森と花の国の王子

あーす。

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激突

戦闘終結?

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 ドーリオ男爵の声が響き渡った時。
オーガスタスは剣を振ろうとした相手が、咄嗟身を屈め、背後に引き始めるのを見た。

敵二人の激しい剣を交互に受けてたノルデュラス公爵は、一人が剣を下げ、声の方に振り向くのを視界の隅で見たものの。
もう一人の降って来た剣を、がちっ!!!とハデな音散らし、受け止めた。

横のエリューンが咄嗟、真っ直ぐの栗毛散らし身をひるがえし、剣を引く。
一気にノルデュラス公爵と剣を合わせてる敵の腹に突き出した。
が、敵は背後から首根っこ掴まれ、後ろに引きずられ、間一髪難を逃れた。

ギュンターは向かって来ようとする敵が、背後に振り向いたかと思うと。
咄嗟、走り去って行くのに気づき、その時一斉に敵が、エウロペらの居る方向へ引いて行くのを目にした。

剣を下げ、背後のエルデリオンに振り向くと、頷く。

エルデリオンはギュンターの深い紫の瞳の、粋な美貌が微笑混じりなのを見、こみ上げて来る感情を抑えきれず、腕に支えるデルデロッテの胸に顔を伏せた。

ラステルはため息を吐き、斜め前のローフィスが、無言で顔を下げるのを見る。
「…尽きかけてた?」
尋ねると、ローフィスは無言で頷き、革袋を指で探る。
二つ重ねて手の上に乗せられてた革袋の、上一つは空となってひしゃげ、もう一つも僅か数本、残るのみ。

思わずローフィスは、反対横のゼイブンに振り向く。
が、ゼイブンも首を横に振る。
「こっちも残り五本」

言った後、ゼイブンは背後の、テリュスに振り向く。
ゼイブンとローフィスに見つめられたテリュスは、気づいて軽く自分の身を見回すと
「20本は残ってる」
と告げた後。
「…この後、大軍が押し寄せて来たらヤバいかな?
今の内に、倒れてる敵から回収したら?」
と提案した。

ノルデュラス公爵は敵が消え、横のスフォルツァが身を前に折り、膝に両手付き、くたびれきって荒い息を整えてるのを見た。
自分もため息を一つつくと、豪華な衣装がそこら中切り裂かれ、傷だらけなのに眉を寄せ、一番出血の多い右腕に、ハンケチを取り出し、巻き付け止血し始める。
エリューンが直ぐ寄り来ると、公爵の手からハンケチを受け取り、きつく結び始めた。

公爵は会釈し、エリューンに礼を言おうとして…。
エリューンもが、左の二の腕から血を滴らせてるのを目にし、もう一枚ハンケチを胸の内ポケットから取り出すと、エリューンの腕の傷口に当て、縛り始めた。

縛り終えて二人は、ほぼ同時にスフォルツァに振り向く。
が、スフォルツァはまだ荒い息に肩を上下させ、顔を上げない。

ローフィスはテリュスの提案に従い、倒れた敵へと屈み、短剣を引き抜き始める。
レジィは周囲の誰もが、疲れ切った表情をしてるのを見た後、
「ボクも手伝う!!!」
と叫んで進み出た。
ロットバルトはレジィの横に付くと、ガードの役目を果たす。
ミラーシェンも直ぐ、レジィの背後から駆けつけ、二人は転がる死体から、短剣を引き抜き始めた。

オーガスタスは自分の正面の敵が、遠巻きにローフィスの居る側を伝い、引いて行くのを目にした後。
背後のラフォーレンに
「見張っててくれ」
と告げ、剣を下げたままギュンターの元に歩を運ぶと、頷くギュンターと共に、エウロペとエディエルゼを迎えに行く。

エウロペはドーリオ男爵の首に腕を回し、剣を喉に当てて引っ立て。
エディエルゼは背後を急襲されないよう、横に付いて見張りながら横に並び歩く。

一人が咄嗟、背後から襲いかかる。
が、エディエルゼは振り向きもせず身を下げ、華麗に背後に剣を振り切った。

「ぅぎゃっ!!!」

剣を振り被った敵は腿を深く斬られ、腿に手を当て、その場に崩れ落ちた。

引いた敵兵は続々ドーリオ男爵を引っ立てる、エウロペとエディエルゼを、距離を置いて取り囲み始める。

ギュンターはそれを見て走り出し、オーガスタスも併走した。

数は、圧倒的に敵が有利。
皆、二人の隙を狙い、男爵を取り戻そうと殺気を飛ばす中。
エウロペは幾度も鋭い視線を送り、応酬する。
が、男爵を引っ立てるその姿は、慌てる様子は微塵も無い。

