森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

シャスレ城到着

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 髭もじゃ丸眼鏡は、とっくに通り過ぎた筈のシャスレ城に再び取って戻って、城の前の広場に飛行船が降り始めるのを見、感心した。

「凄い!!!
もう絶対貴方方が必要です!!!」

赤毛の神聖神殿隊騎士は、慎重に広場に飛行船を下ろしながら、ぼやく。
「言っとくが、我々がこれだけ力を使えるのは。
ワーキュラス殿がラフィーレとシュアンから、光を我々に送ってくれてるから。
じゃなきゃとっくに力の源の光を使い果たし、光尽きるその前に、アースルーリンドにとっとと戻ってる」

銀髪の神聖神殿隊騎士は、エドウィンを伺って叫ぶ。
「エドウィンは、意識を取り戻しそうだ!」

エウロペはデルデロッテの心配が気にかかり、直ぐ尋ねた。
「エルデリオンの意識を辿れそうか?!」

エドウィンは微かに頭を揺らすと、囁く。
「…ずっと…無意識の中で探って…た…けど………。
エルデリオンの意識は確かじゃなくって…はっきりしたり薄れたりの、途切れ途切れで…」

テリュスとエリューンは顔を見合わせる。
「…まさか、拷問とか受けてる?!」

テリュスに尋ねられ、エドウィンは顔を揺らす。

「…ちょっと…違う…」

テリュスとエリューンは首捻ったけど。
エウロペとオーガスタス、二人の神聖神殿隊騎士らは想像が付いて、顔を下げた。

“えっちな事されてる…”
“えっちな事されてるな…”
“かなり濃厚なこと、されまくってる…”
“………………………………”

髭もじゃ丸眼鏡の声まで混じる。
“間違いなく、されてますね…”

その言葉が一斉に脳裏に響き、テリュスとエリューンは頬染めて思い切り、顔を下げた。

ガガン!

大音響と共に船体が地面に着き、激しく揺れた後。
周囲に待機していた者らが一斉に船に駆け寄り、船体から垂れたロープを地面の杭に括り付け、地上に固定し始める。

エウロペは直ぐレジィリアンスを抱き上げると、船下に飛び降りた。

ざっっ!!!
「こちらへ!」

オーガスタスはラステル配下に先導され、城の中に駆け込むエウロペの背を見つめ、ワーキュラスに叫んだ。

“俺はどこに居ればいい?!”

ディアスからの返答が、脳裏に響く。
“エルデリオン王子を探すのに、エドウィンが必要だから…。
シャーレが中にいる、レジィリアンスの側に”

オーガスタスは頷くなり、直ぐ船を飛び降りる。

テリュスもワーキュラスに向かって、脳裏で叫んだ。
“俺達は?!”

直ぐ、ワーキュラスが中継してエウロペの声を伝える。
“エリューン、君は私に代わってレジィの警護に!
ワーキュラス、馬で発つ方が早いか?!
それとも飛行船で他の皆を乗せた後、ファントール大公の断崖絶壁へ飛ぶ方が早いのか?!”

“船に戻ってくれ。エウロペ。
司令塔のラステルらは城に下ろす。
それでも馬で崖だらけの入り組んだ土地を抜けるより、飛行船の方が早い”

ワーキュラスの荘厳な声が聞こえると、エウロペは脳裏に叫ぶ。
“テリュス、船で待機してくれ!”
テリュスは頷き、エリューンは直ぐ様船を飛び降りて、オーガスタスの背を追った。

間もなくラステルが脳裏で叫ぶ声が聞こえる。
“私の意識を辿り、配下達に崖の近くで一斉待機、突入準備を告げて貰えます?!
後、エウロペ殿の意識から見取り図を…部下らに送って貰えません?!”

