森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

辿り着いた一行が真っ先に案内された場所

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 ラステル一行が到着すると、東門は直ぐ開けられ、中へと招き入れられる。
エウロペ、ローフィス、テリュス、エリューンが軽やかに馬を駆るのを、最後尾のロットバルトはゼィゼィ言って眺めた。
「(…なんであんな、一歩間違えば転がり落ちる場所ばかり通って、平然としてられるんだ…)」

城の正面玄関に付くと、直ぐ召使いが馬から降りるラステルの手綱を引き受け、中へと導く。
「こちらでございます」

陽はかなり傾き、頭上は紺色へと染められ始める。
レジィはエウロペの横で促されながら、斜め後ろのテリュスとエリューンに
「僕、お腹減った」
と言い、テリュスも
「腹ペコだ…」
と呻き、エリューンに
「全然、足りませんよね…」
と言われた。

先頭のラステルはクス…と笑うと
「食事の用意は?」
と案内する召使いに尋ねる。
「出来てます。
先に食堂にご案内致しますか?」
ラステルは召使いの言葉に頷き、後ろに続く皆はそれを聞いて、一斉にはしゃいだ。

ロットバルトだけが
「私は王子の所に、案内頂けるか?」
と尋ね、側に居た召使いに頷かれて、一緒に並んで階段を上がる。

三階の廊下正面の、大きくて綺麗なクリーム色の両開きの扉を開けられ、入って直ぐの大ホールを、左に曲がったその先の扉を開けられ、中に通される。

大変広い食堂で、長いテーブルには白いクロス。
椅子がずらりと並び、一行は次々に腰掛けた。

ロットバルトだけが入って来ないので、レジィが叫ぶ。
「食べないの?!」

ロットバルトはその先の正面階段へと案内されながらも、頷く。
「エルデリオンの様子を見なくては」

エウロペは微笑んで、グラスを上げた。
「従者の鏡だ」
横のラステルが、もうフォークを取り上げて皿の切り分けた肉を口に運びながら、ぼやいた。
「…サボってて、すみませんね」

けどエウロペは、笑顔で告げる。
「君はだって、とっくにエルデリオンがどうだか知ってるし。
シャスレ城にずっといた、ロットバルトとは違うだろう?」

テリュスは頷きながら、言って退ける。
「ホント、聞きたかった。
一瞬で移動する感覚って、どんな?」

ラステルは口へ運ぶフォークを止めると、必死に思い出そうとした。
「…一瞬で、景色が変わる…?
変わった…?
…ともかく、実感無かったですね。
もし瞬間に移動した、と誰かを騙すとしたら。
目隠しして、周囲の景色を変えます」

エウロペはフォークを置いて、首すくめる。
「劇場の大道具のような、板に描かれた景色を入れ替えて?
馬鹿でも気づく」

ラステルは頷きながら、言い訳る。
「けど、そんな感じでしたよ?
一瞬で景色が変わる。
ああ後は…体がじんわり、暖かかったかな?」

レジィがそれを聞くと
「いいなぁ…。
僕も一瞬で移動したい」
と言うので、テリュスもエリューンもが、ピタリ!とフォークを止めた。

「…だってレジィ、君は経験してるだろう?」
エウロペに苦笑いされて言われ、レジィは頬張った肉をもぐもぐしながらエウロペを見、次に反対横の、テリュスとエリューンをも見た。

皆、自分を見てるので、レジィリアンスは必死に思い出そうとした。

エウロペの向こうに座るラステルが、沈んだ声で呟く。
「…だって貴方とエルデリオンが。
寝室から一気に消えたのが…事件の発端なんですから」

一番端、エリューンの横のローフィスが、グラスを上げて呻く。
「そんなもんです。
“移動するぞ”と前置きあったって…ラステルの言うように
“景色が一瞬で変わる”
程度の感想ですから」

レジィはまだ首捻ってた。
「確か…僕なんか…半分眠ってるみたいな、夢みたいな感じ?
あ、途中突然シャーレが苦しんで。
宙からどさっ!って、土の上に落ちた!」
「…それで?」
エウロペに尋ねられ、ラステルにまで見つめられ、レジィは記憶を辿った。
「えっと、エルデリオンも一緒に落ちたの。
それで…夜で森の中で。
狼が出てね…」

エウロペが目を見開き、テリュスも咄嗟、横のレジィの手首を握り、尋ねる。
「どこも怪我は…?」
レジィは心配するテリュスに、にっこり笑い
「エルデリオンがね、追い払ってくれた」
と告げた。

「…やりますね」
ラステルが呟くと、その時丁度オーデ・フォール中央王国一行、エルデリオン、デルデ、ロットバルトが食堂に入って来る。

デルデは
「もう少し二人きりにしてくれても…」
とぷりぷり怒っていて、後から来るオーガスタスに
「また襲ってるとこ、止められたのか?」
と聞かれた。

デルデは
「いえ。
あまりに汚れてたので、着替えてた最中でナニも出来なかった」
とぼやいた。

レジィに
「何が出来なかったの?」
と食べながら聞かれ、デルデはレジィの斜め前にどかっ!と腰掛けると
「エルデリオンに、えっちな事」
と告げた。
その間にも、エシェフガラン雪の勇者の国の王子二人とラウールが入って来て、その直接話法にエディエルゼは頬を思いっきり、赤らめた。

エルデリオンは上座で食事してる皆が見渡せる席に案内されたが、一気に頬を赤く染めて、顔下げる。

オーガスタスはローフィスの横に腰掛けながら、戸口を見つめ
「公爵が来てなくて、助かった」
とぼやいた。

ラステルはうんと末席のオーガスタスに首振ると
「やっぱりデルデと公爵、やりあってました?」
と尋ねる。

オーガスタスは横に並ぶ皆から、一人だけ顔を出して自分を見つめてる、遠くのラステルに頷いた。
「全く、手が焼けるぜ」
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