ギュンターは目前を塞ぐ敵の背を、手でど突いて退かせ、吠える。
「退け!!!」

エウロペとエディエルゼの、正面を塞ごうと寄り来た敵騎士らは。
背後からギュンターとオーガスタスがやって来る姿を見、慌てて左右に避け、道を開けた。

男爵は、首をエウロペの腕で締め付けられながらも
「手を出すな!
止めろ!
こいつらは躊躇無く私を殺すからな!」
と情けない声で呻き続けていた。

ギュンターは二人がやって来るのを見つめながら、引っ立てられる男爵の呻き声を聞き、自分とオーガスタスの左右に避けた敵騎士らを見回すと
「…よくこんな情けない男に、忠誠が誓えるな…」
と、ぼやいた。

エウロペがやって来ると、オーガスタスは微笑を浮かべ、一つ頷くと、横に避けて道を空ける。
エウロペも頷き返し、オーガスタスの横を、男爵を引っ立てながら通り過ぎた。

エウロペとエディエルゼが横を過ぎると、オーガスタスはまだそこに立って、自身の身で敵騎士らをその場に足止めする。

エディエルゼは横に背を向け、やって来るギュンターに
「かたじけない」
と声をかけた。
ギュンターは背を向けながらも、言葉を返す。
「…礼を言うのは、こっちの方だ」

エウロペが、笑顔で迎えるテリュスの元へと歩き始め、ほぼ正面に辿り着くと。
ギュンターはオーガスタスへと振り向き、頷いて合図を送る。

オーガスタスはそれを受け、足止めしてる敵騎士らをたっぷり睨めつけた後。
笑顔を見せ、背を向けた。

その悠々とした大きな背を見つめ、敵騎士らは唾を飲み込み、無言で見送った。

エウロペが、テリュスの横に男爵を引っ立て戻る。
オーガスタスとギュンターが、後数歩で皆の元に辿り着く、その時。

吠える声が暗い森に轟いた。

「ここか!!!
我らを謀って、自分らが王子らを独り占めする気で先に駆けつけ、このザマか!!!
たった数名に、これだけの死者か?!
が、ありがたい。
敵は随分、疲弊してる様子だからな!!!」

ラフォーレンは目前の暗い森に、多数が蠢く気配を感じ取り、振り向き叫ぶ。

「敵です!!!」

ロットバルトは直ぐ、レジィとミラーシェンの手を左右の手で握り込むと、一気に二人を促し、テリュスの背後へと駆け込み始める。

エルデリオンは抱きしめたデルデロッテの胸から、咄嗟顔を上げた。

ローフィスも自分の顔が、新たな緊迫感に歪むのを感じた。
が、斜め横のラステルが
“万事休す!!!”
と、余裕の無い表情を見せるのを見た時。

初めて悪寒に包まれた。

ラフォーレンはオーガスタスが、背後に振り向くのを見た。
オーガスタスのかなり背後。
その場で足止めされてる敵騎士は、動かなかった。
彼らは、味方が現れたとは、思ってない様子。

思わずラフォーレンは、レジィとミラーシェンを左右に引き連れ、走るロットバルトの背を見る。

シュアンはまだ、眠ってる!
ゼイブンの背に居る、ラフィーレさえも。
そして自分の背後の、エドウィンですら。
これだけの戦いにも関わらず、人形のようにまるで動かない。

レジィはロットバルトに手を引かれ、テリュスの背後に駆け込みながら。
咄嗟、ラフォーレンに視線を向けた。

無意識だったけど…分かった。

森の中に蠢き、取り巻き始める敵の数の多さ。
ノルデュラス公爵が、叫ぶ声の主が思い当たるように振り向くのも目にする。

ローフィスは自分の正面方向から、大軍が押し寄せ来る気配に、思わず革袋を握りしめた。
回収出来たのは、10本程度。

まるで、足りない…。

レジィはどっくん!と心臓が鳴ると同時、中で眠っていたシャーレが、白い光に包まれ、身を起こすイメージが脳裏に浮かび、同時に皆の様子が見えた。

エディエルゼは男爵に
「お前の仲間じゃないのか?!」
と怒鳴りつけていて…。

エウロペが、覚悟を決めるようにきつい視線を、ローフィスの正面から来る敵に送るのが、透けて見えた。

ノルデュラス公爵が心の中で
“アッハバクティス!!!”
と叫ぶのを聞き、シャーレが慟哭するのを感じる。

その名で、シャーレは身悶えるような苦悩に包まれるのを、レジィは感じた。
途端、お尻に男根を挿入された生々しい感覚と共に、千切れそうに痛む、掴まれた両乳首。
腸を破る勢いで、押し込まれ続ける太い男根。

背後から抱かれていて、顔は分からない。
レジィは必死でシャーレに語りかける。
心の中で。

“お願い、落ち着いて?!
シャーレ!!!
シャーレ、みんな居る!!!
みんな、護ってくれる!!!”

けれどシャーレの意識は、上空に飛ぶ。
その時、真っ暗な森の中なのに、明るくはっきりと、無数の敵が押し寄せて来るのが見え、レジィはその数の多さに言葉を無くした。

シャーレは更に上空に飛ぶ。

その時、耳に聞こえない声でシャーレは叫んだ。

“シィアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!”

その声は、あまりに大きく脳裏に響いて、レジィは思わず耳に手を当てたけど。
脳に轟くその声は、それから暫く、響き渡り続けた。

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