野郎なのか?」
とこっそりラステルに聞いていて、ラステルは
「貴方の国から遙か遠い、北の国の王子ですので」
と、笑顔で説明する。
「あんな美女は早々居ないものだが…男とは。
どれだけ抱いても、孕む心配が無い」
エディエルゼは途端、きっっっ!
ときっつい濃い青の瞳で睨み付けた。
が、バルバロッサは笑顔を送り、更にもっと、エディエルゼに睨み付けられた。
次にバルバロッサはギュンターに振り向くと
「どう見ても可愛がられる顔だが、体格がいい。
あんた、男に尻貸すのか?」
と聞く。
皆、ギュンターが受け身をするのかどうか聞かれるのを見て、一斉に同情した。
が、ギュンターは真顔で言い返す。
「確かに俺の顔は軟弱だし、餓鬼の頃叔父貴に、男に可愛がられりゃ楽に暮らせるとは言われた。
が、どう頑張っても受け身は無理なので、喧嘩の腕を磨く方に精進した」
バルバロッサはそれを聞き
「なるほど」
と言った後、またオーガスタスに振り向き尋ねる。
「あの男も、奴隷上がりか?」
「早くに母親を亡くし、父親の顔も知らず、母の姉に引き取られ、貧乏貴族で盗賊らの襲撃をひっきり無しに受ける、過酷な地の育ちだから…。
一応貴族だが粗暴な育ちで、俺と気が合う」
バルバロッサはまた
「なるほど」
と頷いた。
次にエリューンをチラ…と見た後。
デルデに付き添い心配げな、エルデリオンに視線を送る。
が、ラステルに
「彼がオーデ・フォールの次期国王、エルデリオンです」
そう、紹介と共に身分で牽制かけられ、直ぐローフィスに視線を移し
「口説いたら落とせるか?」
とオーガスタスに聞く。
オーガスタスはバルバロッサを睨み付けるローフィスを見た後
「寝首を掻かれるから、止めとけ」
と素っ気無く忠告した。
「そんな、物騒か?」
バルバロッサに問われ、オーガスタスはしっかり頷く。
「態度がソフトだけからと、油断したが最後。
隙を付いて殺られる。
顔にダマされるな」
バルバロッサはため息と共に、やはりアースルーリンドの、ギュンターと張る美形のゼイブンを見た。
途端、オーガスタスに
「あれは止めとけ」
と言われ、ギュンターにまで
「食中毒起こすぞ?
あり得ないほどの女好きで、性格も最悪」
と言われた。
ゼイブンはぶすっ垂れて二人の言葉を聞き、色目で見てるバルバロッサに
「不本意だが、二人の言うとおりだ。
俺のケツは女のためにある。
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