銀髪の神聖神殿隊騎士が、呆れて呟いた。
「人使いの荒いヤツだ」
赤毛の神聖神殿隊騎士もぼやく。
「…順応力、高過ぎ」

けれどワーキュラスの光の伝達は、ラフィーレの心話能力を増大させてラステル配下の指令官らに、光の速度で届く。

ラフィーレが、ラステルへと、脳裏で囁く声が聞こえた。
“貴方が顔を知ってる、指令官数名に届けました”

ワーキュラスが、ラステル一行に叫ぶ。
“後は一刻も早く、君たちが飛行船乗り場に来てくれる事だが…”
ディアスがその後を継ぐ。
“残念ながら、その速度では遅い。
ラフィーレの目で見ると、斜め前に広い草原があるから。
そこで待っていてくれ。
後…さっきからしきりと、ラステル、貴方に連絡を取りたがってる…黒髪の青年がいる”

ラステルはすっかり心話に慣れ、脳裏で呟く。
“デュバッセン大公の事かな…?
彼は東領地の総司令官なので”

ワーキュラスが、頷くように瞬くと
“近くに居るので草原に誘導する”
と告げた。

先頭ラステル配下の二人は、点滅する脳裏の光に導かれ、進路を丘の下に向け始める。

ギュンターが眉間を寄せまくってるので、併走するローフィスはチラ見して、ため息交じりに囁いた。
「慣れてないと、脳が酷く疲れる」

この言葉に、ギュンターだけで無くロットバルトまでもが。
平気な顔してるラステルとデルデロッテを呆れて見つめながら、頷いてた。

シュアンが笑いながら告げる。
「僕やラフィーレだけなら。
ちょっとの人にしか、伝えられないけど。
ワーキュラスは凄く能力が高いから、意識が繋がってる人、全部に言葉を送れる」

ラフィーレが、振り向いて付け足した。
「ワーキュラス殿は力が強すぎて逆に加減出来ず、伝えたい人だけに言葉を送るのが苦手なんです」

ギュンターとロットバルトは、しぶしぶ頷いた。


エウロペは指示された二階の寝室の、寝台の上にレジィリアンスを横たえる。
直ぐ、オーガスタスが現れて、横に立つとエウロペに告げた。
「俺が付いてる。
ラフィーレが来たら、彼に任せる」

エウロペは頷くと、入れ替わりに室内に入って来るエリューンの腕を、すれ違い様掴み、顔を見つめはっきりとした声で告げる。
「レジィを…頼んだ」

エリューンはエウロペの、緑の優しい瞳を見つめ返し、しっか!と頷いた。


エウロペが船に戻る前、飛行船は飛び立ち始めるので、テリュスは盛大に怒鳴る。
「エウロペがまだだ!
どうしろって?!」

けれどエウロペは、浮き始める飛行船に慌てて地面に止めて置いたロープを解く配下らの、ロープの一つを掴み、よじ登り始める。

もう既に、飛行船は一階ほどの高さに浮いていて、テリュスはロープを登って来るエウロペを、泣きそうになって船のへりで伺う。

「エウロペ!!!」

が、神聖神殿隊騎士二人は、笑って頷く。
「彼は、心配無い」
赤毛が言うと、銀髪も
“支えているが、落ちる気配は微塵も無い”
と請け負った。

間もなくエウロペは船体まで登って来て、テリュスは腕を伸ばし、エウロペを船内に引き上げた。

ざっ!!!

船底に降り立つと、エウロペは振り向き、引き上げてくれたテリュスに礼を言う。

「ありがとう」

爽やかな笑顔でエウロペにそう言われ、テリュスは嬉しそうに頬を染め、頷いた。

“…彼の笑顔って、悩殺だな”

その声が船内に響き渡り、髭もじゃ丸眼鏡が思わずテリュスに振り向く中、テリュスは頬染めて呻く。

“今の、俺じゃ無いから”

神聖神殿隊騎士二人にさえ呆れた表情で振り向かれ、テリュスはばっくれて背を向けた。

「悩殺なんだ?」
エウロペに言われたテリュスは、首を横に振った。
「そんな思い方、しなかったはずだけど」

“意味通りじゃね?”

赤毛の神聖神殿隊騎士に脳裏でつぶやかれ、テリュスはエウロペにバスケットを差し出し
「食い物と飲み物」
と言って、誤魔化した。
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